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ある日ギルドマスターがおっしゃった。
「リモコンがない~」
複アカの主婦ギルマスは無数のコントローラーリモコンを手に毎日数キャラを動かしています。
すげーなおい。
小学生男子のミョンちゃんが、きりっとして言った。
「リモコン消失事件前編!!」
いきなりミステリーになった。
しかも前後編らしい。
私も続けて言った。
「事件やで! 九党!」
名探偵クトウというアニメの台詞である。中間管理職のスケさんもおっしゃった。
「真実はいつも藪の中!!」
「それ迷宮入りやんw」
思わずつっこんでしまった。その後雑談。
しばらくして、ルーミーさんが「うくーっく」と変な笑いを漏らした。
「藪の中、あとからくる」
何を言い出した。
「うける」
時間差攻撃でうけているらしい。私は思わず言った。
「うけていることにうけるわw」
なんじゃこのギルド。
私はその後金を稼ぐ付与術師の職人などをしていたところ、ふとキャラアイコンに目をやって絶句した。
グミグミ族の愛らしいふさふさしたヘアスタイルのルーミーさんが丸刈りになっていた。
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
字数制限いっぱいに叫んだ。
絶叫した。
小学生男子のミョンちゃんが、
「察した」
と言った。
「付与術失敗して破産したんでしょ!!」
恐ろしいことをいう小学生やで。
「ああああああああああああああああああああ頭あたまあああああああああああああああああああああああ」
>ルーミー
と台詞をルーミーさんあてにする。ミョンちゃんもまた「あああああああああああああああああああああああああああああああああ」と叫んだ。
「出家している!!」
ミョンちゃん、凄い的確だね!!
キャラクターのヘアスタイルは自由に変えることができる。しかし、ルーミーさんのヘアスタイルはいつも同じもので、ルーミーさん像がすっかりできあがっていたところへの丸刈りの一撃である。
「ちょっと、みてただけ」
本人はそうおっしゃって、すぐにもどされていた。
これがルーミーさん出家事件である。
その後ギルド内で出家が一時流行した。
ひとこと言わせてください。丸刈り止めようぜ。
ほんでなんやかんややっていると、ソウメイさんのサブキャラのエルマちゃんからフレンドチャットがきた。
「こんにちは」
私はエルマちゃんから話しかけられるたび、彼女が間違えて送信した正月の年賀SSハガキを思い出す。
パンティーをもろだし全開でジャンプし、「みちゃだめ~」と書いていた。
おっさん、なにしてんねん。
あとから本人より連絡がきて、「間違えて送信しました。……………みた?」としょうぜんとした感じできかれた。
「私のログには何もないね」
「ありがとうございます」
という一連のやりとりを条件反射的に思い出してしまうのである。
「タラオさん新迷宮行った?」
「うん、行ったけどまだ15回くらいしかレアボス倒してない」
「よかったら今度召喚符あるから一緒行かない?」
あー、あゆゆちゃんを連れて行きたいんだな、とタラオは思いました。その時にそろえる面子の一人ね。
相変わらず貢いでおられるようだ。
しかし、新迷宮ボスのカオティック・ブレインの召喚符かあ。時価40万だよ。
おごってくれるのか、ふとっぱらだね。
まああれだ、召喚符っていうのは、便利アイテムだね。
迷宮にはボスがいる。このボスは通常ボスと、そのレア版であるレアボスがいる。
何十周かすれば、ユニークなレアボスに会うこともできるが、そのために何度も迷宮にもぐるのも非効率だ。
これを意図して100%の確率でレアを呼び出すことができるのが召喚符である。
「え、いいの? 私召喚符もってないよ」
「いいよ~」
「寄生させていただき本当にありがとうございます!」
「w」
事後には、「寄生させていただき、本当にありがとうございました!」とお礼を言うつもりである。
カオティック・ブレイン、倒すのめちゃ楽しいんだよねえ。
でも召喚符たけーからそうそう行けなくてさ。
はよ値段下がってほしいわ。
その後、野良で別の召喚符持寄りをした。
道中珍しいモンスターが出た。ブタドンという豚っぽいモンスターである。そしてレアアイテムをドロップしていった。
アイテム鑑定すると、
『コウベ・ギュウ』
だった。調理用のレア素材ですね。はじめてみたわ。
「奴は擬態していたのか」
「やりおる」
「奴は四天王の中でも最弱」
動揺したのか三人目が何か変な事を言っている。
そんなプレイの一日でした。