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 ギルドに親子が入隊した。

 ミョンちゃんとトウヤさん。

 ミョンちゃんは赤いお団子ヘアーのヒューマン女子で、中身は、


「僕、男だよ。小学五年生!」

 

 だ、そうです。

 あなやおかし。

 めっちゃきゃぴきゃぴ(つっこまんといて)おしゃべりだから、普通に女子と思ってた。

 おいちゃん、びっくりだよ!

 てか、小学五年生カー。棒読みになるわー。すげーわ。

 悪い意味じゃなくて、オンゲの凄さをすさまじく感ずるのよ。

 下は小学生から上は40代中間管理職の方まで。

 ギルドにいるわけよ。

 リアル世界では絶対接点なかったよねえ。

 改めてしみじみとした。

 で、トウヤさんてのが、このミョンちゃんのおとーちゃん。

 これが発覚したのは、彼のギルドハウス伝言板からだった。


『いつもミョンと遊んでくれてありがとう』

 

 わし、目が、点になった。

 え、なーにこれ。なにこの父性愛のほとばしるパトス。

 もしかして……親子?

 尋ねるのはマナー違反だけど、親子っぽいなあと思っていたある日。


「とうちゃんのストーリーてつだわなきゃ」

 

 独り言の激しいミョンちゃんの一連の呟きから、トウヤさんがリアルとーちゃんということが判明した。


「あーやっぱりねー」


 と私のみならず、40代中間管理職のスケさんやグミグミ族のルーミーさんもうんうんとうなずいていた。

 皆さんお察しだったようだ。


「あの伝言ぱーぱの愛にあふれとったもんなあ」

「薄々感じてました」とスケさん。

「親子だったんですね」とルーミーさん。

「?」

 

