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オリンピアの夢  作者: 伊賀嵐 大城
3/10

2話

入学式は、思っているほど誰かと喋ったりすることはない。式の席の隣人や高校の友達など、まあ喋ったことには喋ったのだがそのままみんなで!などのようなことは無かった。いくら文系大学とはいえ、初日からはっちゃける人は少ない。


そういった人達がはっちゃけるのは新歓、つまりは新入生歓迎会の食事会だ。

授業の始まる週になると、おびただしい数の学生たちがごったがえしていた。授業の部屋を確認する人、友達を増やそうとする人。そして、尋常じゃない熱気でサークルの勧誘をする在学生だ。


翌日、自分は四限の授業を終えて五反田に向かった。

つまりは、その新入生歓迎会に向かうのだ。梅雨前線のような陣形を成すさまざまなサークルの波に止められ、紆余曲折を経てテニスサークルのそれに向かっている。

そもそもサークルについては、部活をする覚悟が無い人達の溜まり場だと考えていたが、学業やらバイトやらの兼ね合いと、なによりもその部活の何倍もの量のサークルの存在を目の当たりにすることで、自分の"サークルバイアス"は無くなった。


肝心の新入生歓迎会は中々興味深かった。

軽くサークルの説明をして、そのまま居酒屋のご飯やら酒やらを格安でいただくというものだ。結局このサークルの他とは違うところや強み、これには自信はある、などといったことは分からなかったし、途中からスノボーサークルの連中も加わりよく分からなくなっていた。ちなみにスノボーサークルは冬はスノボー旅行をし、それ以外は普通の旅行や定例飲みをするとのことだ。せめてオフシーズンはスケボーか何かしたらどうだ、と思った。隣の藤田さんも同じような顔をしていた。 浴びるように酒を飲むテニス、スノボー両代表を見て、サークル活動の代表に必要な要素は「実力、人柄、酒」ということが分かり。また、大体の人が大学で初めて飲む"酒"に取り憑かれていて、まるでまだ付き合って一ヶ月なのに、

「死ぬまで大好きだよ」

とインスタグラムに投稿する湘南の男女のようで嫌だな、とも思った。別れたら消すのだろう。


自分は、そのように既に興味深いと言いながらも内心冷めてしまっている新歓を一旦抜け、ビルの外でタバコを吸っていた。中でも吸えたのだがおそらく先輩に、

「あ、御幸くん意外にタバコ吸うんだね!」

という絡まれ方をされるのが嫌だったので外に出ていた。


インスタグラムのストーリーを開く。どうやら今日は同大学のダンスサークルの公演があったらしい。ストーリーを撮っていた女の子はどうやらそのダンスに感動を覚え、涙していた。

色んなサークルがあるなと、どちらを比べるわけでも無くただそう思った。


随分値上がりしたパーラメントを吸い終えた頃だった。


「お!お前はー、御幸だよな!合ってるよね?」

と、エレベーターの方から声が聞こえた。

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