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①山田花子編・前

僕の名前は「鈴木すずき 来夢らいむ」。

2年E組に通う男子生徒です。

オカルトものが大好きなごく普通の中学生です。


僕のクラスはこれといった特徴のない平凡なクラスなのですが、ある日「転校生」によって引っ掻き回されていきます。

え?ありがちだ?・・・コホン、僕の学校に来た転校生は…5人。

しかもみんな女の子。

1年生に1人。

2年生に3人。

3年生に1人。

それが今日に一気に。しかもなぜか2年に来た転校生はみんな僕の組に来るし。

おかしいと思いました。

そのうち、姉妹は2人。

他の3人はみんな血縁関係などありません。

変だよなー。うん、なんでこんな事があるんだろう。


「来夢っ、帰ろっ!」

「・・・あ、うん」

「何考えてたの?UFOでもみたか、コーノヤローゥ♪」


この明るい女の子が幼馴染の「小川峰おがわみね 麻陽あさひ」。

クラスが違うのにも関わらずいつも来てくれる。

僕とは違ってオカルトものが嫌いで全く信じていない女の子。


「UFOなんか見てたら僕「ヒャッホーウ!!!」って踊り出すからね」

「・・・残念なヤツ。ほら、帰るぞー!」

「はいはい」


麻陽と話してると若干疲れちゃうんです。


「あの、あの…」

「ん?」

「わ、私の、ですよ」

「え!?」


何と僕が持っていたカバンは転校生のものだった。


「ご、ごめんなさい!いえ、ワザとじゃないんです、ごめん!えーと…」

「あ、「山田(やまだ) 花子(はなこ)」…です」

「そうそう、花子さん」

「覚えやすい名前だと思うんですけど…」

「ん、花子さん…!?」


僕は、その聞き覚えのある名前についこう言っていました。


「え、どうしまし―」

「キミは、本物ですか!」

「ど、どうしたんですかっ?」

「キミは、トイレが好きですか!」

「な、何言ってるんですかっ!?」


「『トイレの花子さん』ですか!!!」


「え?」

「ちょ、やめなさいよ!この変質者!」


暴走した僕におびえる花子さんをかばったのはもう1人の転校生。

田中(たなか) 闇子(やみこ)」。


「あああああああっ!闇子さああああん!」

「な、何っ?この人!?」


闇子さんに暴走したのは僕の幼馴染の麻陽。

実は彼女、ヲタクなんです。

今はやりの「ふじょし」ではないみたいです。


「闇子さん!アナタ良い名前よねぇっ!」

「はぁ?」

「ツンしかないこの子!なんか違うけど来夢!早く攻略しちゃいなさいよ!」

「こ、攻略?」


彼女は世に言う「えろげゆーざー」なんだそうです。

これもよくわかんない言葉です。


クラスの端では「残念なコンビだよなー」とかいうつぶやきが聞こえたような気がした。



帰り道では部活動について話した。


「ねぇ、来夢はまだ決めてないのー?」

「うーん、1年の時は全部の部活を見学して回ったけど、特にこれといった部活はないんだよなぁ」

「私は見たいアニメがあるから部活言ってないけどー」

「麻陽って、残念」

「あんたも残念だよ」


結局決まらなかった。・・・何話してんだよ。



5月15日火曜日。晴れ。

転校生が来てから1週間がたった。

麻陽がそろそろ迎えに来る時間だ。

僕は昨日、オバケについてネットで調べていた。

そんなワケで僕は期限が良い。イエーイ!


