愛と光と
それは、とても優しい狼が活躍するお話。森の中で恐れられていた狼が、最初は怖がられながらも、ほとんどの動物たちに受け入れられるお話だった。
私のつたない読み聞かせを、子供たちは静かに、そして笑顔で聞いていてくれた。
そして、お話を「おしまい」と言って締めくくると、子供たちは嬉しそうに拍手をくれた。
「本、ありがとね。素敵なお話だった。」
「このお話、光のお姉ちゃんが教えてくれたの。」
「光の、お姉ちゃん?」
ふと見ると、子供たちの輪の中に1人綺麗な長い髪の女の子がいた。
女の子と言っても私よりは下だけど子供たちから見たら「お姉ちゃん」と呼ばれるくらいの女の子だ。
「あ!光のおねーちゃん!!」「遅いよー!」と子供たちは口々に彼女の名前を呼びながら彼女の傍に行く。
「遅くなっちゃってごめんね、でも皆お姉さんに絵本読んでもらったんだ?まずはお礼を言いましょうか。」
明るく爛漫な声で、彼女は子供たちに接した。皆口々に「ありがとう!」とお礼を言う。
私は思わず恥ずかしくなって「こ、こちらこそ」と口ごもってしまった。
「ねえねえ、光のお姉ちゃん。」絵本を持った男の子が彼女の服の袖を引っ張る。
「なぁに?」彼女はやさしく尋ねた。
「今日は絵本、読んでくれないの?」少しだけ寂しそうに男の子は尋ねた。
「今日はねー、光のお姉ちゃんは見守る係なんだー。」
「見守る係?」男の子は首を傾げた。
「そうそう、もう1人の人が今日は絵本を読んでくれるのよー。」
彼女は男の子のおでこに額を合わせて嬉しそうに教える。
すっかり優しい雰囲気になった、
私はなんだかこの場に居ちゃいけないような気がして、立ち上がろうとした。
「あ!お姉さん!」
唐突に彼女に呼び止められた。
「せっかくなんでお姉さんも聞いて行ってください。ボランティアのもう1人、今日が人前で朗読するの初めてだから。」
「え、あ、それは逆に良いのかな…。」私は思わず苦笑いになった。
「今日の絵本、この子たちには初めて聞かせるんです。お姉さんの感想も欲しくて。」
彼女があまりにも嬉しそうに話すから、私もすっかりつられて笑顔になる。
しばらくして、1冊の絵本を持った人がスペースに入ってきた。
「みんなごめん!!遅くなっちゃった!」
聞こえたその声に思わず振り返る。
けれど子供たちが「遅ーい!!」と言いながら、その人に駆け寄った。
その人は子供たちのタックルを受け止められず「うわっ」と軽い悲鳴をあげながら倒れこんだ。
「はーい、みんなー、いったん離れましょうねー。本読めなくなっちゃうからー。」
光のお姉ちゃんがパンパンと手を叩くと、みんなが大きな返事をしてその人から離れた。
「大丈夫ですか?」
思わず声をかけた。
「ええ…、いつものこと…、」
困ったような笑顔と目が合った瞬間、その人は一瞬目を丸くした。
「この方、私たちが来るまでの間、子供たちに絵本朗読してくださったんですよ。」
「え?!そ、そうだったんだ…。」
二人のやりとりに、思わず笑ってしまう。
「さ、ほら準備準備、ナンパは後にしてね!お兄ちゃん。」
「お兄ちゃん?」
私は思わず驚く。
「ええ、あ!紹介が遅れましたね!私ここで週2回朗読のボランティアをしている大上光と申します。
今、若干引きつってる顔してるのが兄の…。」
「光、台無しだ。何かが台無しだ…。」
「はい、その大きな図体をしゃんとする。たまにお手伝いをしてくれる私の兄です。」
「お、大上です。」
座りながら、軽く会釈をしてくれた。
「にーちゃんはやくー!!」「ごほん読んでー!!」
子供たちに急かされ、彼は慌てて子供たちの前に出た。
新しいインクの匂いがする、絵本を手に持って。




