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最近、村では漁師が見事な真珠を持ってくると評判だった。
一体全体どこでそんな見事な真珠を獲ってくるのだろうと、村の若者の一人が米や味噌や醤油を調達しにきた漁師の後をつける事にした。
若者が自分の船で漁師の船を追いかけて行くと、岩礁の見え隠れする潮の流れの速い海を漁師の船が難なく進んでいくのが見えた。
いやはや噂どおりの海の男だと感心する間もなく、若者の乗った船はあっちをぶつけこっちをぶつけ、しまいには沈みかけながら、若者は命からがらやっと漁師の家の近くの岸にたどり着いた。
そこには嵐がきたら吹き飛んでしまいそうなあばら小屋が建っていた。
男やもめになってから人里離れた辺鄙な所に篭ったと噂には聞いていたけれど、いやはやとんだ変わり者だと心の中で悪態をついたのだが、いやこれは都合がいいかもしれないぞと若者は思い直した。
このまま遭難したとでも言って家に上がり込み、上手い具合に真珠の取れる場所を聞き出し、ついでに船も直してもらおうと若者は思ったのだ。それなら元気な声を張り上げてはいかにも胡散臭い。もっと近づいて、偶然を装って倒れておこうと静かに物音を立てないように漁師の家に近づいていくのだった。
するとなんという事だろう。
天女のように美しい女がアバラ小屋から出てきたかと思うと漁師の首に抱きついた。
そして、女が漁師に貝を渡し、漁師が貝の口を開いて真珠を取り出しているのが見えた。
これは一体どういうわけなのだろうと若者は首を傾げた。
どうやら漁師と女がねんごろの仲なのはわかった。そしてもしかしたら女が真珠を獲ってくるのかもしれないというのもわかった。しかし何故こんな所にこんな美しい女がいるのだろうと考えていると、若者はひらめいた。きっとたまたまこの近くで遭難して漁師に助けれ、そのまま居ついているに違いない。
それなら女をうまくかどわかし、女と真珠の両方を手に入れればいいじゃないか。
そこで翌日漁師が漁に出かけた所を見計らって若者は漁師の家あばら小屋を訪ねた。