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第13話 狩りの時間

 イノースは体の向きを変え、ソフィアに向かって突進する。ソフィアはその場で剣を抜き、じっと構える。


(まだよ、まだダメ、、、、、、今!)

 ソフィアはギリギリで躱し、強力な一撃を放つ。イノースは回避できずにまともに食らう。


「ヴォーー、、」

 その鳴き声を最後に動かなくなった。


「やったわ!!」

 ソフィアはその場で小躍りしつつ、討伐の証明である角を刈り取った。

 俺たちもその場に駆け寄る。


「すごーーい!完ぺきだったじゃん!あたしも頑張らなきゃ!」

 ルーシーが真っ先に抱き着いた。


「ありがとう!何とかうまくいったわ!」

 ソフィアも笑顔でルーシーを抱きとめる。


「素晴らしかった。僕も頑張らないと。」

 ライアンも笑顔を見せる。


「よし、俺たちも探そう!」


 ーーーーー


 再び捜索を始めると次はオリビアが見つけた。


「今度は私の番ですわ。皆さんに本気を見せて差し上げましょう。少し離れてくださいまし」


 俺たちが離れると、オリビアはパサッと背中の大きな翼には不釣り合いなほど小さな羽音と共に飛び始めた。


 その姿は木の間からこぼれる陽の光と相まって輝いて見える。


 おっと、見とれている場合じゃない。オリビアは木の間を縫うようにして向かう。


「ヴォビ?」

 イノースは周囲の違和感に気づいたのかキョロキョロとし始めるが、どうしてなのか分からないでいた。それもそのはずだ。相手は上空から迫ってきているのだから。


 オリビアは加速すると、突然翼を閉じた。慣性の法則に身を任せつつ、腰につけていた細長い剣を両手で下向きに持つ。


 上空が徐々に暗くなっていることに気づいたイノースは上を見上げたが時すでに遅し。オリビアはイノースの上に着地するとともに頭にその剣を突き刺した。


 獲物は鳴き声を上げる間もなく絶命した。



「上手くいきましたわー!!」

 オリビアが刈り取った角を握りしめつつ、満面の笑みで手を振ってくる。


「、、、オリビア強すぎ!なんか私の狩りが弱々しいみたいじゃない!」


「そんなことありませんわ。ソフィアの狩り方は先生のお手本通りの素晴らしいものでしたわ。私は自分が有翼族であることを生かしただけですわ」


「それが十分すごいんだけどね。空中から一撃とか自分がやられる立場だったら怖すぎ」

 ステラがブルッと身震いした。



 こうして俺たちは一人ずつ、ライアン、ステラ、ルーシーの順番で倒していった。残るは俺だけなのだがどうしても見つからない。日が傾いてくると危ないから、そろそろ見つけたいんだけど。


【アカリ、イノースが全然見当たらないんだけど】

 困ったときのアカリ様だ。


【そうですね、、視覚を()()()()()強化しましょう。そうすれば見つけられるはずです】

 あくまで俺に見つけさせてくれるようだ。


【ありがとう。そうしてくれ】

【かしこまりました。魔法を展開します】

 いつものように魔法陣が展開され、その文字が俺の目の中に入ってくる。


 さてさて、どんな風に見えるかな??目を開くと、いつもの見え方と違うので、メガネの度数を変えたときのようにクラッとしたが、慣れてくるといつもよりもクリアに、そして遠くまで見えるようになっていた。


 これならすぐ見つけられそうだ。


 すると遠いようだがイノースを発見した。


「おーい、イノースを見つけたぞ!」

 俺は魔法を解き、みんなを集めると、イノースの方を指さした。


「え、タクミあれと戦うのかい?」

 ライアンが若干引き気味に言う。なぜか首筋には冷や汗目で流れている。


「当たり前だろ。イノース討伐なんだから」


「キャンプ訓練で普通の人だなって思い始めてたけど、やっぱ戦闘のことになると異常だよね」

 ステラがあきれ気味に言う。


「えーっとね、、、なんでもいいけど、あたし。逃げてもいいかなっ!?!?!?」

 なんだよ、ルーシーさっきイノース討伐したばかりなんだから平気だろ。っておいみんなまで逃げるなよ!


「ヴァァァンンンモーーー!!!!!!!!」

 背後からイノースの声が聞こえる。っあれ?イノースだよね?なんか地響きまで聞こえるんだけど!?


 ゆっくりと振り返ると、、、、4メートンを超えるイノースだった。


【アカリ、、、どういうことか説明してもらえるかな?さっき遠くにいるのを見たときは確かに普通サイズのイノースだったんだけど】


【あー、もしかしたら対象が小さく見える魔法をかけてたのかもしれません。間違えちゃいました。すいません。てへっ】


 それはしょうがないね、、、ってなるわけないだろ!!!!!それになんだよ「てへっ」って!絶対わざとだろ!!


 こんなノリ突っ込みモドキをやってくる間にも巨大イノースはどんどん俺の方に向かって歩いてくる。


 その眼はしっかりと俺を見つめ、「よくも仲間をやってくれたな」とでも言いたげに憎しみの表情をしている。


 いや、俺まだ一匹もイノース倒してないんですけど!人違いなんですけど!


【アカリ!どうするんだ?何とかしてくれ!】

【かしこまりました。通常剣創出、剣術ナビゲートを発動します】


 地面の魔法陣が光ると中央からどこにでもあるような普通の剣が出てきた。というか、この前より魔法少なくない?


【アカリ!前みたいに疑似聖騎士化だっけ?あと切断強化とかもっと強い魔法使ってくれよ!それに通常剣創出とかかっこいいこと言ってるけど結局普通の剣じゃないか!】


【この前の試験の際もっと魔法をセーブするようおっしゃられていたのでそのように致しました。】

【このタイミングじゃないだろ!!!】


【ご安心ください。タクミ様ならこれくらいの獣はこの程度の装備と魔法で討伐できますから】



「ヴォォォォーーーー!」

 この最悪なタイミングでイノースは突進を始めた。


 ええい、やけくそだ!これで倒せなかったらアカリを呪うからな!!!


 俺は剣を巨大イノースに向けて構えた。

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