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ある時、漁師は漁で捕まえた魚を逃がさずに全部引き上げて帰ってきた。
「まぁ、今日は大漁ですね」
女が言うと、
「米や味噌や醤油がそこをつき始めたから、村に行って交換してくる」
と、漁師は答えた。
「それなら魚籠の中の真珠もお持ちになってください」
と、女がいうので、漁師は女と魚籠を交互に見比べてから聞いた。
「何か欲しい物はあるか」
「早く帰ってきてくれれば何もいりませんわ」
「そうか」
そして、漁師は魚と真珠をを持って村に向かった。
間もなく漁師は帰ってきて、米や味噌や醤油と一緒に
「加工してもらった」
と、真珠の首飾りを女に渡した。
「まぁとてもきれいだわ。ありがとうございます」
女は真珠の首飾りを見ながらにっこり笑うと、魚籠に入れた。
次に漁師が村に行く時も真珠を持っていき、今度は腕輪に加工してもらった。
「まぁとてもきれいだわ。ありがとうございます」
今度も女は真珠の腕輪を見ながらにっこり笑うと、魚籠に入れた。
その次に漁師が村に行く時も真珠を持っていき、今度は髪飾りに加工してもらった。
「まぁとてもきれいだわ。ありがとうございます」
女は真珠の髪飾りを見ながらにっこり笑うと、今度は魚籠に入れずに髪飾りを自分の頭につけた。
その様子を眺めながら漁師は満足げに笑った。
そこで女がひどく驚いた顔をして漁師に抱きつくので、逆に漁師の方が驚いた。
「どうした?」
と漁師が聞けば、
「お前さまが笑ったのは初めてですね」
と、女が鈴を転がすような声で一際うれしそうに笑って抱きつくのだった。