嵐の前の静けさ
魔王ディオニスは玉座の間に将軍とその精鋭たちを呼んだ。
「本日諸君に集まってもらったのは他でもない重大な任務を遂行してもらうためだ。諸君にはこれからガミジン郊外にある先代魔王ヴラドの別荘に向かってもらいたい。そこにいるシュタインという男を生け捕りにするのだ。罪はそうだな……国家反逆罪だ。わかったな?」
彼は腰を曲げてすら十分に高い背で人間たちを見下ろす。
「それは私も向かってよろしいのですか?」
将軍がおそるおそる尋ねる。
「もちろんだ。それから我が部下が先に行って足止めをしている手はずだ。それでは必ず任務を遂行してきたまえ」
「了解!!」
一同は敬礼をして玉座の間を去る。
彼らは馬車でガミジンに向かう。将軍であるジョン・ポールの乗る馬車で以下の会話がなされる。
「あの魔王も気づいたみたいですね」
「ああ、だがそれを頼めるのが我々しかいなかったことがこちらに有利な状況をもたらしたな。手はずは分かっているな?」
「はい、シュタインが例のあるみにうむの技術者であることは調査済みです」
「いやわかっているか聞いたのは手はずだ」
「そちらもぬかりはありません」
オスマニール帝国出身の魔王軍精鋭たちはシュタインの逮捕に向かう。
シュタインはいつものようにヴェルギナと勉強をしていた。
「そうね、これでシュタインはオスマニール語も話せるわ」
「ありがとう、助かったよヴェルギナ」
「いいのいいの仲間なんだから当然よ」
2人で仲睦まじく話しているとブリトーがカバンから顔を出す。
「爆ぜろ。ではなく、旦那ちょっと来てくれ」
「わかった、それじゃあヴェルギナこれからもよろしく」
「はぁーい」
彼らがこの屋敷を買い取ってからすでに1ヶ月経過していた。シュタインはメモの通りに着々と準備を進めていた。目標の1つである人語の理解は達成した。彼が執務室の本を読み漁り身につけた知識はあまりなかった。
「それで何の用だい?」
「何、簡単な話だ。またやつれて来てるが大丈夫か?」
「ああそんなことか、問題ないよ。別に夢も見てないし」
「ならいいんだけどな無理はするなよ。それだけだ」
「わかっているとも。じゃあまた」
それだけ話すとブリトーは作業場に戻っていった。彼は最近は鍛冶だけでなくポーション作りにも挑戦しているのであった。シュタインはそれを見届けてカバンから出る。
部屋にいたのはフレキとシャーロットだった。
「あー出て来たー」
「ようシュタイン」
「やあ、2人ともどうしたのかな?」
「うーん、暇だったから遊びに来たの」
「俺はただシャーロットについて来ただけだ」
シュタインは疲れたように答える。
「そうかい、ここにいても面白いものなんてないけどね。そういえばシャーロット少し背が伸びたんじゃないか?」
「え!?本当?」
シャーロットが嬉しそうに反応する。しかし、フレキがそれを否定する。
「そんなことはないな。俺はいつも一緒だからわかる」
「いや、常に一緒だと気づかないことがあるんだ」
シャーロットご拗ねたような声を上げる。
「むーどっちなの?」
「「どっちでもいいんじゃないか?」」
「もう!アタシ部屋に戻る!」
「そうかじゃあまた後で」
2人は部屋を出て行った。シュタインはため息をつく。
「はぁ、なんだったのやら」
彼は執務室に行き、本を読んでいるとアルフレッドが呼びに来た。
「シュタイン様夕飯の準備が整いました」
「わかった。すぐ行く」
* * * * * * * * * *
シュタインは夕食と風呂を済ませて自室に戻る。
「たまには早めに寝るかな」
彼はベッドに転ぶ。
「今日もつか……れ……たーー」
すぐに彼は眠りに落ちた。
気分次第でこれとお買い物の間に何話か突っ込みます。