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二代目魔王の御乱心  作者: 古口晶
Chapter.1 Induction
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十五話 後悔

 面倒事が重なる日というのがある。

 次から次にスタックが乗り、いつまで経っても終わりが見えない。

 いっそ全てを投げ出したくなるも、それすらできない。

 結局、思考もまとまらないまま狂ったように走り回らざるを得なくなる。

 今の俺みたいに。

 今の俺が、まさにそうだった。


 ◇


「いなくなったのだ。本当に、目を放した一瞬に。済まない」


 レリクが謝罪するのを聞き、俺はようやくまとまろうとしていた頭の中が音を立てて崩れるのを感じた。

 何を思ってレリクがそれを伝えてくれたのか、一体あの少女はどこに行ったのか、そのことにも思考を回さざるを得なくなり、真っ白になったのだ。

 もうここまでくると、手の回しようがない。状況は完全に俺の許容範囲を越えてしまっていた。


 それでも、何か行動を起こすとするなら。

 俺はまず、『探知』から始めることしかできないのだった。


「くそっ!」


 『転移』と違い、『探知』にとってこの森の魔力濃度はよい方に働く。密度が高い物質を音や振動がよく伝わるように、この森で使う『探知』は魔力の濃さにより、精度、精査速度において最大の性能を発揮するのだ。


