昼休みだけがましな気がする
午前の授業が終わり昼休みに入る。授業が終ったからであろう、廊下では様々な話声が聞こえてきた。しかし、依然としてうちのクラスでは沈黙が広がっていた。誰一人と動こうとはせず、まるで傀儡の様であった。
そんな場所に居たくはないので俺は自分のと朔也の弁当を持ち教室から逃げるように出て行った。
「どうしたんだ山城?そんな地獄を見たような顔して」
しばらく歩くと、響が話しかけてくる。しかしよく見てみるとどこか暗そうに見える。多分、クラスで浮いてしまったのだろう。元からだろうけど。
「お前も大概人の事言えんがな」
「俺はもう諦めたんだよ・・・何もかも」
「何か、ごめん」
「気にすんな、所で森内はどうしたんだ?」
「ああ、あいつは・・・」
朔也がいない事に疑問を持ったのか、不思議そうに響が聞いてくる。そして俺が朔也がいない事に関して、今日クラスで起きた事を踏まえつつ説明した。
すると話を進めていくにつれ、響はどこか納得した様子がうかがえた。
「成程な、うちのクラスで流れていた噂は本当の事だったのか」
「お前のクラスいっつも噂話流れてんのな」
「俺と話す奴いないから突っ伏して寝てると、その辺から色々と聞こえてくんだよ」
「えぇ・・・。その話は一旦置いておいてその噂ってのは?」
「まあ、ただの噂だし信憑性はさっきの話と合わせても薄い方だが聞くか?」
「聞きたいが、それよりもまず先に朔也のとこ行こうぜ」
「それもそうか」
俺と響は、話しながら保健室へと向かう。途中自販機へと寄り、朔也と響の分の飲み物を買って行った。
保健室に入ると朔也が保健室のベットで上半身だけを起き上がらせてていた。多分寝起きなのだろう、少しボーっとしていた。
「朔也ー起きてるかー?」
「んー」
「寝ぼけてんな」
俺は朔也を起こすために、少し肩を緩る。すると朔也の意識が覚醒したのか、俺達を交互に見渡した後今自分が置かれている状態に困惑していた。
「俺確か教室にいたはずじゃなかったっけ?」
「お前は途中で倒れたんだよ、朝からあの調子だったしな」
「俺はその場に居なかったが、倒れたんじゃ仕方ないな」
響、俺のフォローを助けてくれたのはありがたい。でもお前、嘘とかつくのが苦手だったよな。滅茶苦茶目が泳いでるぞ。
「そんな事よりも飯にしようぜ。ほれ、おまえの分の弁当と飲み物」
「ありがとさん」
そう言って俺は、朔也に弁当と飲み物を手渡し三人で弁当を食べる。朔也が言うには午後の授業からは出れるそうで寧ろ、気絶したせいか朝よりも元気そうに見えた。
ちなみに響の言っていた噂についてだが、転校生が清純派ビッチであると言う事だったらしい。
くっだらね。あいつはさっきの話のどこで本当だと思ったんだよ。
昼休みが終わる頃、朔也は保健室の先生に一言言った後俺達と保健室から出る。正直に言えばあの教室に戻りたくないのだが、授業に出ないで欠席になるのも嫌なので嫌々ながら教室に戻る。そういえば、朔也が教室に入っても大丈夫なのか?気絶した原因だったはずだし、まあ考えるだけ無駄か。
特に何事もなく、午後の授業が終わり帰りのホームルームが始まった。
「よしまずは良いニュースと悪いニュースがある。まずいいニュースからだが、龍也の無罪が証明された為、明日から普通に登校できるみたいだ」
先生がそう言うとクラス中に歓喜の声が上がった。所々「助かった」「生きててもいいのか」などと声が上がっているのが聞こえる。いや本当に昨日何が起こったんだよ。
「落ち着け、まあ続けるぞ。でだ、悪いニュースっていうのは来週体育祭が行われると言う事だ。以上」
体育祭の何が悪いニュースなのかが分からないが悪いニュースらしい。後で先輩に聞いてみるとしよう。
