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悪魔より怖い男  作者: 315
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出発

 グンマー王国の王都バベルにある魔王城にてドラゴニュートの3代目魔王ディオニスはあるものについて人族のものと会話をしていた。

「これがこの1年で突如現れた超希少金属あるみにうむか」

「はい、魔王陛下。それを是非ともオスマニール帝国に輸出していただきたいのです。この国の戦士階級は滅んだ人狼族、レッドキャップと姿をくらました吸血鬼、北のルシア帝国に寝返ったリザードマンの代わりに我々オスマニール軍が担っております。ですからそのご恩をここでお返し頂きたい」

「その恩はすでに返したであろう。私はこの王国の民をそなたらに差し出したのだ。コボルトは鉱山奴隷にドワーフは武器の生産奴隷にハーピーの女性とパーンは愛玩奴隷にサキュバスとインキュバス達に至っては殺されるのをわかっていて貴国や諸王国に差し出したのだから」

「そうですね、では……」

 その言葉を途中で遮りディオニスは言い放った。

「とにかく、本日のところはお引き取り願おう。将軍殿?」

「はっ、ではこの話はまた後日。失礼いたしました魔王陛下」

「よい、引き続きこの国の防衛を頼むぞ」

「はっ」

 その言葉を最後に将軍は玉座の間を立ち去った。それから魔王は1人の召使いを呼びこう言った。

「すぐにサキュバスたちに伝えておけ。あるみにうむを作ったものを探し出して隷属しここに連れてくるようにな」

「かしこまりました、魔王陛下」

 そして将軍の方も部下に命令を下す。

「あの愚王は我々に技術を渡さない気だ。オスマニールの誇りにかけて生産元を探し出して技術者たちを連れてこい」

「御意」

 その言葉を皮切りに魔族と人間の技術者を探す競争が始まった。


  * * * * * * * * * * *


 一方その頃、渦中の人物はバエルにて幸せなひと時を楽しんでいた。

「あ〜やっぱり風呂に入るのは気持ちいいものだ。オークが綺麗好きな魔族だったおかげで浴場がに入れるし、水洗トイレもある。素晴らしい限りだ。それにしてもブリトーめ風呂のことを黙っているなんてひどいやつだな」

 彼がこの世界に来てからすでに1年が経過していた。その間に彼が行ったのはアルミニウムの生産による金稼ぎ、拳銃の開発、無煙火薬・黒色火薬の生産、右手用のロボットアームの義手の作成であった。そのおかげで彼は何年か遊んで暮らせるであろう大金を手にしていた。浴場にはオークぐらいしかいないがオークは人口が多いため寂れているわけではない。

 余談ではあるがこの国の政治体制はオーク・ドワーフ等の生産階級、リザードマン・人狼・レッドキャップ・吸血鬼の戦士階級、エルフ・魔王の統治者階級である。しかし現在は戦士階級は人間が代わりにになっていてエルフも絶滅したと言われている上に、デイオニスの半傀儡化によって崩れかけている体制だ。

 浴場から出ると彼は機械の右手でポーションを飲みながらいう。

「やっぱり風呂上がりのポーションは最高だね!」

 街を出てブリトー達のいるところに帰ると、

「おかえり、旦那。今日も風呂か?相変わらず好きだな!」

「まぁね、ところで前から気になっていたんだがオークはなんで人口が多いのに食糧が足りなくならないんだ?」

「それはだな、オークたちの魔法を使ってるんだ。確か複製魔法だったかな? それのおかげで俺たちは領土を取られても食糧には困らないのさ」

「なるほど」

 とシュタインは感心する。

「魔法にもいくつかあるんだぜ。オークが複製魔法、俺たちが空間圧縮魔法、一人前と認められたドワーフはこれで作ったカバンを渡されるらしい。それから、エルフの四元魔法と闇魔法、光魔法。あと吸血鬼の……」

「わかったわかったいっぺんに話さなくて良いから」

 シュタインはブリトーの話を遮る。

「ああ、すまない」

 それからシュタインは真面目な顔になって言う。

「今から少し大事な話をするんだがいいかな?」

「ああ」

「あと何日かしたらここを出るよ。この1年でかなり体力もついたし、武器もそれなりに用意できたしね。元の世界に帰るための方法を探しに出たいんだ。それで、良ければ君も一緒について来てくれないだろうか?恩返しもしたいし」

 それを聞いてブリトーはその長くて白いヒゲをいじりながら思案顔となる。しばらく考えてから彼は言った。

「ああいいぜ、旦那。俺はついていく、どこへでもな。あと、恩なんてこの1年で返してもらったよあれだけの素晴らしい知識を披露してくれたんだからな。ドワーフにとって最高のお礼だったよ」

 その言葉で安心したのかシュタインはうつむいてひたすらに言った。

「ありがとう、本当にありがとう」

「いいってことよ」

 その日の食卓でブリトーは両親に旅のことを告げた。するとヘンリーもシャーネも快く応じた。そしてヘンリーは嬉しそうに言う。

「これでようやくお前を1人前と認めよう。ちょっと待ってろ」

 ヘンリーはどこからともなくカバンを持って来た。

「ビーフィーファイブレイヤーお前にこれを渡そう。道中泊まれる場所が見つからなければこの中に泊まれ。怪我をしたら、病気になったらこの中にあるポーションを使え。そして、必ず無事でいてくれ」

 そして、カバンをブリトーに渡す。彼は嬉しそうにお礼を言う。

「ありがとう親父、お袋。俺、絶対誇りに思える息子になるよ」

 食事が終わり、さっそくカバンの中に入ると中は6部屋あった。薬品庫、二段ベットのある寝室。クイーンサイズほどのベッドがある別の寝室。武器庫になりそうなもの、鍛冶場、シュタイン用であろう部屋。それを見てシュタインは言う。

「ヘンリーさん感謝します。必ず息子さんは守ります」

「頼んだぞ」

 彼が言ったのはその一言だった。シャーネはその間中涙を流しながらひたすら頷いていた。

 3日後、カバンに全ての荷物を入れた2人は出発した。これから始まる長い長い冒険へとーー




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