 それにより広げられた魔力の網、半径一キロ圏内。中心部であるこのフォーレスの外に存在する生命反応を探す。検索条件はヒト、ないしルウィン以上の魔力と生命反応だ。


「いた……!」


 あった。西にほぼ一キロ、範囲内ギリギリのところに、やや弱めだがヒトの反応。俺はそちらを向いて、何も言わず駆け出そうとする。


 その直前、セーレと目が合った。

 子供達をまとめ上げ、火の点いた家から別の家へ移そうとしているところだったのだろう。俺を見る緑色の目の不安げな光が、妙に頭にこびりつく。


 だが、今は一言だって話している時間がない。とにかく焦っていた俺は、視線を切るようにして俯き気味に走り出していた。

 マリウル、レリク、シェイルの静止の声が聞こえたが、それにも応えられなかった。


 とにかく、時間がなかった。


 ◇


 南に北に西に、とにかく振り回されて頭がパンク寸前だ。

 それでも、今やるべきことだけを考えて行動する。

 『超化』の負荷は運動量に比すればほとんどないほどだが、それでも人間の限界以上の動きをさせられた身体には疲れが溜まる。息も自然と荒くなっていた。


 魔力切れによる致命的な疲労感、というわけでは当然ないが、それでも不安はあった。もしかすれば魔法を使い過ぎることによる弊害もあるのだろうか、と。

 魔王にはそのような心配はなかったが、今の俺の身体は平均的なヒトのものだ。『超化』魔法の酷使に耐えられるかどうか、という判断は魔王の知識ではできそうにもない。


 それでも走る。全ての心配は後回しだ。

 西へ、『探知』の反応へと近付いていく。

 と、俺の視界にちらと映るものがあった。


「いた」


 それは、ルウィン族の緑色を基調とした服に身を包んだ、あの少女の姿。

 彼女は地べたにうつ伏せになっていた。そのせいで一瞬嫌な予感が脳裏によぎったが、『探知』の反応に異常はない。つまり生きているということだ。


 何故こんなところで一人で倒れているのか、いやとにかく何か起きないうちに見付かってよかった、と思いながら、彼女に駆け寄る。


 そして、あと数歩といったところだった。

 俺の耳に、何か風切り音のようなものが響いた……と、思った瞬間に、俺の左の太股を氷の矢が貫いていた。


「がっ!?」


 激痛と同時に、痺れと冷たさがびしり、と左足全体に走る。思わず姿勢を崩し、顔面から転倒する……ところを、転がって事なきを得る。


 だが、俺はひたすら混乱の中にいた。


「く、あ、なにが、何だ……これは……!?」


 震える指で『氷槍』を掴む。と、そのせいでまた痛みが足に響く。それを己に『精神操作』を使って我慢しつつ、『氷槍』を引き抜いた。


「あがあぁぁっ!!」


 痛い。痛い。ひたすら痛い。同時に開いた穴から力が抜けていくように、俺は腰砕けになって地面に手をついた。


 その手が、突然切り刻まれたような傷を開いて、血を噴いた。


「!?」


 深い、骨まで届くような鋭利な切れ口。

 俺はギリギリのところで正気を保ちつつ、叫ぶ前に状況認識を改める。


 これは、魔法による傷だ。

 恐らく、風に類する魔法で作られた真空波だろう。


(攻撃されている)


 そう思った瞬間、俺は少女を抱えつつ『障壁』を周囲に張った。『結界』に近いが、物理的衝撃ないし魔法的影響をより明確に遮断する魔法だ。

 直後、どこかから飛んでくる空気の揺らぎや火の球が、俺の『障壁』を強烈に叩いた。防ぎ切れなかった熱気や風が俺を四方から叩く。


「くっ……」


 喘ぎ、顔を隠しながら『治癒』を己に使用。足と手の傷は即座に塞がっていくが、血を失ったせいか魔法の影響が残っているせいか、妙な気だるさが身体に残っていた。


 そんな俺の、土埃にまみれた視界の中で、人影が揺らめく。


「ただの若造、というわけでもなさそうだ」


 男の声が、その人影から響く。それに続いて、俺の周りからも声。


「中々にできる魔導師、だな。未熟なところはいくつもあるが」

「それを補って余りある力よ。杖の補助もなしに」

「しかもすぐに『治癒』までしている。危険だな」


 後から三人、合計四人が、俺の前後左右から歩み寄ってくる。恐らくは二十代から四十代と思しき、年齢のばらばらな四人だ。共通点を上げるなら、みな一様に黒いローブを着て、節くれ立った杖を持っていることか。


「……魔導師」


 その正体に思い至るに、数秒も必要としなかった。杖にロープ、火を見るより明らかな魔法使いのテンプレート装備だ。

 当然、俺に痛い目見せてくれたのは奴らの魔法であろう。加えて森に火を点けたのも、ウルルに怪我させてくれたのも、この少女をここまで攫ったのもこいつらに違いない。落とし前をつけさせてやる。


 とは思ってみたものの、四人は俺から十五メートルほどの距離を保ち、そこから近付いてこない。どういうつもりかおかわりの攻撃魔法も仕掛けてこない。ただ俺を眺めるに留まっている。


(……けど、これはこれで厄介だな)


 俺は思った。

 たった十五メートル。それこそ拳銃弾ほどの速度が出る『氷矢』ならば、瞬きする暇もなく命中させられる距離だ。それは確かなのだ。

 しかし、当てるまでが厄介だ。


 『氷矢』はまず空気中の水分を凝結させて氷の矢を形成する必要がある。時間にして一秒ほどだが、ワンテンポ遅れるのは事実。面と向かった状態では、よくて相討ちが関の山である。

 まして、相手は四人。俺が狙えるのは、精々視界に入れられる二人が限度だ。それでは後ろから何が飛んでくるかわかったものではない。


 かといって、『超化』で無理矢理押し通るというわけにもいかない。俺の傍らには気を失った少女がいるのだ。向こうの彼女に対しての出方がわからない以上、軽々しく離れるわけにはいかなかった。