放課後、今日は外での練習の為俺と朔也は昇降口前へと移動する。移動していると部活の先輩である榊 陸先輩がいた。榊先輩は男子の方の副部長である為、何故か苦労が絶えないらしい。多分ほぼ毎日、両方の部長に振り回されているからであろう。因みに噂だが彼女がいるらしい。
「榊さん、こんにちわ。先輩も今から部活に行くところですか?」
「ん?あー、森内と山城か」
「榊さん突然なんですけどここの体育祭って何やってるんですか?」
俺が榊先輩に聞いた時、何故かは分からないが榊先輩が一瞬硬直したよう見えた。その後先輩の顔色が、少し青ざめている様に見える。そして少し震えながら聞いてきた。
「何でいきなりその話になるんだ?」
「今日の帰りのホームルームで先生が悪いニュースとして言っていたんで」
「あー、あれはまあ、公開処刑だしな」
「「公開処刑?」」
「簡単に言えば、借り物レースがな」
「「あっ」」
何となくだが、悪いニュースだという理由が分かってしまった。多分お題に書かれているのがろくでもない事なのだろう。
「何となく理解したみたいだな、因みに去年は中々凄かったぞ」
「どんな感じだったんですか?」
「公開告白したり、男子又は女子の取り合いで乱闘騒ぎになった」
「ヒェッ」
「因みに榊さんは?」
「あー、俺は確か彼女って書かれてたから一人でゴールしたわ」
「「うわぁ」」
「そうそう、何故かは分からないが借り物競争に関してはクラスの男子と女子それぞれ半分が参加だぞ」
「嫌すぎる」
「因みに先輩は何で参加したんですか?」
「くじ引き」
「「あっはい」」
借り物競争ってそんなにやばい競技だったっけ?俺の記憶だと、物とか背の高い人とかの軽いお題だと思ったんだけどな。どうやったら精神的にも死にかけたり、乱闘に発展したりするんだよ。
「そういや話は変わるんだけど、天崎と葉月の2人の様子がおかしいんだけどなんか知ってたりしないか?」
「様子がおかしいって、何かあったんですか?」
「様子がおかしいっていうのかなんというか分からないけど、なんか2人ともよそよそしいって言うかもっとわかりやすく言うのであれば、あのガサツで横暴な葉月がなんか預けられた猫みたいにおとなしい」
「それ本人の前で言わないようにしてくださいよ」
「てか多分あれじゃないかな?」
「多分そうだろ」
「何か知ってるのか?」
俺と朔也は昨日起きた事を榊先輩に言った。すると榊先輩は頭を押さえて陰鬱そうに吐き捨てるように言った。
「昨日休みだからって、何やってるんだよあいつら。てか何をやったんだよ」
「それはあの二人しかわからないですから」
「上の2人が駄目になるとさ、俺と空の苦労が増えるから嫌なんだけど」
先輩の言う空というのは、漣 空先輩の事であり榊先輩と同じくハンドボール部の女子の方の副部長である。それと同時に、部長被害者の一人である。
「まあいいや、今日は外周だけだし、走り終わったら帰っていいぞ」
「それ勝手に決めてもいいんですか?」
「天崎に一応聞いといたし大丈夫だろ。ただ何故か俺と空はこの後部長2人に呼ばれてて、部長2人の所に行く事になってるんだよな」
普通に聞いたら、色々と変な話である。副部長が部長の代わりにやって、しかも部長2人の相談聞かされるとかぶっちゃけ結構おかしいと思う。副部長2人のストレスがマッハに進んでそう。そして俺達は、外周が終わった後榊先輩の代わりに今日の練習の内容を伝えたり見張りをやった。
どこかで誰かの叫び声が聞こえてきた。
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