「おはよーっ」

「ん、っはよー。今日は期限いいわねー」

「やばいんだよ!オバケやばいよ、オバケかわいいよ、オバケに燃えるよー!」

「え?あんたも萌えが分かるようになったのね」

「『燃える』くらいわかるよ」

「・・・つくづくドンマイ(オカルト+ややヲタク…なんか危ないわね。)」


登校中、僕たちは大変な事を見かけた。


「・・・なんですか」

「だから、なんでうちのクラスに来るのよって!」

「知りませんよ。先生に聞いてみたらどうですか?」

「うちのクラスにはアンタなんか必要ないの。なんで転校してきたワケ?」

「・・・親は何も教えてくれないの」

「ハッ、親にも見放されてるのね」

「逆に、私に言えない事があるから、傷つけたくないから何も言わないんじゃないのかと思ってるわ」


「来夢、なんか怪しいね」

「・・・誰がいじめられてるんだろう」

「ちょっと見てみようか」


僕達は少し身体を傾けて様子を見てみました。

すると、そこに見えたのは3人目の2年生の転校生。

(もり) ひき()」。

この反抗の様子からみてだいぶ強い人だと思います。


「来夢、行こうっ、危ないよ」

「でも…」

「あまり首出しちゃだめだよ!」

「・・・うん」



僕は森さんの事が心配で授業中などチラチラ様子をうかがっていた。

特にいじめられている事を空気を感じさせない素振りでした。


そんな昼、森さんが僕に話しかけてきた。


「どうしましたか、鈴木さん。私の事、見てたでしょ?」

「あ、いや、その」

「どうしてですか?」

「いやぁ…」

「どうして、ですか?」


僕は焦って焦って、パニくった挙句言ってしまいました。


「森さん!オバケ!…好きですか?」

「はい?」

「あの、そのぉ、なんか好きそうだなぁって」

「はぁ」

「あのあの、昨日調べたんですけど、オバケって、強く『生きたい』って思うと、存在が蘇るそうです!ただ、蘇るのはその何年か後なんだそうです!しかも!生前の記憶は無いんだそうですよ!」

「あのその」

「あぁっ、ごめんなさい・・・」

「ごめんなさい、私…オバケ嫌いです」

「そう、ですか」

「じゃあ、失礼します」

「……」


僕は何をしてるんでしょうか…ハァ。



そういえば、僕のお父さんは僕と同じく、オカルト好きだったな。

ちょーっと、お父さんの部屋、物色させてもらおうかなー。


「お父さん。ちょっとオカルト物について調べさせて!」

「ん、おぉ、いいぞ」

「ありがとう!」

「最近のお前は生き生きしてんな」

「あ、うん!僕のクラスにね!オバケの名前した子が転校して来てさー」

「ふーん、何て名前?」

「えーと、「山田 花子」!」


すると、お父さんはピク、と眉間にシワをよせて自分の部屋に向かった。

そして、5分くらいして戻ってきた。


「その他にも4人転校生が来たんだ!」

「ん、いいぞ。好きなだけ調べるんだな」

「あまり調べすぎちゃ駄目よ」

「はいはーい」


なぜかその時お父さんもお母さんも苦々しい顔をしていた。



5月17日木曜日。晴れ。

森さんは学校に来なかった。


「森さん、元気だったのに」

「心配だよねー」

「いじめが原因なんだろうね」

「・・・そうね」

「可哀想に…」

「ちょっとごめん、私ちょっと保健室行ってくる。頭が痛くてさ・・・」

「うん。お大事に」

「ごめんね」

「ついてこっか。大丈夫?」


僕は麻陽を保健室に送ったあと、花子さんと闇子さんに会った。

何か話をしているようだ。


「あぁ、校内見て回ってんの?」

「どうも」

「こんにちはぁー」

「そう。校内見てんのよ」

「大体覚えたよぉー」

「そうだ、ねぇアンタ。部活って何入ればいいかしら?」

「部活?」

「あのね。私は吹奏楽部に入ろうと思ってるんだけどー」

「あの・・・僕さ、部活やってないんだよねー、ハハハ・・・」

「・・・チェ。やってないのかー」


「でも、でも僕も吹奏楽に入ろうと思ってるんだ!」


「・・・そうなのー?」

「え…うん」


僕は入るつもりのほとんどなかった吹奏楽部に入ることになりました。

麻陽には、何て言おうかな…?


そんなワケで僕は麻陽にこう言った。


「僕さ、さっき先生にね『お前学校に変な本持ち込んでねぇよな?』って言われて横に居た男子に『センセー、こいつこの前、森さんの事ジロジロ見てましたー。やらしいです。』

 って言われて、『なぁキミ、可愛い女の子の沢山いる吹奏楽部においでよー』って先生に言われて強制入部させられた」

「あんたバカ?」



僕は今日、お父さんの部屋で不思議な事に気が付きました。


(あれ、なんでお父さんはそのまま僕に部屋を見せずに待たせてから見せたんでしょう?)