 そういう理由で、俺は『障壁』を張ったまま動けずにいる。動くにしてもきっかけが必要だった。動くに足る理由か、動かざるを得なくなるきっかけが。


「……あんたら、何者だ?森に火を点けたのはあんたらか?」

「それを聞いてどうする?」

「どうするかは聞いてから考える」


 馬鹿にしたような答えを返す。こんな質問は別に本意ではない。ただ何かのきっかけが見付からないかと口を開いただけだ。

 時間が経てば不利になるのは向こうか、俺か。駆け引きのわからない俺には、それすらもよくわかっていなかったが。


「ククク、随分と威勢がいいな」

「自分の状況がわかっていないのか?」

「囲まれているのはわかってる。それだけだ」


 ことさら挑発するように答える。同時に、傍らの少女を片膝ついたまま抱き上げた。いざとなれば抱えて逃げる構えだ。


「聞きたいことは山ほどあるんだ。今話すか、後で痛めつけられながら話すか。選ぶんだな」

「虚勢を張るのもいい加減にした方がいいぞ、小僧」


 元々期待していなかったが、ここで諸々を聞き出すのは無理なようだ。まあ、知りたいことなんて元々「森と集落を襲った理由」くらいなものだが。


 俺の前方の、壮年の魔導師が俺に杖を差し向ける。その先端に魔力が集まり、光になっているのがわかる。いくら俺でも無視できない魔力量だ。


「【此処に其の者を焦がす火炎あれ】」

「っ!?」


 抑揚なく一呼吸の間に紡がれた詠唱。

 それによってただ集まっていただけの魔力は法陣の形を経て、炎へと還元され、俺へと襲いかかる。

 『火球』より一回り大きな炎の塊を飛ばす、『火炎』だ。俺はそれを二重に重ねた『障壁』で防ごうとするも、双方の魔力がぶつかり合うことで生じた衝撃にたたらを踏み、そこを抜かれてしまう。


「があぁあっ!」


 咄嗟に出した左腕が炎に巻かれ、皮膚を炭化させていく。

 当然熱いし、この上なく痛い。神経を剥き出しにされたわしで擦られるかのようだ。


 慌てて自分の腕に『凍結』を使う。燃え上がる炎を上から押さえ込むように、冷気が俺の焼け爛れた腕に纏わりつく。炎熱から冷気という温度変化に耐えられず、腕の感覚が消え去っていた。これまた慌てて再度『治癒』。


「ふん。無詠唱でそこまでするか。確かに、一対一では分が悪かったかもしれんな」

「だがこれは決闘でも何でもない」

「恨むなよ」

「安心しろ、苦しまないように殺してやる」


 霜を払って綺麗に治った腕を晒すと、魔導師達は口々にそう言った。次いで、杖を掲げ出す。


(詠唱っつっても、相当短い。このままじゃマズい……!)


 『火炎』を用いる際に男が述べたのは、この世界のヒトの魔法としては一般的な詠唱式魔法、その一句であった。


 詠唱式魔法とは、言葉と声により式を組んで発現させる魔法だ。法陣を描いて魔力を流すのではなく、魔力自体で法陣を描くのでもない。手間のかかる準備も要らず、即応性が高いため、魔法を積極的に軍事利用するヒト族が特に重用する魔法体系である。


 魔王ないし魔族はそれよりも速く、強力な無詠唱を使え、俺もそうなのだが、それでも熟練した魔導師であれば詠唱しても互角以上に戦える。

 この状況で俺が勝っているのは、恐らく魔力量だけ。経験の差が全ての足を引っ張っている状態だった。


 火傷が消えつつも違和感の残る左腕を見ながら、半径二十メートル範囲内を『探知』する。この距離なら、魔法を使う時のわずかな魔力の揺らぎも感知できよう。そこを『感覚強化』で速めた知覚速度でもって、『障壁』を多重展開して受け止める。

 いささかありきたりだが、名案であろう。まるで受け身過ぎて状況を打開できる気がしないのは問題ではあるが。


 ……ふと、自分の思考に違和感を持つ。

 何故、こんな状況なのに。死にそうな場面なのに。

 どうして、俺は怖れていないんだろう?


