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応天門の変~決意~

 想像通りその後の都は大変な有り様だった。

 

 やれあいつが怪しい、もし火をつけるとしたらあいつしかいない、などなど人々は疑心暗鬼に駆られてろくに犯人の調査も行われなかった。


 次は自分の屋敷に火がつけられるのではないかと恐れた貴族たちは今までの倍の人員を雇って門を守らせるようになり、本来ならばそんな役職ではない僕たちも臨時で門番をさせられる始末。


 この苦行に対して真っ先に音をあげたのはやはり前田だった。

「もうやってられるか、こんなこと」


 屋敷の主がいないのをいいことにその場にへたり込んだ。


「おいおい。ちゃんと働かないと後が怖いぞ」

「そんなこと知るかい。あぁ。世が世なら高官にのぼりつめていたはずの俺がなんでこんなことを……ん?」


 いけしゃあしゃあと泣き真似をしていた前田だったが、突然立ち上がり僕の肩を掴んだ。


「そうだよ。鷹取、お前さ、前に俺の衣が盗まれたとき下手人を見つけてくれたよな。お前なら今回も……」

「無理言うな。そんなチンケな泥棒とこんな大罪人を同列に扱えるはずがないだろ」


 肩を掴む手を除けた。しかし前田はなおも食い下がる。


「いや、手がないわけじゃないんだ。実は俺のじい様がそこそこ偉い人でな。そのつてを頼れば手伝いくらいはさせてもらえる筈だ」


 あまり認めたくはないがこいつの家柄はわりと優秀である。本当に認めたくはないが。


「貴族たちはどいつもこいつも全国の坊主どもに読経させることにお熱らしい。政にもうわのそらって聞くし、今ならこの手で通る」

「しかしだな」


 目を大きくひらき詰め寄る前田。

「何を心配する必要がある? 俺の時と違って今回は国の大事だぞ? 手柄を立てれば出世もありえるし名乗りをあげるだけで貴族に恩を売れる。これはでかいじゃないか!」

「お、おう」


 今思うと、この時の前田にはどこか鬼気迫る勢いがあった。慎重をよしとする僕も思わずうんと言ってしまった。



 それから何ヵ月か経った。前田がどんな手を使ったのかは知らないが僕と前田は警備の任を解かれ調査にあたってよいことになった。もちろん役職が与えられたのではなく、都の民に怪しい動きがないか見回るという名目であったということを添えておく。


 僕は家で寝坊の癖がある前田を待っていた。

 最近では僕も縫い物を任せきりにしなくなり、小さい着物を縫うのもお手の物になった。人を待つ間のよい時間つぶしにもなる。


 そして作業が一段落したころ、ようやくこちらへやってくる影が見えてきた。周りの人をかき分け押し退け一目散に走ってくる。

「おーい!」

 慌てて駆け込んできた前田。顔が真っ赤だ。


「鷹取、大変だ! 左大臣の源信様が放火犯として捕まった!」

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