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 最近あゆゆちゃんと疎遠である。

 プレイ時間帯が夜間の私と、自称中学生のあゆゆちゃんは昼間のキッズ時間にプレイするため、すれ違い生活を続けているのだ。

 まあぶっちゃけどうでもよかった。

 私は基本ログアウト表示プレイだが、たまたまログイン表示に切り替えれば、速攻であいさつ飛んで来るし。

 マジぱねえ。

 マジぱねえ。

 ログアウト表示というのは、ゲームをしているのに、あたかもログアウトしているかのようにキャラクターアイコンをオフ表示に偽装する手段である。

 具体的にはキャラアイコンが灰がけになって、はためにはゲームしていない状態に見えるのだ。

 ギルドチャットをログアウト表示で監視する監視厨キメーとか、ログアウト表示する人ってゲーム時間を短く見せかけてリア充アピールしたいのとか、色々言う人もいるらしいが、知ったこっちゃねえ。 

 ゲームは、一人で、静かに、楽しみたい。

 時もあるわけよ。

 どんだけフレンド少なくても、やっぱMMOだから、イン表示してると色々雑事が舞い込んでくる。

 最たるものが挨拶だ。

 挨拶だけで済まず、雑談に発展した日には、新迷宮の開拓もおちおちやってらんないわけよ。

 それに私はほぼソロプレイか野良PTプレイしかしないから、フレやギルメンとは雑談オンリーだ。

 イン表示=雑談OK状態で使い分けしているのが現状だった。

 本当のところぶっちゃけると、フレやギルメンとハイエンドコンテンツ行くのは疲れるのだ。

 私は廃人には遠く及ばないものの、エンドコンテンツプレイヤーだった。

 エンドコンテンツプレイヤーというのは、通常のメインストーリーを終わらせた後、最強の武器防具を求めて果てしない修羅道周回コンテンツに乗り出した人々のことと思っていただければ遠からじ。

 迷宮も探索が困難となり、一撃死するような強敵と何度も繰り返し戦うことになる。

 一回じゃないよ。同じ迷宮を何度も何度も何度も何百回も探索クリアするのよ。

 欲しいレアアイテムが揃うまでね。

 その欲しいレアアイテムが一回で落ちればいいけどね。落ちるわけないよね。そしてそのレアアイテムが1個で済めばいいけどね。60個必要とかざらだからね。レアアイテム60個揃えて上位の装備とかに変換して、その装備を+1とかにするためにもう一回作って欲しい数値や効果が出るまで繰り返し合成するとかだからね。

 鬼畜だから、合成失敗とかもあるからね。失敗すると、+2が+1とかに下がるからね。

 もうマジ泣くから! 必死に+5にしたのが、+4になったりしたら号泣どころか灰になっからマジで。

 この装備ね、理論上最大+13までできるんだよね。いや、しねーよ。そこまでしたら死ぬからしねーよ。ネットでも+8にした人が装備公開してて、マジ廃人マジ頭おかしいって晒されていたからね。

 +7まではごくごくごくごくたまーに見かけてすげーってなるけど、+8とかマジ鬼畜修羅道だろ。

 もう人間じゃねー。

 私は+5です。はい。+6にしてえよおお。でも合成怖くてできねー。だからとりあえず素材を何セット分か集めておこうと通うんだよ。+4になっても+5までは復帰できるだけの元手揃えておかないと灰になるからさ。

 欲しい数値や効果がとれなければ何百回でも通わないとね!

 合成失敗したら、元の+に戻すためにまた通わないとね!

 何度も通うわけよ。

 ゆえに、周回コンテンツともいうのね。

 うふーふ。

 うふ、ふはははは!

 本当もう頭おかしくなって笑っちゃうわーあーっはははは!

