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オリンピアの夢  作者: 伊賀嵐 大城
9/10

8話

自分が通っている大学には大きな礼拝堂がある。安息日と言われる日曜日にその礼拝堂に信者が祈りを捧げるらしい。そこでは無宗教の学生にも気軽に礼拝堂を訪れてほしいという趣旨で、毎月第2日曜日にチャペルアワーという催しがあった。

次のチャペルアワーの日は2限に芸術メディア論の補講があったので、宗教というものへの好奇心で行って見ることにした。もともと芸術学論の後は青山の家で遊ぶ予定だったので青山と真田も誘った。


眠たい目をこすり、随分と早く終わった日曜2限を終え学科仲間と昼飯を食べていると、どこからか優しくも厳かな鐘の音が聞こえた。

「あ、この鐘の音、礼拝堂のやつじゃない?」

と三森が言った。学科仲間の三森は飄々とした男で、初対面の自分に向かって聞いてもないのに、俺が好きなのは酒と女と芸術鑑賞!と言い張るくらいに変わった男だ。

「これから、この前告知してたチャペルアワーに行くんだよね」

「へー、チャペルアワーね。何するの?」

「俺も内容に関してはよく分かってない。三森の今日の予定は?」

「なんだしそれ!俺は今日はアートデイなわけ」

今日は上野国立美術館に向かうらしい。三森はほぼ毎日予定を入れている。この前聞いた時は合コンで、さらにその前は爆飲み会だった。本当に好きなものに忠実なのが面白く、よく予定を聞く。

「そろそろだから行ってくる、またね」

「おー、またね」


てっきり昼休みと共に始まると思ったチャペルアワーは、先にキリスト教徒の礼拝を済ませてからだったので13時半からだった。自分達3人は間違えて早く集合してしまった。

礼拝堂からそう遠くないところに喫煙スペースがあったので非喫煙者の青山も連れて煙をふかしながら暇を潰した。

この時期の気候はとても好きだ。ずっとこのくらいであってほしい、だらだらと過ごしたい。ふと、5月は人生における大学生のようなものだなと思った。

3人で今日のおおまかなゲームの予定や、なんとかして真田を戦力になるレベルまで上げる作戦などについて話し合った。真田はゲームを最近始めた訳ではないのにFPSが異様に下手だった。敵と交戦状態となると何故か上を向くのだ、右スティックに力を入れすぎだ。


13時を過ぎた頃、ずっと煙草の煙を吸うのも身体に悪いので自分達は早めにパイプオルガンのなる礼拝堂へと向かった。日曜礼拝は一連の動作を何タームかに分けているようで、日曜礼拝を済ませた学生や職員達がぞろぞろと大扉から出てきた。その人達の中にこの前見たブロンド髪で翡翠色の目の女性を見つけた。周りもほとんどが外国人であったが、その女性が他の人よりも一際"綺麗"だということは、隣でこの前の自分と同じく目を奪われた真田のフニャっとした顔を見れば分かった。

「おいなんだよ、あの子は」

「実はこの前あの人と目があって微笑まれた」

「まじかよ、なんだよお前!」

と、お互いその女性を見ながら早口で話した。

「顔見知りなんだね、なら話してみようよ」


そう提案したのは青山だった。






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