僕は1つの答えに達しました。【何か見せてはいけない物を隠した】

僕はお父さんの部屋の中を探すことにした。


「何してるんだ?」

「・・・あ、お父さん!僕に何か隠してる?」

「何を言っている、なにもないぞ」

「じゃあ、なんで、すぐに僕を部屋に入れてくれなかったの?」

「あぁ、仕事の書類を片付けていたんだ」

「・・・なんで花子さんの名前聞いたときに難しい顔したの?」

「・・・。珍しい名前だよな」

「誤魔化さないでお父さん」

「もう寝なさい!」

「・・・!教えてよ。何隠してんのか」

「・・・お前は知っちゃいけない。花子さんを、守りたいだろう?」

「守る?何のこと!?」

「もう、寝なさい」

「・・・」


その夜、僕はあまり眠れなかった。



5月18日金曜日。晴れ。

今日もいつも通り麻陽と学校に来た。

それに対して今日も森さんは来なかった。

でも、今日は花子さんに用事がある。


「花子さん」

「はい?」

「キミって、俺のお父さんの事知ってる?」

「え?どうして?」

「『鈴木(すずき) 夢影(むかげ)』っていうんだけど…」

「・・・知らない」

「やっぱりかー」

「知らない知らない知らない…知ってる?」

「ちょ、どうしたの?」

「知って…る?私、知ってるのかな…え?えぇ?」

「花子さん!」

「っ!…あぁ、ごめんなさい」

「い、いえ」

「ちょっと!アンタ、花子のこといじめないでちょうだい!」

「闇子ちゃん…」

「いじめてませんよー」


結論として、花子さんには何かあるみたいでした。

お父さんとは、どんな関係があるんだろうか…。



「来夢」

「ん?どうしたのお父さん」

「お前は、口が堅い方か?」

「・・・堅いと思うよ」

「なら安心だ。ついて来なさい」


僕はお父さんに呼ばれてお父さんの部屋に入った。


「花子さん、について?」

「そうだ」

「・・・聞かせて」

「結論から言うと花子は、死んでいる」

「え、なに?ちょっと待ってよ!」


お父さんは何を言っている?

花子さんが死んでいる?

そんな・・・人違いじゃない?


