酒場での出会い
翌日、彼らは隣の都市ウァサゴに向かって出発した。そこに行くには長い距離を移動するが1つ問題があった。
「「はぁはぁ、きゅ、休憩しよう」」
「えーまたー?」
年上2人の体力が年少組に比べて著しく劣るという。
「急ぐ理由もないからいいだろう」
フレキが仕方なさそうに認める。そこにブリトーが提案をする。
「ふぅ。なあ1つ思ったんだがよ、カバンに3人入って交代で1人が持ち運べばよくないか?」
「「「確かに」」」
3人も承諾する。
「そうだね、じゃあ僕とブリトーとシャーロットが入ってるからフレキが運んでくれ」
「わかった」
3人はカバンに入りまた移動が始まる。
「なぁブリトー」
「なんだ」
「この国は歩く以外の移動手段はないのかい?」
「あるにはあるんだが、今は非常に高値で取引されてる。確か鹿に車を引かせるんだ。で、北に行くと鹿が大きくなっていく」
「へぇ、そうなのか。ドラゴンとかに乗るんだと思ってたよ」
「いや、この国は魔獣がいないからな」
彼らが話し込んでいるとシャーロットがぼやく。
「シュタイーン、ブリトー。ひまだよー」
「そうか、ブリトー暇つぶしができるものあるかな?」
「ないな」
「んー、どうするかな。あぁ!ちょっと待っててくれよ」
彼は何かを思い出したか自分の部屋からそれを取ってきた。
「これを舐めてなさい。お菓子だよ(1年以上前の)」
彼は飴玉を彼女に渡した。彼女は嬉しそうに舐める。
「ありがとー。おいひい」
「なぁ、シュタイン俺にも……」
「ダメだ」
ブリトーの願いをバッサリと切り捨てるシュタイン。それを見てシャーロットは笑う。
「えへへ、アタヒ今までフレキとおばあひゃんとしか居なかったけどなんだか家族みたい」
シュタインは一瞬硬直してから遅れて彼女の頭を撫でる。
「そうか、家族か。それじゃあ大切にしなきゃな。あと、口の中にものが入ってる時に喋ったらダメだよ」
コクコクと彼女は頷く。
「さて、それじゃあ僕は少し寝てくるよ昨日は徹夜だったからね。ブリトー、相手をしてあげてくれ」
「ん、ああ」
シュタインは2人を残して寝室に向かう。独り言をつぶやいて。
「家族、ね」
「じゃあシャーロット。何しよっか」
ブリトーは飴を舐め終わってしまった彼女に聞いた。
「うーん、斧のお手入れ!」
「わかった、俺が最高の切れ味に仕上げてあげるよ」
彼女は自分の寝室から武器を取って来た。
しばらくしてフレキが入って来た。
「そろそろ交代だ。シュタインはどこだ」
「旦那なら寝てるぜ」
「わかった」
彼はシュタインを起こしに行く。
「おい、シュタイン交代だ。なんだ寝てないのか」
「ああ、わかった」
彼は部屋で右腕の手入れをしていた。
カバンから出て彼は道に沿って歩く。20分ほど歩いて休憩してい?とオークたちが10人現れて彼を取り囲み剣を突きつけた。
「おい、人間。身ぐるみ剥いでいきな」
「ぶひひ、こいつ俺たちが何言ってるか理解できてんのか?」
盗賊の集団だった。彼は慌てて状況を打開しようとする。
「まて、なぜ僕なんだ?」
「そりゃ、人間だからだろ、ってしゃべったぞこいつ」
「そうか、なら勘違いをしているな」
「どういうことだ?」
彼は右袖をめくりながら言う。
「この右腕、わかるかな?僕も魔族だよ」
「そうなのか?」
オークたちがブヒブヒと騒ぎ出す。しばらくして盗賊たちのまとめ役であろうものがいった。
「なら悪かったな。行っていいぞ、俺たち盗賊は人間専門だからな」
「助かったよ。それじゃっ」
彼は駆け足でその場を離れる。
「馬鹿な奴らだな」
その日の夕方に一行はウァサゴに着いた。ブリトーが皆を呼び出す。
