表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黄昏の森の優しいオオカミ  作者: ぐの字
第4章 黄昏の森の優しいオオカミ
16/21

愛と光と

 それは、とても優しい狼が活躍するお話。森の中で恐れられていた狼が、最初は怖がられながらも、ほとんどの動物たちに受け入れられるお話だった。

私のつたない読み聞かせを、子供たちは静かに、そして笑顔で聞いていてくれた。

 そして、お話を「おしまい」と言って締めくくると、子供たちは嬉しそうに拍手をくれた。

「本、ありがとね。素敵なお話だった。」

「このお話、光のお姉ちゃんが教えてくれたの。」

「光の、お姉ちゃん?」

 ふと見ると、子供たちの輪の中に1人綺麗な長い髪の女の子がいた。

女の子と言っても私よりは下だけど子供たちから見たら「お姉ちゃん」と呼ばれるくらいの女の子だ。

「あ!光のおねーちゃん!!」「遅いよー!」と子供たちは口々に彼女の名前を呼びながら彼女の傍に行く。

「遅くなっちゃってごめんね、でも皆お姉さんに絵本読んでもらったんだ?まずはお礼を言いましょうか。」

明るく爛漫な声で、彼女は子供たちに接した。皆口々に「ありがとう!」とお礼を言う。

私は思わず恥ずかしくなって「こ、こちらこそ」と口ごもってしまった。

「ねえねえ、光のお姉ちゃん。」絵本を持った男の子が彼女の服の袖を引っ張る。

「なぁに?」彼女はやさしく尋ねた。

「今日は絵本、読んでくれないの?」少しだけ寂しそうに男の子は尋ねた。

「今日はねー、光のお姉ちゃんは見守る係なんだー。」

「見守る係?」男の子は首を傾げた。

「そうそう、もう1人の人が今日は絵本を読んでくれるのよー。」

彼女は男の子のおでこに額を合わせて嬉しそうに教える。

すっかり優しい雰囲気になった、

 私はなんだかこの場に居ちゃいけないような気がして、立ち上がろうとした。

「あ!お姉さん!」

唐突に彼女に呼び止められた。

「せっかくなんでお姉さんも聞いて行ってください。ボランティアのもう1人、今日が人前で朗読するの初めてだから。」

「え、あ、それは逆に良いのかな…。」私は思わず苦笑いになった。

「今日の絵本、この子たちには初めて聞かせるんです。お姉さんの感想も欲しくて。」

彼女があまりにも嬉しそうに話すから、私もすっかりつられて笑顔になる。

しばらくして、1冊の絵本を持った人がスペースに入ってきた。

「みんなごめん!!遅くなっちゃった!」


 聞こえたその声に思わず振り返る。


けれど子供たちが「遅ーい!!」と言いながら、その人に駆け寄った。

その人は子供たちのタックルを受け止められず「うわっ」と軽い悲鳴をあげながら倒れこんだ。

「はーい、みんなー、いったん離れましょうねー。本読めなくなっちゃうからー。」

光のお姉ちゃんがパンパンと手を叩くと、みんなが大きな返事をしてその人から離れた。

「大丈夫ですか?」

思わず声をかけた。

「ええ…、いつものこと…、」

困ったような笑顔と目が合った瞬間、その人は一瞬目を丸くした。

「この方、私たちが来るまでの間、子供たちに絵本朗読してくださったんですよ。」

「え?!そ、そうだったんだ…。」

二人のやりとりに、思わず笑ってしまう。

「さ、ほら準備準備、ナンパは後にしてね!お兄ちゃん。」

「お兄ちゃん?」

私は思わず驚く。

「ええ、あ!紹介が遅れましたね!私ここで週2回朗読のボランティアをしている大上光と申します。

今、若干引きつってる顔してるのが兄の…。」

「光、台無しだ。何かが台無しだ…。」

「はい、その大きな図体をしゃんとする。たまにお手伝いをしてくれる私の兄です。」

「お、大上です。」

座りながら、軽く会釈をしてくれた。

「にーちゃんはやくー!!」「ごほん読んでー!!」

子供たちに急かされ、彼は慌てて子供たちの前に出た。


新しいインクの匂いがする、絵本を手に持って。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