 ハテナ飛ばしているミョンちゃん。おめーにはまだわからねー、親の海よりも深く山よりも高い愛。

 その後一応さりげなく、リアル情報はあまり他の人に言わないようにね、と大人3人組でさとしておいた。

 まあ、とうちゃんも一緒にやってるから大丈夫でしょう。

 それに今回のことはそこまで目くじら立てて個人情報が! と言うことでもないと思う。

 リアルの肉親関係についてはオープンにしている人も多いからね。その辺はまああんまし問題ないと思うよ、わたしゃ。

 もちろん伏せてやりたいって人もいるから、その辺は本人たち次第あるね。

 んでもって、ミョンちゃんはトウヤさんのことを「とーちゃん」とか「とうやん」と呼ぶ。

 その日も、トウヤさんのサブキャラクターのパラを乗っ取って、


「パラを鍛えて木工職人にするんだ。とうやん使わないから」

「ほーん、いいねえ」

「そんで、トゥインクルスターを作る! それをとうやんに流す!」


 トゥインクルスターは中レベル層帯からエンドコンテンツまでぎり使える武器の名称である。そうか、とうちゃんに作った武器をあげるのか。いい話だなー。


「いいねいいね」

「そんで、とうやんに売りつける! カネは僕のもの! かねかねかねかねかね!!」

「とーちゃんから金とるんかいw」


 ああ、イイハナシダッタナー。

 小学生、しっかりしとるわ。

 つうか、小学生の語彙力に驚かされることもしばしば。


「みょんちゃんはしっかりしとるねえ」

「そんなことないよ」

「うーん、私小学生の時ここまで気配りも語彙力もなかった気がするわ」

「かたり?……ちから?」

「あ、えっとごいりょく、と読むね。たくさん言葉を知ってるってことかな」


 ってやり取りをすると、小学生だなーって思って安心しちゃう。

 英語のやり取りがたまにでると、中間管理賞のスケさんが嬉々としてミョンちゃんに教えてリスペクト受けてるし。


「残念ですがという言い回しは便利だよね」

「アンフォーチュナトリーといえばいいんだよ」

「うんぬんかんぬん・・・lets enjoy English!!」


 とひたすら語ったのちに、はっとしたのか、「みょんちゃんにドン引きされる前に自重します」って恥ずかしそうに引っ込むスケさん、マジスケさん。

 そんなある日、無口なサムライボーイのトウヤさんが珍しく話をふってきた。


「みょんがずいぶん楽しそうにしていて」

「お、それはうれしいっすね」

「家に帰ってもルーミーさんのことばかり話しています。ルーミーさんが大好きみたいで」

「えっ」


 ルーミーさんがうろたえる。 

 うちのギルドでルーミーさん嫌いな人いないと思う。マジグミグミ族の化身。

 思わずにっこにこして、


「みょんちゃんがきてから私も楽しいっすね。おしゃべりでギルド活気づいてますよ」

「喋りすぎてませんか?」

「いやいや、むしろ無言よりあれだけ元気に喋ってくれるとこっちもたのしいっす」

「そうですよ」

 とスケさんも同調し、ルーミーさんも恥ずかしがって無言になっていたのから「うんうん、おしゃべりたのしいです」と頷いている。

 トウヤさんはしばらく無言だったが、ぽつりとおっしゃった。


「よかった。ミョンは、前のギルドから追い出された経緯があって、ずいぶん落ち込んでいたから、心配していたんです」

「えっ」


 驚いたのは私の方だ。なんでやねん。

 ミョンちゃんはよく奇声を上げたり、発狂したりしているので、それが不快に思われたのであろうか。


『うあああああああああああああああああああああああああああああああああああ』←驚きの意

『うおぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお』←気合の意

『ztxcvぼjんjkぽ@p@p¥』←発狂の意


 などよくギルドチャットで叫んでいる。

 そのたびに私は、


『ああ、またミョンちゃんが発狂してる』


 と返すのだが、すると事情を勝手に説明してくれて、うんうん、と会話になるわけである。 

 キックされた詳細な経緯は不明だが、多分みょんちゃんのような天真爛漫な小学生に対するジェラシーじゃないかしら。

 話題の中心になれないとおこになる人いるからね。

 うちのリーダーはその点放置主婦で「んあ?」とかぼけてることも多いからないね。

 いいギルドだよ、ほんと。

 

「元気でいいこですけどね、そりゃあギルドの方があわなかったんでしょうね。気にしない方がいいですよ」

「ほんとうです。ミョンちゃんきてからとっても楽しいし、いい子ですよ! 追い出すなんて、許せんなあ」

 とスケさんが40代にもかかわらずぷんぷんしている。追い出すのはまあギルドも権利があるからね、合わない同士じゃ辛いし、怒るまではしないけど、別れるのがお互いのためよ。ただ、みょんちゃんが傷ついたのではないかと心配して激おこしている姿勢、嫌いじゃないっす。

「みょんちゃん、いいこです。ずっとギルドにいてほしいです」

 これはルーミーさん。

「……みなさん、ありがとうございます」

「〇(^O^)〇」


 顔文字で感情表現するルーミーさんマジ天使。私が使ったら、何があったんて言われる。

 まーこれで何がいいたいかっつーと、みょんちゃん私は大好きってことさね。ギルメンもみんなみょんちゃんのことが好き。

 おしゃべり独り言奇声まで、チャットがにぎわっていいことよ。

 中学生面子はしゃべらんから大人組けっこう扱い困ってることもあってね。

 一度その話が出た時、私はついもらしちゃったことがある。


「中学生たちとは何話したらいいのか分からないすね」

「そうですね。あまりしゃべらないから」

 とスケさんも相槌を打ってくれた。彼も似たようなことを感じていたらしく、吐露してくる。

「中学生は難しいですね」

「自分の世界をもう確立させてますからね、オープンにはしてこなくて、自分たちのコミュニティに閉じこもりがちな印象っすかね。悪いことじゃないんすけど、独自ルールもあるんで、こっちが地雷踏まないかって心配になります」

「ああ、分かります」


 みたいな。

 みたいなー。

 

「その点、みょんちゃんは何も言わずとも自らべらべらしゃべってくれて助かりますねえ」

「ほんとほんと」


 わっはっは、とまあそんな感じでお開きになった。

 文字だけの世界だからさ、やっぱり自ら喋ってくれて、飛び込んできてくれる人っていいもんすよ。

 ただ、こないだ一緒に狩りしたら、


「八つ裂きだ!」


 とか、


「八つ裂きの八つ裂き、八つ裂き地獄だ!!」


 とか叫んでいて、小学五年生怖いw と思った。

 あらぶってますわー。

 とかいいつつ、リアルでは爆笑していた私であった。

 小学生おもろすぎw


 


 



 






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