「着いたぞ、ウァサゴだ」
「意外と早く着いたね」
「当然だ。俺が人狼化して走らされたんだから」
「アタシもいっぱい走ったしね」
彼ら4人は街に入って宿屋を探した。酒場もついていて2階が宿になっている場所に泊まることになった。
「1部屋1泊。一番安い部屋でお願いしよう」
オークの宿屋は
「4グラニューね、食事は酒場で別途払って。ごゆっくり」
彼らはその場で食事を済ませようと席に着いた。周りからは景気の悪い話ばかりである。
「最近売り上げどうよ?」「全然ダメだな」「人間向けに変えたらどうだ?」「それは俺の自尊心が許さん」「だよなぁ」
「お客さん、注文は?」
「パンとチーズとぶどう酒を4人分、ぶどう酒1つは薄めてくれ」
「かしこまりました」
注文をしてしばらくして料理が来る。食事中にシュタインが話し始める。
「今僕たちに必要なものはなんだと思う?」
ブリトーが答える。
「それは旦那、仲間の数じゃないか?」
「それも1つだ。でもそれより大事なものだ」
次にシャーロットが答える。
「うーん、お金?」
「いや、それはあるみにうむで相当稼いだから違う」
フレキが答える。
「昨日言ってたあれだな。文字の読み書きがどうとかいう」
「答えに近いね、正解は知識だ。それが僕たちには必要だと僕は思う」
すると彼らの後ろから話しかけるものがいた。
「面白そうな話してるじゃない。私も混ぜてよ。あ、ぶどう酒1追加ー」
長く伸びた美しい髪。その色は紫がかった黒。シュタインやブリトーと同じダークブラウンの瞳。そして
「どうしたのドワーフのおじいさん? 私の胸に何かついてる?」
「ああ、いやなんでもないです」
男を釘付けにする豊満な胸。フレキがその黄色い目を彼女の顔にやり聞く。
「それで用件はなんだ?」
「面白いそうな話してるから混ぜて欲しかったの。人間がどうこうってことはあなたたち魔族よね?」
シュタインが受け答える。
「そうですが、そういうあなたは?」
「私?私はサキュバスよ、角や翼は出してないけど立派な魔族。あと、敬語はいいわ」
「そうか、で面白そうな話かな?人間に復讐する組織を作っているだけだよ」
「今までそんな魔族いなかったんだから十分面白いわよ。で、それってまだ人足りない?」
「まぁ、そうだね」
「じゃあ、私も入るわ。いいでしょ?」
「皆次第かな」
そう言って彼は3人に向き直る。
「どうする?」
「旦那がよければ俺はいいぜ」
「俺は入れてもいいと思う」
「アタシもー」
「決めるの早いな」
そして、彼は再びサキュバスの方を向く。
「というわけでよろしく、僕はヴィクター・フランケンシュタイン。シュタインと呼んでくれ」
「ビーフィーファブレイヤーだ」
「フレキだ」
「アタシはシャーロットだよ」
4人が名乗った後サキュバスも自身の名を告げる。
「私はヴェルギナ。ヴェルギナ・テッサロニキ。よろしくね」
「「「「よろしく」」」」
全員の紹介が終わった後シュタインは彼女に話しかける。
「ところで君は文字の読み書きができるかな?できるなら教えて欲しいんだけど」
「できるよ、あと人語も分かるよ。私たちは、言葉が理解できなきゃ夢に入れないからね〜。で、教えて欲しいの?全然いいよー」
それからしばらく彼らは話し合う。
「じゃあ明日の昼にここで会おう。また仲間を探しに出るから」
「はぁい、じゃねー」
彼女は4人の元を離れて酒場を後にする。
彼女が去った後、フレキが呟いた。
「思わぬところで仲間ができるもんだ」
それにブリトーが相槌を打つ。
「全くだなフレキ」
「さて、僕たちも部屋に戻ろうか」
彼ら4人も翌日に備えて2階に上がっていった。