「随分と胆力があるな。いい魔導師になれたものを」


 前の男が、そんな俺の自問に乗っかるように笑い混じりに言った。


「だが、商会の顔に泥を塗ったお前を生かしておくなというのが先方からのお達しでな。悪く思うなよ」

「……何のことだ?」

「とぼける気か?」


 ふん、と鼻を鳴らす男。どうやらこの中で一番年長かつ、纏め役であろうそいつからの情報を聞き出す意図で、俺は確かにすっとぼけてみせた。

 男は「まあいい」と言いながら、杖を俺に向けたまま語った。


「自分の死ぬ理由もわからないのは不憫だろうからな、一応教えてやろう」


 半月前、奴隷商会の調達役が「ルウィンを攫ってくる」という仕事をし損ねて戻ってきた。年端もいかない小僧にやられたというそいつらは役立たずのホラ吹きとして処分されたが、半分は戻ってこなかった。

 ただその時は、大方獣に襲われでもしたのだろうと、問題にはならなかった。端金で雇った有象無象の生死など、商会にはどうでもよかったからだ。


 しかし、続けて奇妙で深刻な事件が起きた。別口で捕らえていたルウィンの奴隷達が、突如として何者かによって奪われたのだ。

 総勢十名以上からなる見張りをものともせず制圧し、牢を破壊し、奴隷を奪った者達。それを率いていたのは、奇妙な服装をした魔導師の小僧であったという。


 つまり、俺だ。

 あの時凍えさせた連中が、何とか生き延びて俺の特徴を報告したのだ。

 そしてその俺に落とし前をつけさせようと、商会がこの魔導師達を雇い入れて森に送り込み、またあわよくばルウィンも捕らえ直させようとした。


 ただ、それでも疑問は残る。

 こいつらはどうして、俺がこのミナス大森林にいるとわかったのだろうか?ということだ。


 そんな俺の疑問に、男は嘲笑とともに答えた。


「その娘を助けるべきではなかったな」


 言って、俺に何かを差し出してみせる男。その手の上にあったのは、何か黒い箱のような台座の上に透明な半球が収まったものだった。

 その内部で、赤い光が細くこちらを……いや、少女を指し示しているように見えた。俺はそれを見て、小さく舌を打った。


「魔導具……」

「そうだ。使い方は言うまでもないな?」


「魔導具」とは、文字通り魔導師が魔法の補助に使ったり、魔法を込めて使うための道具だ。ぶっちゃけ魔法に関わるあらゆる道具は「魔導具」と呼べるだろう。


 そして、男が持つ魔導具の使用方法は……恐らく、「対象の追跡」。

 コンパスのように、しかし北ではなく対象のいる方向を示すのだろう。今の場合では、つまりはこの少女を。


「お前も魔導師ならわかるだろう。その娘の烙印は奇妙なことに魔力を放たないが、明らかに魔法的に付けられたものだ。そしてこの『針儀』はそれを追うことができる。どちらもそれなりの価値があってレギス商会が確保していたものだが、それがこんなところで役に立つとはな」


 男は『針儀』の箱を閉じて言う。


「考えてみれば奇妙なことだ。レギス商会に喧嘩を売る奴隷商などいるはずがない。つまり先の襲撃は奴隷の強奪が目的ではなかった。ならば目的は奴隷を助けることか?となると怪しいのはルウィンどもだ。しかしヒトであるその娘もいなくなっていた。ルウィンならそんな余計なことはしないと思っていたのだが……」

「ガキ、お前が噛んでたってわけだな」


 二十代と思しき、俺の後方の魔導師が粗野な口調で続ける。


「ルウィンに肩入れするヒトの魔導師か。何が目的だか知らんが、馬鹿なことをしたな」

「馬鹿、だと?」

「ああ。『針儀』で行方の知れた小娘がお前に繋がる確証はなかった。怪しくはあったがな。森でルウィンのガキを助けた小僧に、奴隷を奪った小僧。そいつらが同じ奴で、まだ森にいるかどうか、なんてな」