「オバケとは、強く『生きたい』って思うと、存在が蘇る、ということは知っているか?」

「うん…」

「蘇るのはその何年か後、しかも生前の記憶は無い、というのは知っているな?」

「・・・てことは花子さんは本当に…」

「『山田花子』は俺の同級生だ」

「!」

「花子は、俺達が中学2年生のときに、川で殺された」

「殺された…なんでっ!?」

「ここからは言えない」

「教えてよっ、そこまで言ったなら!」

「その真実を本人に教えると」

「そんなことしないよっ!」

「その存在は、【消える】。しかも自分だけはその存在を覚えている。つまり、周りの人は知らない、恐ろしい真実を自分だけ知っている、ずっとな」

「それは、辛い・・・」

「それが本当の呪い、だ」

「ごめんお父さん、もう、寝るよ・・・」

「・・・おぉ、お休み」


僕は、幽霊が苦手でもないのに怖くて、怖くてしょうがなかった。


5月21日月曜日。

部活動開始。そんなワケで練習中です。

僕、音楽の知識なんてほとんどないんだよねー。

男子だから僕はパーカッションになりました。

…叩くの楽しいなぁ。


「先輩。先輩。叩き方違います」

「あぁ、すみません」

「あまり力を入れて叩くと、音が汚くなっちゃうんです」

「・・・?そうなんですか?」

「汚くなるんです」

「・・・疑ってごめんなさい」

「いえ」


この子はパートの後輩「馬場(ばば) 柴乃(しばの)」。

テニス部に姉がいるらしい。しっかりした子で、年上なのに敬語になっちゃいます。

ちなみに、1年生に入った転校生です。


「来夢くーん!メトロノーム取ってー!」

「ん?」


声のした方に目を向けるとクラリネットを持った花子さんが手を振っていた。

その横にはフルートを隠し持った闇子さんもいる。


「ほら、そこの水色のヤツ!」

「はいはい、これでしょ?」

「ぐ、こっちくんな!ライム男!」


ライム男ってなんだ、という疑問はあえてぶつけなかった。めんどくさいので。


「闇子ちゃん、どうしたの?・・・あぁ!そっか!」

「そっか、ってどうかしたの?」

「闇子ちゃんね、フルートが恥ずかしいんだってー!」

「こらぁっ!花子おおおぉーッ!怒るよっ!」

「どうして恥ずかしいの?」

「え、その・・・だって、ホラ、似合わな・・・ぐぅ・・・もう、私の性格にあってないでしょっ!!!それだけよっ!!!なんか文句あるっ!?」

「・・・そう?」

「闇子ちゃん上手なのにー。ねぇ?」

「え、僕、聞いたことな―」

「(コソコソ)そこは上手って言うの!」

「―いけど、似合ってるし、大丈夫だよ・・・」

「(かああぁ)・・・フンッ!知らないわよ!ほら、花子、行こうっ!」

「はーい!バイバイ、来夢くんっ!」


騒がしい2人が去っていった。

もう学校には慣れたみたいでホッとした後になんだか切なくなった。

この楽しそうな少女が目の前から消える―そんなの信じられなかったから。


「先輩。先輩は・・・タラシなんですか」

「違うよ。うちのクラスに来たからちょっと仲良くなっただけだよ」

「ちょっと、ですか」

「柴乃ちゃん、もしかして僕と仲良くなりた―」

「冗談はやめてください」

「ごめんね」

「いえ」


あれ、僕達かなり変なコンビなんじゃ・・・。

あ、違った。変なコンビは僕と麻陽か。



今日も俺はお父さんと話をした。


「最近僕達、オカルト系の話しかしてないね」

「そうだな」

「・・・僕、吹奏楽部に入ったんだ」

「ん、お前音楽の成績「3」だろ?そんな音楽に知識ないよな?」

「友達に勧誘されたんだ」

「そういえば花子はクラリネットを吹いていたな」

「そうだよ。クラリネットやってる」

「・・・やっぱり俺の時代の、花子なんだな・・・」

「他の人であってほしいな・・・」

「その気持ちも解かるぞ」



今日はやっぱり気になって、夜中にお父さんの部屋に忍び込んだ。

すると、僕はお父さんの日記を見つけた。

表紙には「№37」と書かれている。

いまお父さんは45歳だから・・・。

45-37で8歳から書き出したのかな?

てことは、№5を探せばいいのかな。

さすがお父さん、小さい時からしっかりしてらっしゃる。


探すこと15分ほど。

「№5」の日記が見つかった。意外とアッサリだな・・・。


すると、とあるページには新聞が張り付けられており

『女子中学生、来栖川で水死』

という記事があった。

来栖川くるすかわとはこの辺にある川である。

その記事にはその水死してしまった女子中学生の顔写真が載っていた。


「・・・花子さん・・・?」


他でもない。この写真の人物は花子さんだった。

僕はめまいがしてるにも関わらずその場から動けなかった。

それもその記事の下にはちょっとしたメモがあったからである。

『幽霊は蘇ると悪霊になる可能性がほぼ100%である。(幽霊ノ事情・来栖出版)』

て、ことは、花子さんも悪霊になっちゃうんでしょうか・・・

『幽霊の事情』その本ってどこに・・・

この頃のお父さんって中2だから、僕の知る範囲だと思う・・・。

本・・・図書館・・・この辺って図書館は無いんだ―

学校の図書館!

そうだ、それだ!



5月22日火曜日。雨。

今日はイヤな予感がする。なんか、漂ってる気がする・・・

よしっ、今日は頑張るぞー!


