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悪魔より怖い男  作者: 315
13/20

休息と読書

「あ、起きた?」

「裏声はやめてくれないかなブリトー」

 シュタインの目が覚めたとき最初に彼を出迎えたのはブリトーのいかつい顔だった。

「悪い、ヴェルギナがこれをやれってうるさかったからな。それで調子はどうだ?」

「特に問題はないよ」

「まあ今日のところはゆっくりしてな。あとこれ飲め」

 彼はシュタインにポーションを渡した。

「目の周りがかぶれてるからな」

 シュタインは即座に飲む。

「やっぱりポーションなしじゃあ生きていけないよ」

「飲み過ぎるなよ、じゃあな」

 ブリトーは部屋を出て行く。


 少ししてからシャーロットとフレキが入ってくる。シャーロットはシュタインに駆け寄って心配そうに聞いた。

「大丈夫?シュタイン」

「ああ大丈夫だ、それよりシャーロットこそ変なところはないかい?」

「アタシは1週間以上人を殺してないからちょっと辛いくらいだよ」

「それはよかっ……ん?フレキ、どういうことかな?」

 彼はフレキに説明を求めた。

「ああ、レッドキャップは定期的に生き物を殺さないと禁断症状が出るとか」

 シュタインは感嘆の声を上げる。

「へぇ、興味深いものだね」

 彼らは雑談をする。少ししてからフレキが別れの挨拶をして2人とも部屋を去った。そのあとはヴェルギナとアルフレッドが入ってくる。ヴェルギナは彼に普段より馴れ馴れしい口調でシュタインに話しかける。

「はぁーい、どうもシュタインちゃん。調子はどうよ?」

 彼は質問にうんざりしたように答える。

「はぁ、まあまあだね」

「私は休んでいる間に読書でも、と本を1冊もって参りました」

「これは昨日の本か」

「そうよー、頑張って読んでね。じゃあ私たちもこれで。ごゆっくり」

「失礼しました」

 2人も部屋を後にする。シュタインはため息をついて呟いた。

「ゆっくりできん。……さて、本でも読むか」


  * * * * * * * * *

  魔族創造

 

 昔、今の王国のある地に1人の女性が降り立った。彼女の名はパンドラ。彼女はまず自身の性欲から淫魔たちを生み出した。次に自身の食欲からオークたちを生み出した。それから1日ごとに残虐性からレッドキャップを生み出し、芸術性からパーンを生み出し、と魔族を次々作り出して行った。しかし、睡眠欲はどの魔族にも分けたため魔族たちは時間の長さは違うものの皆一様に眠る。彼女はそれら魔族の女王として君臨した。

  彼女が治る魔族の国と人間の国は仲良く暮らしていた。しかしある日、人間の王が彼女を騙して世界を滅ぼそうとした。彼女はその強大な力で世界を混沌の渦に巻き込もうとしたが、彼女が最後に生み出したエルフによって彼の地に封印された。


 これは我々魔族の伝承にある女神パンドラによる魔族創造を短くまとめたものである。この伝承は人間にも伝わっており、オスマニール帝国とその北に位置する諸王国の信仰すセオドア教や北の帝国ルシアの伝承ではそれぞれこのような話になっている。


  魔族創造


  はじめに1人の天使が大地に堕ちてきた。天使の名はパンドラという。天使は復讐のためにドワーフやエルフなどの種族とたくさんの魔物を創り出し、地獄から淫魔たちを呼び寄せた。天使は天界に攻め入り天使たちを圧倒した。しかし、神がパンドラの創った種族たちを味方に引き入れ、西の国にある地下迷宮の最深部に封じ込めたという。



  魔族創造


 この地に1人の魔女がいた。彼女はパンドラという名であった。彼女は自分の魔道具である箱を使って様々なものを生み出した。エルフ、吸血鬼、オーク、ゴブリン、ドワーフ、コボルト、パーン、ハーピー、人狼、レッドキャップ、リザードマン、巨人。人々は彼女を敬った。

 強すぎる力を持つ彼女はしだいに人々から恐れられ、魔族の協力を経て封印された。その後、巨人は北の隅へ、他の魔族も南の大森林へと去っていった。


 このように伝承の内容は少し違うものの『パンドラ』という存在が魔族を創ったという内容はどれも同じである。

 故に我らの女神パンドラは実在するもしくはしたと考える。

 しかし、実際にいたとして、この3つの伝承でどれが真実でどれが虚偽かは不明である。3つの共通点である彼女が封印されたことが最も真実に近いと考えられる。セオドア教の伝承では地下迷宮に封じられたとあるがこれは都合の良い改変の可能性が極めて高い。

(中略)

 我が王であるネロ陛下はこの秘密を解き明かすために欠かせない人物であったがついにはわからないままお隠れになってしまった。

(中略)

 結局のところ、この伝承の研究は我が配下アルフレッドを含め次の世代に託したいと思う。


 

  魔王ヴラド


  * * * * * * * * *


 シュタインは読み終わった本を置いて呟いた。

「パンドラ、ねぇ……」

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