私はずっと…
午後11時。
月がのぼり、暗い静かな夜。誰もいない公園に私は君といた。
「・・・・・ごめんね。付き合わせてしまって」
君が私にそう言う。なんで謝るの?謝る必要なんてないのに。それに私は君のそばにいたいんだよ。私なんかも大切にしてくれる君の力になりたいんだよ。
君・・・・・彼は優しい人間だ。何かある度に、彼は関係ないのに罪を被り、悪者になる。周りの敵になる。そうすることで彼にメリットがあるわけではない。むしろデメリットしかない。それでいじめられることだってあるのだ。彼は自分自身を犠牲にし、周りのために敵になり、戦っている。周りはこのことを知らない。知らないから彼を敵視し、彼のそばに誰も近寄らない。
そして、私は彼に守られ、彼は周りの敵になっている。
「・・・・・ねぇ」
私は隣にいる君に聞く。
「なんでいつも敵になるの?君は何もしていないのに」
君は少し考え、私に答える。
「・・・・・気分」
・・・・・嘘だ。気分だったら何回もこんなことしない。
「ちゃんと答えて」
私は強めに聞く。君は何も答えず、下を向く。
沈黙。
「・・・・・だから」
「え?」
君は口を開き、沈黙を破る。
「それが、僕の生きる理由だから」
・・・・・何を言ってるの?
「誰かの代わりに僕が犠牲になるべき、そう思っているから。僕が・・・・・犠牲になるべき人間だから」
「・・・・・どうして・・・・・そう思うの?」
「僕は昔、いじめられていて、耐えられなくなって、自殺しようとした」
「!?」
「でも、死ねなかった。屋上から飛び降りたのに。どうして死ねなかったんだろうってずっと考えて・・・・・分かったんだ。僕は生きなきゃいけないって。周りの犠牲になるために」
・・・・・分からない。
なんでそうなるの?死のうとして死ねなかったからって、なんでそうなるの?犠牲になるために生きるなんて・・・・・
「違う」
絶対に違う。君は犠牲になるべき人間じゃない。
「いじめられてたからって、死ねなかったからって・・・・・そんなの違う!絶対に違うよ!君は!君・・・・・は・・・・・」
気づけば私は涙を流していた。濡れた目で君をみて、言う。違う、と。
でも、私がどれだけ言っても、周りは明日も君を敵視するだろう。そして君は、自分自身を犠牲にする。
あぁ、もう『明日』なんてこなければいいのに。
だが、世界は私の思いなんて知らずに―
午前4時。
私と君は公園にいた。今日が・・・・・『明日』が来た。そして、また君は犠牲になるだろう。君のために何かしたい。
今の私に出来ること・・・・・
私は君の手を握る。君は驚いていたが、そんなの気にしない。
「周りが君を敵視しても、私はずっと君のそばにいる。絶対に」
君はまだ、犠牲になることが生きる理由だと思っている。だから、君はずっと1人だ。だから、私は君のそばにいる。そして、君が考えを変えてくれるのを、ずっと待ってるから。