森の家での一夜
シュタインたち4人はシャーロットとフレキの住んでいる家に来た。
「今日はここに泊まっていけ。体を洗うならあそこにある小川で水浴びをしてくればいい」
人狼であるフレキは変身を解いて言った。現れたのは178cmほどでいい体つきをした黒髪の青年だった。ブリトーとシュタインは声を揃えて言う。
「「羨ましい」」
ブリトーはシャーロットを見ながら続けて言う。
「俺より背が低い奴がいるとなんていうか優越感に浸れるな」
そしてシュタインはブリトーを見下ろしながら頷く。
「分かるよ。その気持ち」
「夕食を作るから2人ともその間くつろいでいてくれ。シャーロットは体を洗ってこい」
「うん、わかった」
彼女は部屋から去り、
「できたら呼んでくれ」
ブリトーとシュタインはカバンの中に入っていく。
「はぁ、この1週間は疲れたよ。人を撃つなんて初めてだったし、久々に生き物の死体なんて醜悪なものを見たからね」
彼は重ねて言う。
「それからブリトー、僕がどこから来たかは君と僕の秘密にしておいてくれるかな?」
「ああ、分かった。安心しな、俺は戦いで本気を出すのと約束を破るのは絶対にしない」
「何の話ー?」
「「うわっ」」
いつの間にか彼らの後ろにはシャーロットがいた。彼女は笑いながら言う。
「そんなにびっくりした?はじめて見たから入ってみたくなったんだけど……あっあの丸いのなーに?」
彼女は指を差しながら2人に聞く。
「あぁ、あれはね僕とブリトーで一緒に作ってる道具だよ」
「へーどんな道具なの?教えて教えて」
「それは出来上がってからのお楽しみかな」
「えー、ずるいずるい。じゃあアタシも手伝いたい」
その会話にフレキが入ってくる。
「夕食、出来たぞ」
助かったとばかりにシュタインが言う。
「先に行っててくれシャーロット。僕とブリトーは後から行く」
「はーい」
彼女とフレキが出て行きシュタインはブリトーに言う。
「君ぐらいの理解力と発想力があればいいんだけどね」
「よせ、照れるじゃないかシュタイン。でも何に使うかは教えてもよかったんじゃないのか?」
「いや、ま、ネタバレはいかんでしょうね」
「うーん、それもそうか。さて食べに行こう」
残りの2人もすぐに向かった。
夕食は比較的質素なものだった。
「森の木の実と肉の炒め物だ。これだけしかないが食ってくれ」
4人は黙々と食べる。シュタインが口を開く。
「ところで2人は文字の読み書きはできるのかな?」
「できなーい」
「できないがどうしてだ?」
「いやなに、できるのなら教えて欲しかっただけだよ。できないなら仕方ない、次に期待するとしよう」
するとフレキが怪訝そうな表情で聞いた。
「次ってなんだ?」
「ああ、僕たちはいま組織を作るつもりでね。仲間を集めているところなんだ」
「そうか。で、それは何の組織だ?」
「それはね……」
彼が戸惑っているとブリトーが口を挟む。
「まぁ簡単にいうと人間に仕返しをしよう、みたいなもんだ」
するとシャーロットも会話に加わる。
「いいね、面白そう」
「だから俺たちを選んだ訳か」
「そうそう、そういうことさ。ま、そうなるまでにかなり時間がかかりそうだから覚悟してくれよ」
「だがなぜ人間であるお前がそんなことをする?」
シュタインは話をそらす。
「お前と言わないでくれないかい?これでも組織のリーダーになる男なんだから」
「いや、俺はまだお前を認めてない、シャーロットがお前を気に入っただけだ。俺はこの子が守れるならなんだっていい、それだけだ」
「かっこいいことを言うね。何歳だ?」
「俺は16歳、この子は10歳だ」
それを聞いてシュタインは悲しそうな顔をした。
「10歳か。そんな歳で人を殺してばっかりか。普通の女の子としての暮らしも知ったらいいよ」
「アタシはそれでいいの。おばあちゃんが言ってたよ。アタシたちレッドキャップは殺したいから人を殺すの。だからアタシはそれでいい」
シュタインは食事中には聞きたくなかったため話を変えようとする。
「ところでフレキはどうして彼女と一緒に住んでいるのかな?」
「俺か?俺の話しは別にいいだろ」
「そうか」
そこでいち早く食べ終わったブリトーが席を立つ。
「旦那、先に作業に戻るぜ」
「ああ、分かった」
「2人とも持っていく荷物があったらカバンに入れておいてくれ。明日すぐに出発する」
「うん」
「わかった」
すぐにシュタインも食べ終わり、カバンに戻る。
「来たか、旦那」
「待たせた 」
「これももうすぐ完成しそうだな」
「そうだね、僕の腕を作るよりかは簡単だったからね。でももう少し機能を追加したいな。今はまだ赤外線カメラにしか切り替えられないけど、どうしたらいいかな」
「そこは俺にとって未知の領域だから分からん」
2人の作業は夜通し続いたのであったーー