お買い物
鹿狩りから3日後、シュタインは1つの行動を起こす。
「さて、アルフレッド君。今日はこの屋敷を買い取りたいと思いましてこの部屋に来ました」
「そうですか、ですがこの屋敷を買うには6400グラニューは下りませんよ」
「そうだね、じゃあ物々交換といきましょうか」
そう言って彼はビー玉2つとトランプを出す。
「これはですね、非常に値打ちのあるものですよ。この機会を逃せばもはや手に入ることはないでしょう」
アルフレッドは驚きの顔を見せてそれらを手に取る。
「恐れ入りました、確かにどれ1つを取っても相当価値があるように思えます。この屋敷はお売り致しましょう。あくまで屋敷はですが」
彼はシュタインの顔をちらりとうかがう。
「そうですね、君を含めて屋敷ごと全てを買い取りたいと言った場合は?」
「あと1つほど私の知らないものがあれば十分ですね。ですが私を買い取ったところでお客様に従うかどうかの判断は私が致します」
シュタインは思案顔で窓の外を眺める。
「んー、そうだ。ではこれでどうでしょう?」
今度は懐から飴玉を取り出してアルフレッドに渡す。
「美味しいですよ」
彼は受け取ったものを恐る恐る口に入れる。一瞬目を見開いてすぐに普段の冷静な顔に戻る。
「これは……砂糖がふんだんに使用されていますね。その上確かに私の知らないものですね」
「これで僕はこの屋敷の主になれるわけかな?」
「まぁ、そうなのですが」
アルフレッドは言葉を詰まらせる。
「どれも君の知らないもの、そして高価なものだ。なら条件は満たしているだろう?」
シュタインは口の端を歪めて笑う。
「はい、満たしております。ご主人様」
アルフレッドは立ち上がり恭しく礼をした。
(素晴らしい儲けだったな。どれも僕にとっては無価値に等しいというのに。こうも上手くいくと茶番も同然だ)
シュタインは内心でほくそ笑む。
「それでは僕のことはシュタイン様と呼んでくれ」
「はい。ではシュタイン様、改めて屋敷を案内させていただきます」
彼は以前案内されなかった場所を中心になされた。
「そして、こちらが執務室になります」
執務室の家具は机、テーブルとソファ、本棚というものだった。シュタインは本棚から本をとりパラパラめくる。
「いいね」
「それは、何よりです。寝室は今まで通りでお願い致します。これで案内は以上になります」
シュタインは満足そうに頷く。
「ご苦労様。ところで君は夜に時々外出するのはなぜだい?」
アルフレッドは微笑み答えた。
「私は吸血鬼ですから」
「ああ、そういうことか。じゃあもう行っていいぞ。聞きたいことがあったら質問しに行くから」
「はい。かしこまりました」
彼はシュタインを残して部屋を去る。
1人残った彼は嬉しそうに笑い出す。
「ふふっ、ふふふっこの世界に来て1年以上が経ったがまだまだ知らないことだらけだ。それでも仲間もいる。執事もいる。資金もある。沙織、聡、待っててくれすぐに帰るからな」
彼は本棚から何冊か本を取り出し読み出す。
「魔法学か面白そうだね面白そうだね。あとで読もう」
彼は部屋の周りをぐるぐる回り立ち止まる。
「とりあえずこの先やることをまとめておくか」
彼は机に向かって紙にメモをし始めた。
かえる方法をさがしつつ・・・
・ヴェルギナに人ごをおしえてもらう
・ま法の知しきを手に入れる
・そしきとしてのかつどうかいしのじゅんび
・なかまとのしんぼくをふかめる
「まぁ、帰る方法さえ分かればこんなもの必要ないんだけどね」
彼は左手で書いた拙い字を眺めながら呟く。
「さて、とブリトーのところに行くかな」
彼は執務室を出て相棒の元へ向かう。
そろそろ刺激が欲しいものですねぇ