 つまり、狙いが俺というのは建前だ。いや建前とは違うか。ただの手順の問題だ。いるかもわからない俺を探すのではなく、いるとわかってるこの少女を追い、そこを足掛かりに俺を探す……いや、誘き出す。


 まんまと引っ掛かったというわけだ。

 俺を殺すためにこんなけったいな真似を……森に火まで放って……


 ……この世界は、こんなことばっかりなのか。

 見ず知らずの誰かのために、命を捨てる勇者がいるのに。

 自分より強大な魔軍に立ち向かえる人々がいるのに。

 純朴で優しいルウィン達が生きているのに。


 そんな世界で、どうしてこんなことをする?


「お前が馬鹿正直のお人好しで助かったぜ。手間をかけて森を焼いて、ルウィンどもの目を引いた甲斐もあったもんだ」


 火を放ち、それにルウィン達が誘き出される。自分達は『隠蔽』で隠れてそれをやり過ごし、森の奥へ。こいつらくらいに力がある魔導師ならば、里の『結界』に傷を付けて進むことができたのだろう。

 そうしてフォーレスに辿り着き、ウルルの相手をしながら、俺の『探知』も織り込み済みでこの少女を攫い、俺に対する囮にした……

 いや、それだけではない。


 集落のルウィンから相手は「魔導師の集団」と聞いた。つまりこいつらだけでなく、まだ他にもいるのかもしれない。そいつらの目的は何だ?もしかすれば、俺が負わせた損失を強引にでも取り戻すために、レギス商会とやらがルウィンを奴隷として補充するつもりなのでは?


 可能ではあるが危険を伴う行為だ。それだけ見返りがあると踏んでのことなのは想像に難くない。そして、実際に行動を起こされている。


 ……嫌な鼓動が聞こえた、気がした。

 わかってしまった。いや、気付かないようにしていたのを、今さらながら思い知らされたのか。


 これは全部俺の責任だ。


 俺が手掛かりを残した。俺がこいつらをこの森に招いた。この森に火を放たせた。ウルルを傷付けた。全部俺が原因だ。

 俺のせいで、この森が、ルウィン達がこんな目に……


「そういうことだ。我々も仕事なのでな。ここでお前は死んでほしいとの先方からのお達しだ」


 四人が俺に向けた杖が、一斉に魔力を纏う。あとは詠唱で魔法が構築されるのを待つばかり。


「恨むなよ。全部お前が撒いた種だ……【此処に其の者を穿つ氷槍あれ】」


 四人が揃って詠唱すると、俺に差し向ける杖の周囲に数本の『氷槍』が形成された。

 それで『障壁』ごと貫いて俺「だけ」を殺すつもりなのだろう。

 少女は回収対象なのだ。俺が彼女を盾にするなどとは考えていないのだろう。する気もないし、しても意味がないからやらないが。


 魔導師達は至って冷静で、冷酷だった。その目は冷たく、無感情。これから人を殺すという意志すら感じられない。

 何とも思っていないのだろう。向こうからすればただの仕事なのだ。傷付けるも攫うも殺すも、全て仕事。ただの作業……


 ──どうして、こんな奴らがいる?こんなことになった?

 冷気を纏う氷の槍を放たれながら、思わずにはいられない。

 考えるまでもない。全部俺のせいだ。

 俺が中途半端なことをしたから。

 大した考えもなく行動したから。

 全て、俺の半端が招いた事態。俺が引き起こした迷惑。


 調子に乗っていた……いや、違う。

 自分でわかっていただろう。全て「半端」だったと。

 やりたいようにやっただけで、できることをやらなかった。そうしていればこんなことにはならなかった。


 そうさ──出し惜しみせず、「本気」になっていれば。


「……馬鹿みたいだ」


 呟きながら、俺は『隠蔽』を解き──全ての魔力を露わにした。

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