第0話 はじまりは夕飯時に
初めての投稿となります。
色々と至らないところもあるかと思いますが、どうぞよろしくお願いします!
「あー頑張った・・・」
俺はサークル終わりの疲労を感じながら、帰宅の途についていた。
大学1年生になった俺ことタクミはやっと大学生活や一人暮らしにも慣れ、授業にバイトにサークルと毎日充実した生活を送っていた。
とはいえ、彼女がいるわけではないから、リア充にはなれていないが。
だから俺はいつもと同じように駅前のとんこつラーメン屋に行こうと思い、駅の改札を右に曲がり飲み屋街の方へと歩き始めた。
「あれ、人が全然いない」
ここで俺は小さな違和感を覚える。ラーメン屋のある路地は、いつもなら騒がしい声が響き渡っているはずなのに、今は誰一人姿が見えないのだ。
少しだけ道を戻りほかの路地をのぞいてみると、そこは普段通りの人込みと笑い声があった。どうやらこの現象はラーメン屋の路地だけで起きているらしい。
今思えば、そこで店に行くことをやめ、牛丼屋に行き先変更をしていたらあんなことにはならなかっただろう。
しかし、ラーメン屋の店明かりがついていたことから、俺はそれ以上深く考えることはなかった。
「おじさん、とんこつラーメン麺固めネギ多めで」
俺は扉を開けつつ注文した。いや、注文したはずだった。
目の前には昔ながらの中華屋のようなカウンターやテーブルはなく、本棚が多く並び、分厚く、革張りの本が隙間なく並べられている。しかも本棚は見上げると首が痛くなるほど高い。ラーメン屋は平屋だというのに。
開いた口がふさがらない俺だったけど、立ちすくんでいると今度は本が空中を飛び始めた。
身の危険を感じた俺はすぐに店を出ようとドアの方に振り向くが、なぜか本棚に替わっており、出口はなくなっていた。
「そ、そんな・・・」
絶望を感じる間もなく、後頭部に本の角が当たった俺はどさりと倒れて気絶してしまった。
どれくらいたっただろうか。
俺は頭の後ろに鈍い痛みを感じながら起き上がった。あたりを見渡してみると、そこには相変わらず本が並んでいた。
「なんなんだこの部屋は・・・」
俺は試しに一つ赤色の本を手に取ってみるが、丸みのある文字が連なっているだけで判読不明だ。
何の情報も得られなかった苛立ちとともに強引に本を棚に戻すと、ふと奥のほうに明かりが見えた。
一刻も早くこの部屋から抜け出したい思いから俺は急いでその明かりの方へと向かう。
「頼むから駅前の通り沿いであってくれ」
そしてその明かりを潜り抜けると、、、、
青空の下、木造の屋台が通り沿いに広がっていた。