第8話 キャンプの準備
【タクミ様、朝でございます】
「ふぁー、よく寝た、、」
時刻は午前8時30分、アカリの声掛けで目を覚ます。脳内に直接響いてくるからスマホの目覚まし機能では一切起きることができなかった俺でも簡単に目を覚ますことができる。
それに現時点で夜中にやることも存在しないから、夜は12時を回ったあたりで就寝している。1週間前の俺には考えられないくらい超健康的な生活だ。
タオルで顔を拭き、爆発している寝ぐせを整えて宿を出た。朝食はギルドまでの道すがらにあった八百屋でリンゴそっくりな果物を一つ買うことで済ませる。
「あ、タクミじゃん!おはよう!」
「おはよう」
ルーシーもバナナみたいな果物を右手に一本、かと思ったがよく見たら左手には一房を抱えながらやってきた。
「今、朝から食べすぎだと思ったでしょ。でも成長期のエルフはこれぐらい食べないとダメなんだからね!」
30歳で成長期なんだ。まあ寿命が長い分当然と言えば当然か。
その後、ルーシーから大人の女性になることへの独自の努力について聞きながら教室の席に着いた。
ーーーーー
「みんな集まったな!次のクエストはお待ちかねの魔物討伐だ!」
レインの第一声にクラスから歓声が上がった。やっぱり冒険者と言えば魔物討伐だもんな。
「みんなのが期待しているのはよーくわかった。だが気を付けるんだぞ。最初のころの討伐対象はそこまで大きな力を持っていないが、これからランクが上がるにつれて魔物との対峙は命のやり取りと同義だ。Fランクの魔物だからと言って油断することのないように!」
みんないつになく真剣にうなずいた。
「よし、いい目だ!今回のターゲットはイノース。この街から20キロメートンの場所にリールという小さな村がある」
レインが前に貼った地図を指差した。
「村からの依頼で作物を食い荒らすイノースを退治してほしいということだ。本来Eランクの1パーティーが扱うクエストだがFランク冒険者の指導にちょうどいいためこの3パーティーが向かうことになった」
【アカリ、イノースってどんな魔物だ?】
【日本で言うところのイノシシみたいなものです】
なるほど、イノシシ駆除みたいな話か。日本でもよくニュースになっていたが異世界でも変わらないんだな。
「そしてイノース討伐と共にもう一つ行うのがキャンプ訓練だ。町の間の移動は馬車で行くことが多いが、魔物の生息地に向かう際には徒歩で行かなければならない場合が多い。今回は最初だからリールまでの街道を歩きつつ、寝るときはテントを張ってキャンプするわけだ」
キャンプ!最後にしたのいつだっけ。
「そこでリール到着を二日後として、今日を準備の日にあて明日出発することにする。冒険者の仕組みの一つでもあるが報酬達成にかかる費用はすべて自己負担だ。もちろん成功報酬にはそこでかかった費用も加味してあるから安心しろ」
俺たちの場合この前のお金があるから大丈夫なはずだ。
「それにキャンプ訓練には俺は同伴しないからパーティー各々でよく考えて行動するように。それじゃあ二日後リールで会おう!盗賊には気をつけるように!解散!」
かなりあっさりとした説明で終わってしまったが、ここはパーティー全員で協力して作業することが目的のようだ。
「まず何から準備する?」
「それはもちろん食べ物だよ!」
「いえ、まずは寝袋とテントの準備ですわ」
確かにこの二つが重要なんだよな。今回は移動だけが目的だからそれ以外のものを買う必要はないし。
「二手に分かれて買い物をしたほうがいいわね。食料係と設備係に分かれて担当しましょ」
ソフィアの提案に俺たちは乗ることにした。料理が趣味のソフィアとオリビア、そして収納魔法が使えることから俺が食料係。
ライアンとステラとルーシーはテントと寝袋を買いに行くことになった。
「あと重要なのは予算だ。幸いタクミのおかげで僕たちはそれなりのお金があるが、節約はしたい」
「確かにそうですわね。それでしたら食料は合計して銀貨7枚以内に抑えますわ。それと調理器具も購入しませんと。」
「うちらは何ともいえないね。テントも寝袋も繰り返し使うものだし、実際に品物見てからじゃないと決められなさそう」
「よし、事前に話すのはこれぐらいだな。とりあえず13時を目安に集合しよう。遅れるようならスマホで連絡してくれ」
「「「すまほ??」」」
「いや、何でもない!13時までに必ず戻ってくるようにしよう。」
今完全に異世界にいること忘れてたな。危ない危ない。
早速俺たちはギルドを出て街の中心部の方に向かう。中心部は東西方向に3本の通りが走っており、一番北の通りに食品などを扱う市場がある。
逆に南の通りが食品以外の製品を商いする場所、そして一番中央の通りに国の施設や商人ギルドなどが建てられている。俺たちは通りの入り口で別れて別行動を開始した。
市場の通りは午前中ということもあって活気があふれていた。八百屋には色とりどりの野菜が並び、肉屋も色彩豊かなものがそろっていた。
肉屋で?と思うかもしれないが本当に虹色に光っているバラ肉があったから間違いでもない。高くて買えないけどね。
また一口に精肉店と言っても人間用に肉をカットしているところもあれば、獣族のために大きな塊の肉を売っているところもあったりとターゲットとなる種族ごとに店が異なるのも見ていて新鮮だ。
ソフィアとセルビアが先頭を歩きながらどんなメニューにするか相談している。うん、完全に俺荷物持ちでしかないね。歩いていると
「ソフィアちゃん!今日はポタトが安いよ!一袋銅貨3枚でどうだい?」
と八百屋の店員に声を掛けられた。
「そうなの?そしたらおばちゃん2袋頂戴」
「はいよ!今日はきれいなお嬢ちゃんに男までいるじゃない。あ!ひょっとして、か」
「違うよおばちゃん。同じパーティーのメンバーなの」
せめて最後まで言われてから否定してほしいなあ。
【ふっ(笑】
アカリにまで鼻で笑われてしまった。
そんなこんなで野菜をいくつかと肉類、調味料を購入し、最後に南の通りに移動して調理器具や食器類をそろえて俺たちの買い物は終了した。
ギルドに戻ってくるとすでにライアンたちも戻ってきていた。
「そっちはどうだった?」
「俺たちの方は食料に銀貨6枚と銅貨5枚、調理器具で銀貨8枚ってところだな」
「うちらの方テントは2人用を3つ買って金貨4枚と銅貨5枚。寝袋は6つで金貨3枚だったね」
合計金額からすれば高額だがこれでも6人分買うということでステラが交渉したようだ。
最後に全員でかかったお金の調節をして、俺が収納魔法で荷物をまとめて管理したところで今日の準備は終了した。
これで明日を待つだけだ。




