第6話 パーティー顔合わせ
俺は8時に起床すると準備を整え、9時に冒険者ギルドに向かった。助かったことに、地球と時刻の概念は同じだったのでいつも通りの生活リズムで済んだ。大学の授業も9時開始だったしな。
冒険者ギルドに着き中に入ると、壁の掲示板のところに、昨日会った同期たちが集まっていた。
俺らに向けて張り紙がされているらしい。
「おはよう。何が貼ってあるんだ?」
俺は思い切って、その集団にいた俺と同い年ぐらいの男子に声をかけた。
同期とは仲良くしていきたいからね。声をかけた男子は俺より少し背が高く、海外ドラマに出てくるようなハンサムボーイだった。
「おはよう。えっと君はタクミ君だね。昨日の試験はすごかった。自分と同年代であんなに魔法や剣技が上手い人は初めて見たよ。僕の名前はライアン。よろしく」
ライアンは手を差し出しす。ブロンドの髪と白い歯のコントラストから繰り出される笑顔が眩しい。
「俺はタクミ。よろしくな」
ライアンが差し出した手を握り返し挨拶を交わす。なんとなく、これからも長い付き合いになるだろうなと思った。
「それで、君の質問に対する答えだけど、ここに張り出されているのはパーティーの組み合わせさ。タクミも見てみるといい」
とライアンが張り紙を指さした。
<パーティーA オリビア ステラ ソフィア タクミ ライアン ルーシー>
となっていた。どうやら俺はライアンと同じパーティーのようだ。
張り紙の下には、二階の部屋に来るようにと書いてあったので俺はライアンと一緒に向かう。
部屋は学校の教室ぐらいの大きさで、前に黒板があり、6人座りの丸机が3つ置かれている。
「前から順番にパーティーAから座るように!」
レイン先生は黒板の前から声をかけてきた。
俺は先生に挨拶をしつつ、一番前の机に向かう。もうすでに俺とライアン以外の4人は座っているみたいだ。
「あなたがタクミ君ね、よろしくお願いします。私はオリビアですわ」
そういってこちらに顔を向け、立ち上がって挨拶をしてきた。
オリビアは美しい有翼族の女騎士だった。まとった装備の背中から生える白い羽は今は畳んであるようだがとても大きい。
背丈も俺より少し低いぐらいだから170センチぐらいある。そしてフェンシングに使うような細長い剣を身に着けていた。
「ああよろしくな」
そういって俺も挨拶する。
「君があの平原でぶっ放したタクミっていうひとなのかぁ、あたしの名前はねルーシーっていうんだ。あ、今子供って思ったでしょ!でもねほんとは君らより年上の30歳なんだからね!」
オリビアの横から声をかけてきた中学生程度に見える女の子はエルフだった。
どこかでエルフは人間の倍生きるって聞いたことがあるから人間でいう15歳で妥当と言えそうだ。
オリビアの長い黒髪と違って、茶色のショートヘアのルーシーは見るからに元気いっぱいという感じだった。
「年上なら年上らしく振舞いなさい。その言動だと見た目通り子供に見えるわよ」
と言ってルーシーと子供同士のケンカのような言い争いを始めたのはステラという19歳の人間の少女。
黒髪でどことなく和風美人を思い起こさせる出で立ちで、服装も着物そっくりだ。
「こらっ、ケンカはやめなさい。二人とも子供じゃないんでしょ」
と言ったのはソフィアだ。20歳と言っていたが、金髪の美人なところも相まって歳以上に貫録がある。ルーシーの逆バージョンだな。
「今失礼なこと考えたでしょ!はっ!もしかして、あたしよりソフィアの方が年上に見えるとか思った?」
ルーシーがジト目で俺を見てくる。エスパーかよ。
そんな風にしてみんなで15分ほど会話をしたころ。レインが手を叩いた。
「さあ顔合わせは済んだな!」
みんなが一斉に先生の方を向く。
「パーティーのメンバーは俺がバランスを考えて決めさせてもらった。Fランクの間はこのメンバーで固定だ。Eランク以降は他の冒険者と自由に組むことができるようになる。まあ大体はこのパーティーのまま行くことが多いな」
軽く咳払いをすると先生は再び話し始める。
「さあ今日はこれからクエストに向かう!その前に一つ連絡があってだな、タクミをCランク冒険者にすることをギルドは正式に決定した。とはいえまだ新人であることには変わらないから俺の指導下にはいてもらう」
部屋中にどよめきが生じた。
「まじかよいきなりCランク!?でもあの魔法見れば納得だ」
みんなが俺の方を見てきたが、少し気恥ずかしいな。
ざわめきが一通り収まった後、
「まあそんなわけで、これからクエストに行くわけだが、最初のクエストの内容はヒール草の採取だ。おいおい、そんなガッカリしたような顔するなよ。はじめは採取クエストをするのが一番いいんだ。簡単だからな」
そういってレインは説明を続ける。
「採取クエストで最も大事なのは雑草との見分け方だな。特に、今回の目的であるヒール草はヒール草モドキ、ニセヒール草と区別の付きにくい雑草が多いから注意するように。あとは実際に取りに行きつつ説明をする。よし、この部屋での説明は終わりだ。みんな俺に付いて来い。採取場へ移動するぞ!」
ーーーーー
こうして俺たちはギルドを出て、外壁を抜け、この前とは違う平原へやってきた。
さっそくレインがその辺から2株をとってきて俺たちに向けてそれらを掲げつつ、説明を始める。
「いいか!これがヒール草だ!!緑色の茎にピンク色の花をつける。で、こっちがヒール草モドキだ!こっちも似たような形をしているが、根元の部分に赤い斑点のようなものがあるから注意するように!」
言い終わると足元からもう1本草を引き抜いた。
「これが最後のニセヒール草だ。これは葉の裏側に黒っぽい斑点があるから気をつけろ」
「それじゃあ今からチーム対抗でヒール草集めをしてもらう。一番多く集められたチームはそうだな、チームに金貨2枚をやろう!よし!はじめ!!」
みんな金貨二枚という言葉に反応して、一斉に辺りの草むらを探し始めた。
俺たちAチームも探し始める。
「やったー!ヒール草ゲット!!あたしが一番乗りかな!」
ルーシーがほかのメンバーに向かって草を掲げた。
「よく見なさい。これヒール草モドキよ。ほら、土で隠れてるけど赤い斑点が根元にあるでしょ。こっちが本物のヒール草よ」
そういってステラが訂正する。なんか勝ち誇ったような顔をしてるけど。
「いえ、それはニセヒール草ですわ。本物はこっちですわ」
そういってオリビアが草を持ってくる。
「、、、ステラだって人のこと言えないじゃん」
ルーシーの小声で放った一言に怒ったステラがルーシーに突進していく。
どれも紛らわしい。なんかいい方法はないだろうか。
【アカリ、草を見分ける方法はないかな?】
【そうでしたら、チームのみなさんの目に識別魔法をかけましょう。皆さんに集まるように指示を出してください】
やっぱりアカリは頼りになるな。
「おーい!みんな集まってくれ」
そういってみんなを一度集めた。
「どうしたんだ?」
ライアンが聞いてきた。
「実はいい方法を思いついたんだ。今から識別魔法をかける。ちょっと目をつぶってくれ」
みんな不思議そうな顔をしていたが素直に従ってくれた。
俺は魔導書を開きつつアカリに話しかける。
【アカリ頼む】
【かしこまりました】