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me m [ミーム]  作者: q69p
day0 ウ○トラマンだってインスタントラーメンを食べたい筈だ。そうだ、きっとそうだ。
15/28

3

今、目の前にいる女が、なにか恐ろしい化け物のように見える。

少なくとも、自分と同じただの中学生には見えなかった。

しかし、本能的な部分は、確かにこいつの言葉一つ一つを、安らぎとして受け取ってしまう。

「ふふ、気が済んだというような顔をしているね。

…さて、それじゃ私は録画していたアニメを消化しなきゃいけないんでね」

最後に、残りの問題は君一人で解決できると思うよ、と付け加え、袋井は裏道へと抜けていった。

「お前自身も、大問題なんだけどな」

それでもいいか。

そう思えてしまう。

それが一番の問題だ。


「残りの問題、か」

アレクサンダーは、結局何をしたかったのだろうか?

一つ心当たりが無くもない。

俺が思うに、あいつは…

「あれあれあれ?

とものん、すっげー悩ましそうな顔してるね。

あれかな、初恋かな!?

ついに来たかー。

お姉ちゃん、ロリ顏ロングストレートで身長155cm以下ニーソ着用じゃないと許さないからねっ」

取り敢えず今は、現実的且つ深刻な問題として姉がウザい。

アレクサンダーは後回しだ。

「違ぇよ。

つか、条件厳し過ぎだろそれ。

……もしかして、お前の趣味か?」

「うん!」

また、自分の姉の残念な汚点を見つけ出してしまった。

「あ、ニーソは黒か白で。

レース付きだと尚良し」

姉が何事かをほざいているが、聞こえなかったことにして、俺は二階にある自室に…

「初恋、ですって!?」

戻ろうとしたのだが、母親に回りこまれた。

「違うって。

姉貴がまたホラ吹いてるだけだよ」

「誰!いつ!どこまでしたの!?

何時何分何秒!?地球が何回回った時!!?」

「ひゅうー。

とものんったら、お・ま・せ・さん♡」

ああ、もう、ウゼェ。

そんな具合のリビングに、一石が投じられるかのように、ガチャリと玄関が開く。

「ただいま……」

親父だ。

親父が帰ってきた。

親父ならきっと、この異様な興奮に包まれたリビングを、なんとかしてくれる……筈だ。

「ああっ、明典さん!

友則が、私達の友則が悪い女に攫われてしまうんです!!」

おい、話が飛躍しすぎだろ。

お前の頭の中には、一年中真昼のテレビでも埋め込まれてんのか?

「ニーソっ、ニーソっ、絶対領域!!」

こっちはこっちで訳がわからん。

「親父、こいつらいつも通り悪ノリと勘違いで騒いでるだけなんだ。

うるさいからどうにかしてくれよ」

もう、藁でもおっさんでもなんでもいいので、何かに縋るしかこの局面を突破できそうになかった。

が、しかし。

「友則………土産だ」

予想外の行動だった。

ぽん、とテーブルに箱が置かれる。

「えー?

とものんだけズルい…って、ん!?」

「あら、なにこれは………!!?」

箱の包装紙には、『紫芋をドーム状に広げ、牛乳を練りこんだ生地を注入しました。

ぜひお土産に、『紺どうむ』を』という宣伝文句がでかでかと書かれていた。

「おい、親父。

何考えてんだ?」

「…やっぱり、そういう事だったのね……。

私というものがありながら…」

母親が何かを悟った、というか受信した。

「…どうかな?」

親父が無表情だが、やたら目だけを輝かせて、クルリとこちらを振り向く。

…どうかな、じゃねえよ。

割と洒落になってねぇよこれ。

かくして俺は、いつも通り階段を駆け上り自室に逃げ込んだのであった。



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