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me m [ミーム]  作者: q69p
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5/28

5

「私はいつだって、あなたの側に」

そう、彼女は僕に告げた。

視界が、黒く染められていく。


ここは、あの夢の中か。

取り敢えず、見慣れたソファに腰を降ろして考える。

まだ、自宅の中に居るということは、夢が開始して間もないということか。

夢を夢だと認識した途端、おかしな話だが、夢の中に現実味が出てくる。

「あなた、明晰夢って知ってる?」

さっき迄誰もいなかったはずの対面のソファに、銀髪の古めかしい鎧を着込んだ少女が座っていた。

なんというか、説明しにくいが、片膝を立てた独特な姿勢で座っている。

僕ですら、少し痛痛しいと思える程度に独創的なポーズだった。

「いや、聞いたことはあるけど、詳しくは知らない。

教えてくれるの?」

「んん、タダじゃ出せないわね」

「何をご所望で?」

「そこでごちゃごちゃ言わないのが、あなたらしいと言えばあなたらしいけど……。

まあ、いいわ。

一つ約束してほしいの。

…今から起こる出来事、全部忘れないこと。いいね?」

「いいよ」

元よりそのつもりだ。

忘れるのはつらいから、ね。

「交渉成立ね。

…明晰夢っていうのはね、例えばaさんが眠って夢を見ている時、その夢の中で「これは夢だ」と自覚を持った時に起こるものなの。

明晰夢の中では、aさんは自由に行動することができる。

ただし、aさん以外は夢の中のシナリオしたがって動かなきゃいけない。

つまり、aさんは自由に夢に干渉できるの。

夢のストーリー通りに役を演じてもいいし、例えばストーリーを無視して登場人物を全員殺したりすることもできる」

「なるほど、今がその状態なんだね」

はあ、と彼女が小さくため息を吐く。

「そうね。理解が早くて助かるわ。

なんかその分つまんないけど」

「悪いね」

わざわざ弄られてあげるつもりは無いけどね。

「ところでさ」

ふと疑問に思うことがあった。

「なぁに?」

「この夢における君って、一体何?

君は見た目も仕草も声も、この夢の導入部分と後半に出てくる銀髪殺人鬼さんだけど、まだその殺人鬼さんの出番じゃないよね。

君は何なの?」

彼女がううんと唸る。

少し間が空いて、回答が返ってきた。

「随分漠然とした問いね。

結論からいっちゃうと、わっかんない。

ただ、あなたが現実と呼ぶべき場所で、あなたと食事をした記憶があるわ」

ということは、さっき迄僕の首を締めていたあの人で間違いないだろう。

何で僕の夢の中にいるのかは謎だが。

というか、そもそもなんでこの人は現実に来れたんだろう?

そもそも、本当に夢の中から来たのだろうか?

この夢の中に出てくる殺人鬼と、この人は同一人物なのか、それとも別人なのか。

例えば、現実世界で平凡な暮らしをしているbさんが、aの夢の中で殺人鬼として再現されてもおかしくは無い。

いや、ないか。

現実でこんな人に面識があるわけじゃないし、あったら大問題だ。それにそれだと、「私はいつだって、あなたの側に」という夢の中でのセリフを彼女が知っていたことに矛盾が生じる。

…ミステリー小説なんかのキャッチコピーで、よく謎が謎を呼ぶなんて言葉が使われるけど、まさにその状態だ。

考えてはいけないのだ。

余計に謎が増える。

「ねえ、そんなことより、こんなところでずっと喋ってていいのかしら?

あなたは、この夢の主人公よ。

ふふ、素敵な響きだと思わない!」

aさんは自由に夢に干渉できる。

「それもそうだね」

「ぬ……つまんないやつだ」

でも、そう簡単には踊りだしませんよ。

…ともかく、謎は考えるより確かめた方が早いだろう。

あの夢の再現だ。

先ずは外に出ることにしよう。


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