 んで、この迷宮もボスも超難関だから、ある程度試行錯誤ってのも必要になってくる。

 そういうのが苦手な人と組むと、PT崩壊してまたトライ、また崩壊、再度トライ、と時間だけが過ぎていく羽目になる。

 何百回も通わないと行けないのに、クリアできない面子とはいけねーっす。

 あとくされのない野良でやるのが楽だし、基本野良は最低装備最低手順頭入ってない人は出荷されてこない。

 あまりにも酷いと、罵られっからね。

 出来ない人に限って、「野良は地雷が多い。怖い!」とか言って、身内オンリー引きこもりしてしまうけれど、それお互いのためよ。

 こういう人はお互いのために出荷しちゃいけねえ。

 野良もたまに罵倒酷い人いるけど、基本礼儀正しい人の方が圧倒的に多いし、他者に注意することなんてめったにない。

 指示厨と言われるのを野良の人は恐れるからだ。

 互いにソロ不干渉一匹狼気質の人が多いので、黙々己の役割こなして探索ボス撃破か雑談のみってのが不文律にある。

 戦い方は個々人に任せて大丈夫だろって無言の野良的暗黙の了解があるわけだ。

 それが出来ない人は野良にきちゃいけねーし、くるわけねーって感じの空気かな。

 まして、一回こっきりのPT面子のために、注意してやるほど親切じゃないよ。

 注意されると腹立てる人もいるし、泥被るより黙って別れた方がいいわけっしょ。

 だからよっぽど腹に据えかねるとか、本当マジどうしようもなくて見かねて注意ってパターンなら、地雷はどっちかというとまあお察しとなるわけだ。

 というわけで、野良は基本ブリーフィングもせずにつっこんでも、割とどうにかなってしまう。

 同じ周回コンテンツプレイヤーだから、もう慣れてるのよね。

 そういう面子との一期一会ってのがマジ楽しい。

 え、何この人! って凄い人と会うこともあるし、なんか回線落ちから一転して妙に盛り上がってしまうこともあるし、本当びっくり箱なわけよ。

 一度ガチな人がいて、雑談混じりに資産の話になったら2億ペソタとぽろっと漏らされた。

 びびったね。

 私は5万~200万の間を行ったり来たりだったからさ。

 市場価格で、200万もあれば中々よい武器防具が買えると考えてもらえば、資産2億がどんだけ桁違いかご理解いただけることと思う。

 私はいい武器防具が買えるほどたまると、すぐに買っちゃうんだよね。

 なのでいつも200万以上貯まることがない。

 本当はもっと資産ためないといけないんだけどなあ。

 それはさておき、ずっと同じ人に関わって狭くて密度濃い世界構築するのも否定しないけど、こういう浅く広く一期一会を楽しむのが性にあってるかな。

 狭い人間関係といえば、常に一緒に行動する相方ってのがあるらしいけど、多少いつでも遊べる気の置けないフレンドって憧れる面もある。

 でも嫉妬や長期不在時に相方が別の奴と浮気してどーのこーのトラブルなど聞くと、くっそおもしれーと思うかたわら、やっぱ第三者的に楽しむに限るわーと思っちゃうね。

 圧倒的にソロ野良の気楽さがやっぱいいかな。

 向き不向きってやつよね。

 で、私はその日も、野良で迷宮行こうと周囲チャットで募集していた。

 ついでに自動オートマッチングとも呼ばれる迷宮PTメンバー参加希望のタグも出しておく。

 これを見て、誘ってもらえるかもしれないからね。

 んで、その日私はちょっと趣を変えていた。

 いつもセージで行くんだけど、今日は火力魔法職で行こうと思ったのよ。

 セージっていうのは、回復もできる火力職かな。逆もまたあり。

 回復はガチヒーラー職に及ばず、火力はガチ攻撃職に及ばず、どっちつかずな中途半端職とも言われるけれど、エンドコンテンツでは割と募集が多い。

 メインヒーラーが落ちた時や、手が回らなくなった時など、サブヒーラーとして保険がけでいると安定感が違ってくるからだ。

 普段は範囲火力職が圧倒的ヘイトを稼いですぐぶっ殺されてしまうのを、サブアタッカーで範囲火力してれば、ターゲット分散以前にすぐ殲滅できて火力死亡落ち防げるし。

 でも今日は火力で行くよ。

 なんでかっつーと、ヒーラー職やったことある人は分かると思うが、ヒーラーってね。

 マジ神経使うんよ。

 自分が落ちたら終わりだし、火力死なせちゃいけないし。

 メインヒーラーはマジ大変だと思う。

 サブヒーラー+サブアタッカーの自分ですら疲れるもんな。

 セージはセージで別の気苦労ってのがある部分もある。

 つまり、今回復するのか、攻撃するのか、っていう選択ね。

 臨機応変が求められるわけよ。

 回復ばかりしてると火力足りなくなるし、攻撃ばかりしていると全滅してしまう。

 どのタイミングでどっちの手札を切るか、ていう選択を常にしないといけない。

 疲れるなーって思って、脳死アタッカーしてーわ、と思い、セージと壁職とヒーラー職を募集した。

 鉄板PTと言われる構成で、まあ最悪3回もトライすりゃークリアできるだろうと思った。


 結果。


 30分。

 無為に。

 過ごしました。

 え。

 なんで?

