お屋敷生活の始まり
しばらく短めの文章が続く気がします
アルフレッドは突然やって来た怪しげな男の申し入れを断った。
「いえ、それは出来かねます」
「そこをなんとか」
しばらく言い争いになっていると、男の持つカバンから人が出て来た。
「おい旦那、いつまで話してるんだ?」
背の低く長い白ヒゲが特徴的な老人。ブリトーである。
「ちょっと代われ、旦那は中で休んでな」
「わかった」
アルフレッドは男がカバンに入っていくのを確認するとブリトーに質問した。
「あなたはあの人間に飼われてるのですか?でしたら私がさっさとあの男を処分して自由にして差し上げますよ」
「いや、あいつは俺たちの仲間だ」
「仲間、ですか。あれのどこに惹かれるのでしょうね。私には分かりかねます」
彼の質問にブリトーは一息ついてからこたえる。
「あいつは魔族にも人間共にも無い知識を持っている。先代魔王はドワーフから圧倒的に支持されていた。その理由は知っているだろ?」
「あらゆる未知を既知に変えるを目標に掲げていたからですね」
「そうだ、あいつはそれが出来る存在だ。俺にたくさんの知識をくれた。その代わりに俺はあいつの手伝いをしている」
アルフレッドはしばらく間をおいてから再び話し出す。
「なるほど、嘘は1つだけですか。ですが唯一ついた嘘がまた興味深い。彼にそれだけの価値があるということですか……よろしいです。しばらくここに居てくださって結構ですよ」
「ありがとうよ」
彼は礼を言ってからカバンの中に皆を呼びに行った。少ししてから5人が出てくる。
「さて、改めましてシュタインです。これから厄介になります。ところでこの屋敷には」
「何でしょうか?」
「紙はあるかな?」
彼ら5人はさっそく屋敷を案内された。浴場、応接間、客室、使用人室、食堂、トイレ。普段生活するときに必要な場所のみ。
「屋敷の案内は以上です。気になる点などございましたら私のところに来てください。お客様、こちらが紙とペンになります」
「これはご丁寧にどうも」
彼らは各々の部屋に戻る。が、その前にシュタインがヴェルギナを呼び止める。
「さて、今日こそは字を教えてもらおうか。1週間も教えてもらえなかったからね」
「わかったわ」
「あとブリトー。君も一緒にだ」
「わかった」
シャーロットがすかさず口をはさむ。
「アタシもぉ。一緒にお勉強するの」
「いえ、シャーロット様とフレキ様は私のところに残ってください」
「俺もか、わかった。行くぞシャーロット」
「えー、わかったよ」
彼女はしぶしぶついて行く。
「それじゃあ、さっそく教えてあげるわ。まず、私たちが使っている言葉はエルフ語。これは初代魔王が共通言語に定めたから。理由は簡単、初代魔王がエルフだったから。で、文字の方だけど全部で36文字。文字を1つ1つ組み合わせて1つの単語になる。わかった?」
「「はい」」
「じゃあまず文字を読めるようにしよっか」
彼女はペンを手に持って文字を書き始めたーー
「それで、俺たちを残した理由はなんだ?吸血鬼よ」
「そうですね、あなた方があの人間と共に行動してる理由が聞きたかったからです」
2人は即答する。
「俺はシャーロットの安全を保証されたからだ」
「アタシはなんだったかな、えーと一緒にいた方が人が殺せるとかだったと思う」
「なるほど、よくわかりました。お戻りになられて結構です」
そう告げてからは立ち去った。
「人間よ、私が貴方の価値を見極めて差し上げます。このアルフレッド・ストーカー自らが」