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黄昏の森の優しいオオカミ  作者: ぐの字
第3章 その心を蔽うモノ
12/21

安楽

 クラージュの家に戻ってきたロッテは、差し出された紅茶を手に取った。

「あったかい…」

改めて感じるその温もりに、ロッテは安堵の溜息を洩らした。

「あれ?ロッテ。」

クラージュはロッテに尋ねた。

「あの傷、どうしたの?」

言われてふと左腕に目をやると、あれほどあった無数の切り傷が綺麗に消えていた。

「どうしたんだろう?」

つくづく不思議な出来事に、首を傾げるロッテだった。

「でも…、またさっきみたいにいきなり傷が出たりするのかな…。」

不安げにつぶやくロッテにクラージュは言った。

「その時はまた、手当してあげるから。」

大丈夫、とクラージュはやさしく告げた。

「ありがと、クラージュ。」

ロッテは嬉しそうに、笑ってみせた。

「でも本当突然だったもんね。あの傷が出るようになったの。」

月光浴以来だっけ、とクラージュは呟きながら紅茶を啜った。

「あー、多分ね あたしがお月様にお願いしたの。自分の事知りたいって。」

ロッテは苦笑いしながら言った。

「でもああやって切り傷がたくさん出てきたってことは、きっとろくでもない人間なんじゃないかって。

そう思っちゃって、それで、クラージュの傍にいちゃいけないんだって思って…。」

気づいたら家を出て行ってたんだ、と笑ってごまかそうとしながらロッテは言った。

その瞬間、クラージュの手刀がロッテの頭を直撃した。

「いだいっ!!」

突然のことに、ロッテは困惑せざるを得なかった。

「ろくでもない人間だったら、きっと僕をいいように利用して騙くらかそうとするんだよ。」

そんなこと、露も思わなかったくせに、ろくでもない人間だなんて笑っちゃうよ、とふてくされながらクラージュはぼやいた。

「僕の知ってるロッテは、少なくとも誰かをだましたり傷つけるようなろくでもない人間じゃないよ。

ただ、自分をどうやって愛すればいいかわからないだけであって。」

「クラージュ…。」

「だから…、そんなふうに思わないで。僕はロッテがそういう子だってわかってるから…。」

そっと頭を撫でた手は、やっぱり暖かくて大きくて。

ロッテはうつむきながら、胸に拡がる温もりに声をあげずに泣いていた。

しばらくして。

「でもやっぱり、自分の事はちゃんと思い出さなきゃいけないと思うの。」

鼻を真っ赤にしながら、ロッテは気丈につぶやいた。

「とてもさっきまで自分が怖くて泣いてた子のセリフじゃないよね。」

とクラージュはちょっと呆れながらも笑っていた。

「だって、このままクラージュに甘えているのもよくないもの。」

とはいえ、どうしたらいいのかなーとうなるロッテ。

そんなロッテに少しの寂しさを覚えながら、クラージュはそっと微笑んだ。

「ふあ…。」

ロッテは目をこすり始めた。

「ほらほら、ベッドに行きなさい。」

なんなら運んであげようか、とクラージュは茶化しながら誘導した。

「へへ、安心したら眠くなっちゃった…。」

おやすみー、と告げた瞬間ロッテは穏やかな寝息をたてはじめた。

明かりをそっと消して、クラージュは呟く。

「おやすみ、ロッテ きっともうすぐ君を夜明けが迎えに来るよ。」

ロッテの額に、そっと口づけを落とし、クラージュは部屋を後にした。

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