ドワーフと暮らす男
サブタイトルを間違えていました。申し訳ありません。
あの日からそろそろ1ヶ月がたとうとしていた。ここで僕はいくつか知ったことがある。失ったのは右腕と右目、実に不便だ。僕を助けてくれたお爺さんたちは自分たちは人間ではなくドワーフだと言っていた。お婆さんはシャーネでその旦那さんがヘンリー、息子はビーフィーファイブレイヤーという名前らしい。……ブリトーと呼ぶことにした。
言葉を教えてくれたのはブリトーで、見た目はお爺さんだが僕と同い年の34歳であることに驚愕した。彼ら曰くドワーフは3歳で成人して、7歳で老人になるらしい。信じられない。
風呂には入らないが臭いは気にならなかった。その理由はおそらくトイレのおかげだと予想している。この家に来てから2日目お腹が痛くなった僕は股間をおさえて足踏みしていたら察してくれたのかトイレに連れて行ってくれた。ただそのトイレがこれまでに嗅いだことのないすさまじい臭いで鼻が馬鹿になったのだ。あれは死ねる。
また、僕が助けられた理由はヘンリーが夢で「家の近くに男が落ちてたら助けてあげるように」と言われたかららしい。これまた信じられない話だ。その後、ブリトーが外に出かけると僕が落ちていたらしい。僕が来てからヘンリーは憑き物が落ちたように元気になったらしい。
僕が飲まされた液体はポーションと呼ばれていて赤が鎮痛、青が傷の治療の効果を持つという。ドワーフはそれを作る薬屋か鍛冶屋を営むそうだ。ちなみに僕の腹痛もこれで治してもらった。
そして、僕がいるこの国はグンマー王国と呼ばれているみたいだ。魔族が住んでいて魔王が治めているとかなんとか。この話を信じるならばここは自分がいた世界とは違う世界、いわゆる異世界であると予想される。
余談だが、あげられるものがないにも関わらず居候させてもらうのは気まずいため、黄色のビー玉をダメ元であげるとすごく喜んでくれて好きなだけいてくれと言われた。いい人達だ、この恩は絶対に忘れまい。だが、元いた場所に帰るためにはいずれここから出なくてはならないだろう。とりあえずは生きる術を身につけなくてはならないな。
* * * * * * * *
「はぁ、どうしたものか」
賢治はため息をついて悩んでいた。すると部屋に背の低い老人が入ってくる。
「どうしたんだ、シュタイン? 悩み事か? 相談に乗るぞ?」
シュタインそれは、彼が名乗った偽名ヴィクター・フランケンシュタインの愛称出会った。
「いやなに、作りたいものがあるんだよブリトー。君たちドワーフの薬品と材料さえあれば作れそうなものがあるんだ」
「材料? じゃあ明日俺と一緒に街に行くか?」
「ああ、是非とも行きたいね」
「よし、決まりだな、俺も用事があるからちょうどよかった」
そう言ってブリトーは部屋から出て行った。