「ら、来夢ッ」

「ん?麻陽?おはよ」

「・・・雨だね」

「どうしたの?最近元気ない―」

「私の事、最近ちょっと忘れかけてたクセに!」

「何言ってんの、ちゃんと覚えてたよ」

「そういう意味じゃなくて。・・・私寂しいよ」

「麻陽・・・ゴメン」

「こんなのワガママだけど。覚えてるなら、話しかけてほしいよ、気にかけてほしいよ。私は偶然じゃないと思う。・・・ほとんど一緒に育ってきたのは。幼馴染ってなんなんだろうね、来夢」

「ごめんね。麻陽の事、思い出させてくれてありがとう。幼馴染なのに」

「・・・忘れてたんだ」

「あ゛あああぁもう、めんどくさいっ!」

「こら、めんどくさいとは何だ!お前は何様だっ!そんなこと言うのはこの口か!」


そして麻陽は僕のほっぺをつねる。


「ほはふぁふぁひふぃ(幼馴染)、れふぉ(でしょ)?」

「・・・フンッ、深そうに言って、実は浅いこと言っちゃって!」

「麻陽もじゃんっ」

「アハハッ、そだねー!」

「今日、図書館に用あるから付き合ってよ!」

「オッケー!」


よしっ、今日は頑張るぞー!

あれ、デジャヴ?



