届かぬ恋
お経が唱えられ、木魚の音がどんどんと響き
時折鐘の音が聞こえる。
僕はその遠くにある音を感じながら。
夢を見続けていた。
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「よろしくね!」
初めて出会った時、君は母の横から離れない僕を外の世界へ連れていった。
「ほらこっちきてよ!」
「やめてよ、離して」
「いいから」
無理やりだったかもしれない。けどそれはとても楽しかったんだ。
暗く何もない世界に太陽が現れたかのようだったよ。
「へったくそ〜」
君にはずっと勝てなかったな。あの時にしたバトミントンを覚えてる?
全然勝てなくて僕が意地で挑み続けて、君がずっとニヤニヤしながら圧勝し続けたやつ。
君はどうでもいいと思っていたかもしれないけど。
こんなくだらない日常が唯一の宝物なんだ。
「負けた〜チクショー!」
そんな君に勉強だけ勝てた。
初めて勝てるものだった。今まで負け続けていたから、僕はそこを鍛え続けたんだよ、今ではさ、結構有名な大学入ったんだよ。
がむしゃらに努力して、し続けて。
今では日本でもトップだよ。
挫折なんて山ほどあった、けど君に勝てるものだって思ってたら不思議と乗り越えられたんだ。
……少し昔話をしよう。
「……ごめんなさい」
そうやって振られた後に君がきて。
「あちゃ〜女心が全然わかってない、さすがだねw」
そうやって君が煽りに来た時はかなり堪えたよ。
だけどそうやって君のことを考えていたから、告白が失敗したことなんて全然だった。
……けどあれは流石にどうかと思う。
「絶っ対足引っ張らないでよ!」
高校の体育祭で二人三脚をしたね。
ジャン負けで決めて綺麗に僕たちに決まった。
その時の君の顔は忘れられそうにないよ。
あの二人三脚では意外に僕たちが圧倒できたね。
「幼馴染の絆ってやつかな?」
なんて言ったら君が少し笑いながら引っ叩いてきた。
少しだけ耳が赤くなっていたのを覚えてしまっていたよ。
その時の横顔が可愛くて……凛々しくて。
「……よければなんだけどさ……文化祭一緒に回らない?」
夕暮れ時の教室で…二人きりの時だったね。
珍しく君がしおらしかった。思わず吹き出してしまったよ、すると君もいつもの調子に戻って
「うっさい、いいから回るよ!」
なんて言ってて。
その年からずっと一緒に回ったね。
毎年毎年くだらないことが起きたり、学校中が大パニックになるようなことしたり。
一生忘れられない。
「抜け出しちゃお」
なんて言って僕をまた連れ出した。
修学旅行初日の夜だった。どこからともなく現れて、攫いにきた。建物を伝って来ていてどこの強盗だなんて言い合ったね。思わず笑ってしまった。
けど……格好が良かった。
そこで惚れたのかもしれない。
……いや一目惚れだったんだろうな。
無意識か意識的か今はもうどうでもいいことだ。
大切なのは僕は君に恋をし続けていた。
きっと、これからもだ。
君はずっと待ってた。
僕はそれに薄々気づきながら目を瞑り続けた。
君に相応しい男になるために。
だけどもう君とは話せない。
ここにいるのは冷たくなった君の残夢だけ。
供養




