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第39話 アカリvs伝説の魔物 その2

 ギャーーーーー!!


 クラーケンは地震を起こしながら痛みに悶えて暴れまわる。

 それだけでも十分に脅威だが、アカリはでたらめな動きをする足を掻い潜って次々に攻撃を加えていく。


 それからしばらくたった頃にはクラーケンはすべての足を切断されてしまった。

 切断された足が虚しくもピクピクと動きながら海中に沈んでいく


 あまりの痛さからかクラーケンは広げていた足を引っ込めて縮こまってしまう。それでも十分に巨大なのだが。


「はあ、伝説の魔物と言われている割にはずいぶん弱いですね。高々足が切られてしまったくらいでそんなに怯えて、全然切りごたえもありませんでした」

 アカリは呆れたような声を出す。興ざめしてしまったようだ。


【タクミ様、どうやらこのクラーケン大したことなかったみたいです。これならタクミ様一人でも十分】

【アカリ!後ろだ!!危ない!!】

【どうしたんです、、!!】


 アカリは突然後ろから噛みつかれたような感覚に襲われた。身体強化魔法を施していたことから食いちぎられるということはなかったが、アカリは完全に拘束されてしまう。


(私としたことが油断していました!早く拘束を解かないと!!)


 腕に力を込めるも相手の力の方が上らしくなかなか脱出することが出来ない。

 もがいている間にも「何か」はアカリをくわえたまま海底の崖へと猛スピードで移動していく。


 ドーーーーーーン!!!


「何か」はスピードを一切緩めることなく崖に衝突した。砂埃が水中に舞う。


「くっ」

 突然の出来事でアカリは対処できず頭からぶつかってしまった。

 頭から血が滲み海水がわずかだが濁る。


「回復魔法、、、、一体こいつは何者なのでしょう?」


 緑色の光がアカリを包み、すぐさま回復したわけだが彼女は混乱していた。

 先程まで生き物が何もいなかったにもかかわらずこのような状況に陥ってしまったからだ。


 おまけに後ろから噛まれてしまっているためこの生き物の正体を直接見ることが出来ない。


 そんな状況だったが、視界が晴れてくるとアカリは目の前に複数体、正確に言えば9体の生物がこちらを囲んでいることに気付いた。


「これは、、、、クラーケンフット!!すっかりその存在を忘れていました」

 その生物をみたアカリはため息を漏らす。


 薄汚れていて、体の下の方には吸盤がついている。そう、アカリを襲った生物は彼女が切った足の先端だった。根元の部分に目が2つ出来ていて、先端部分は二つに裂け、まるでワニの口のように大きく開いていた。


 そもそもクラーケンの足を切断する実力がないとこの生物は生まれないため、この世界の資料にはほとんど記されていない。アカリが忘れていたのも無理はなかった。



 キューーーーーー!!!!


 後ろの方でクラーケンが悲鳴というよりも笑い声のような奇声を発していた。

 縮めていた足を再び広げている。よく見ると足の先端がそれぞれ二つに分かれていた。


 アカリが自ら言っていた通り、高々足を切っただけの結果が逆にアカリ追い込んでしまっていた。


 キュッ!!


 クラーケンは短く声を発する。クラーケンフットにトドメを指せと命じたのだろう。

 そのうちの9匹は口を大きく開けた。


 ゴゴゴゴゴゴ、、、、


 口の中心部には音波爆弾が形成されて行く。

 1つなら楽に対処できたアカリでも9つも同時に食らったらひとたまりもないだろう。


 ドーーーーン!!!


 戦いの終わりを告げる爆弾が放たれてしまった。

 音波爆弾は互いにぶつかり合いながら指数関数的に威力を高めていく。


 すさまじいエネルギーがアカリを拘束している仲間ごと襲った。

 その後も爆発は拡大し、至近距離から放った9体のクラーケンフットたちも巻き込まれてしまう。


 離れたところから見ていたクラーケンは自分の勝利を確信するのであった。



 ーーーーー


 爆発によって生じた衝撃はどんどん収まっていき、最終的には跡形もなくなった。


 勝負を終えたクラーケンは満足して、再び暴れるため、魔力反応が多い陸地に移動しようとする。


 その時だった。


 グツグツグツグツ、、、、


 クラーケンの近くで煮えたぎっているような音がした。

 気になったクラーケンは魔力探知を使って周囲を探る。


 すると、自分よりも水深の深い位置に物影があることが分かった。


 目の見えないクラーケンはさらに魔力探知を強化して使ってそれが何かを探る。

 そして知ることとなった事実に驚愕する。



「クラーケン、何故勝った気でいるんですか?勝負はまだまだこれからでしょう?」

 そこには体の周りに炎をまとったアカリの姿があった。


 水中では水圧が高いため水の沸点は高くなる。そのためアカリのいる深海で水が沸騰するためには通常よりもはるかに高い温度が必要だ。


 そんな中アカリに触れた水は一瞬にして水蒸気となり挙句の果てにはその泡の中で炎が上がっている。


 アカリ自身の体も真っ赤に燃え上がり、外から見れば人の形をした太陽そのものだった。


 ギュ!!!


 物理法則を無視したアカリの姿を見たクラーケンは身の危険を感じ、すぐさま逃げようとする。時間稼ぎに使おうとクラーケンは自ら足を10本切り落とし、再びクラーケンフットを作り出した。


 指示を受けた10匹が一斉にアカリに向かってくる。


「そんなちっぽけな生物じゃ今の私に指一本触れられませんよ?」


 そんなことを言っているつゆ知らず、クラーケンフットたちは一斉にアカリに突っ込んでいく。


 ジュッ!!!ボンッ!


 アカリに触れようとしたクラーケンフットたちはあまりの温度に一瞬で燃えてなくなってしまった。


 ギューーーーー!!!!


 1匹1匹Aランクの実力をもつクラーケンフットが一瞬で倒されたことに怯えたクラーケンは、踵を返して全力で泳ぎだした。


「ここからは勝負じゃなくて狩りですね」

 アカリは朗らかに呟いた。

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