 分かんない。

 なんか余計なことしてたかな。中ボスで弱体魔法かけたのがよくなかったかな。

 ブリーフィングした。


「時間が勝負すから、むしろ攻撃一辺倒でいいですよ」


 とヒーラー様に言われた。

 おし、そうかそうか。

 じゃあ次は攻撃オンリーすっか。

 また30分経過した。

 おかしい。

 なんでやねん。

 PTを変えた。

 また時間が過ぎた。

 アタッカーとして自分の動きがまずいせい? やべー。

 自分の中で動きを確認してみる。

 メインアタッカーだから、回復はそもそも選択にない。

 壁も後衛だからしない。

 セージの時と同じ動きだ。

 自分の火力が足りてないのかしら。

 いやでも、最低限はあるよ。

 ヒーラーがへたくそ?

 いやいや、こんなマゾ職選んでエンドコンテンツきてるような人々よ。

 壁が壁してねーのか?

 うーん……

 あんまり考えたくないけど、セージな気がする。

 セージは、アタッカー魔法職と同時に範囲火力魔法使わないといけないし、メインヒーラーと回復タイミングを意思疎通していないといけない。

 つまり、攻撃職とも回復職とも呼吸を合わせる必要があるのだ。

 これができないとセージはふらついてしまう。

 ためしにセージになってPT募集。

 2回目でクリアした。

 ……やっぱセージか。

 自分が特別うまいとは思わない。どっちかというとかなりもたつく。コマンドミスも何度もあった。

 だけど、へたくそなりに、心がけていたこと。

 それは魔法職への攻撃タイミングを伝えたことと、特にメインヒーラーとの意思疎通だ。

 メインヒーラーと違って、セージってのは、回復量に劣るし、自己バフを度々しないといけない。

 バフしてるターンは、当然回復補助できない。

 PTが半壊しかかっているようなぎりぎりのシーンでは、今回復できねーよってのを伝えておく必要がある。

 メインヒーラーはてっきりセージが回復飛ばしてくれると思ってたのに、してくれんかった! という場面になりかねないからな。

 で、事後に言ったのね。


「たびたび自己バフかけしますとか、MP回復しますとか、いちいちチャットしてすんませんした」


 メインヒーラーさんは言ったね。


「いえ、助かりました。タイミング分かったので、回復すればいいって分かったし、ありがとう!」


 正直、メインヒーラーさんによかったよ!って言われるのが一番うれしいよね。

 だって一番大変な職だもん。

 サブヒーラーがメインヒーラーに介護までされてちゃ、マジてんてこまいだしさ。

 でもメインヒーラーなんてエンドコンテンツではやらねーから!

 禿げるし!

 んで色々考えて、ギルドチャットでガチ勢のヒューマン少女(中身男)のになちゃんさんにに相談した。


「壁職、セージ、ソーサラー、ヒーラー構成が鉄板と思うんすけど、セージによって戦局が安定しない気がして」

「そうだね。セージが酷いと負けるから、俺はやるなら自分がセージするよ」

「あー、やっぱセージが問題なんすか」

「うん。セージ次第だね」

「なるほどー」

「自分でセージすりゃ安定して楽勝だし」


 グサッ 

 何か心に突き刺さります。

 楽勝か。わたしゃ辛勝だよ。まだまだダメだな。ついでにセージの動き方を確認しておくか。

 

「こうこうこうなんで道中は攻撃オンリーで蘇生のみ請負い、ボス戦になったら回復チェンジしたんすけど、できるだけ隙見てアタックも挟んでボスHPを削ると言うのはどうすかね?」

「道中回復しないとかないからw」


 まだまだのようです。

 

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