図書館に来ています。


「で、なんで図書館なんか利用すんの?」

「いや、ちょっと調べたいことがあって」

「はいはい、オカルト少年」

「そこらで本読んでていいよ」

「うおおおおおぁ!ラノベ!わーおわーお!」

「うん、元気になってなにより」

「ねぇ、ところで最近来夢は何を調べてるワケ?」

「・・・山田花子さん。あの子について」

「・・・!キモオォォォォォ!ストーカー!変態!」

「幼馴染、でしょ?」

「なんでもそう言えばいいと思ってんじゃないでしょうねぇ!?」

「違う違う。・・・麻陽は、昔からクチが堅いよね」

「まあね。変態」

「うん。その呼び方はカチンとくるな。で、麻陽にだけ教えるけど・・・」

「変な情報とか要らないからね」


まあ、麻陽は、根は良いヤツなんだよね。


「怖い話って大丈夫だったよね?」

「私、怖いのは大丈夫だけど、なんかあんま好きじゃないんだ、ホントかなーって」

「・・・結果から言っちゃうけど。花子さんって実は・・・死んでるらしいんだ」

「え?アンタ大丈夫?」

「疑うならこれを見てみてよ」


僕はちょっと乱暴めに『お父さんの日記№5』をバサアッと机に出した。


「鈴木夢影―。来夢のお父さんの名前だっけ」

「うん、新聞の貼ってあるページ。そこ見て」

「・・・物騒なじけ―!」


麻陽は瞳孔を開いて、現実で見ると思わなかったがノートをファサッと落とした。


「何よこれ・・・意味わかんな―」

「何、してるの?ここで」


ガラッと音がしてその先には花子さんが立っていた。


「花子さん・・・。どうしたの?」

「・・・いや、たまたま通りかかっただけだよー」

「山田さん、私達ねぇ、図書館に参考書ってあったっけ?と思って来たの」

「確かなかったハズだよぉ」


僕は麻陽が話してくれてる間に日記をしまう。


「あれ?なかったんだー。図書館ってなんでもあると思ってたよー僕」

「ふーん、怪しい。なんか隠してない?」


僕は何となく隠しきれない気がした。


「花子さん、あなたは可哀想だ」

「!?来夢ッ!」

「なんのこと?」

「もういいよ麻陽。言おう」

「私・・・なにが可哀想なの?」

「花子さん・・・これを全部言っちゃったらあなたは消えちゃうかもしれない」

「来夢、消えるって何?」

「まず、いいから」

「・・・」

「あのね、ここでやるとあれなんで別のところで言おう?」

「・・・うん、分かったよ」

「傘、持ってる?」

「持ってるよ」

「じゃぁ行こう、僕についてきて?」


今日、花子さんはどんな結末を迎えてしまうのだろうか・・・



ザーザー雨とが打ち付ける。

そんな中をピチャピチャと3人で歩いていく


「今日は天気が悪いね」

「今日くらい晴れてほしかったなぁ、私、消えちゃうんでしょ?」

「アッサリとそんな・・・。ホントかどうか判んないじゃんっ」

「雨ってなんかマイナスな話になっちゃうね。・・・しりとりでもしよっか!はい、雨っ」

「め、め、め、めー?めだまー」

「まーゆっ、あ、ガのほう」

「ゆ、勇気」


そうすると急に花子さんが取り乱し始めた。


「え・・・勇気くん・・・?勇気君ッ!ごめんなさいっ!私、私ッ・・・!」

「!?」

「あ、ああ、あああああああああ、いやぁ・・・、あた、ま、痛い・・・!」

「山田さん大丈夫?」

「勇気君って…?」

「う、うぅぅ・・・。あ、ごめんごめん、・・・なんだったっけか?」

「いや、いいよ。ホラここ。着いたよ」


花子さんが大量に汗をかきながらも僕はその場所―来栖川に来た。



「来夢くん?どうぞ?」

「うん・・・」


僕たちは橋の下で話し始めた。


「花子さん、あなたは・・・亡くなっている。僕のお父さんの同級生だ。お父さんの名前は「鈴木 夢影」」

「・・・はぁ・・・。え、えへぇ、なんか、頭がグルグルする・・・」

「うぅ…。来夢。消えるのって辛そうだね」

「ごめんね。そして花子さんは、中2・・・ちょうど今。32年前にこの川で・・・」

「ぐぅ・・・!?いや…!ま、待ってぇ・・・。私、死んじゃってるんだ・・・?」


僕は日記を取り出した。


「花子さん、辛いと思うけど、僕、花子さんを守りたい」

「守る・・・?どういうこと?」

「このまま放っておいたら、花子さんは悪霊になってしまうんだ」

「・・・私は、悪いこと・・・しない、よ・・・?」

「詳しく調べていないからよくわからないけど、前にもこういったケースはあったらしくて、その場合、ほぼ100%悪霊になっちゃうそうです」

「悪霊・・・。私が知ってるのでは、怪我させたり、悪いことしたりするんだよね・・・」

「じゃあ、続けるよ」

「・・・うん。悪いこと、したくな、い・・・」

「何があったかはよく分からない。でも、花子さんはこの川で水死しています」

「ぐっ、あああああああああぁ!!!やめて、やめて!お願い!」

「来夢!やめて!」

「私・・・ま、だ、生きたい!折角蘇ったのに!私、よ、く解から、ないけど、悪いことして、死んでる、気が、す、るのっ!良いこと、全ぜ・・・してないっ、の!私はッ、闇子ちゃんとか、ひき子ちゃん、とか!クラスの、みんな!あなた達にも!してないっ、の!」

「来夢!お願い!」

「・・・でも、僕は君から優しくしてもらったし、色んな事を学んだ」

「待って・・・!学んだ、って・・・なによっ!?い、言ってよっ!」

「・・・それは」

「この、たった…1週間、で・・・私・・・なにか、し、た、かなっ?そんな事、した記憶、ないよっ!」

「・・・そんなことないよ」

「来夢!花子さんは納得がいかないんだよ!来夢だって、そういうことあるんじゃないのっ?やめてあげてよ!」

「・・・」

「やめてよっ!来夢っ!」


麻陽は人が苦しんでいる姿を見るのが大嫌いだ。

僕のしていることは花子さんだけじゃなくて、麻陽までもを苦しめている・・・。

僕は、ただ、花子さんを守りたい。それだけなんだ。

いや、違うっ!今、僕は、花子さんを・・・傷つけているのか?

僕はただ、ただ・・・!


「・・・ゴメン、花子・・・さん。僕、なんか間違ってた・・・。花子さんは悔しいんだね?・・・そうだね、僕はどうかしてたよ。なんか、僕って悪霊みたい・・・」

「い、いいの・・・。そんなこと、ない、から」

「来夢。私達2人で悪霊になるのを防いであげることってできないかな?たとえ、100%だとしても、納得いかないの!だって『ほぼ』なんでしょ?」

「・・・フフフッ。調べてみようか」

「あ、れ・・・?来夢くん、笑ったの、初めてな気が、する・・・」

「そうかなぁ?」

「そうそう、それちょっと思ってた」

「ぼ、僕だって笑ってるよ!」

「・・・無駄なポーカーフェイスね」


僕は、花子さんを守ってみたいと心の底から感じる。

それも、成仏させるのと違う方法で。


「僕達が、花子さんを守ってあげるよ」


激しく打ち付けていた雨がやけに爽やかに感じられた。


「山田花子編・後」はこの物語のホントのホントに最後らへんに書く予定です。

ここまで読んで下さってありがとうございます。

続きは時間がかかると思いますが、読んで下されば嬉しいです。

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