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俺の家にはメイドさんがいる

加筆訂正しました。(3月19日)

学校が終わると、俺はいつも教室で少しだけ雑談してから帰ることにしている。

部活に入っていない分、放課後の時間はかなり空いているからだ。


……まあ、今日はその相手もいないんだけど。


亮太も智樹も部活。

教室にはもうほとんど人が残っていない。


(なんかだるいな……)


今朝の雨のせいか、体が少し重い。

椅子から立ち上がると、軽くふらついた。


(さっさと帰るか)


鞄を肩にかけて、そのまま一人で教室を出た。


外に出ると、空気がまだ少し湿っている。

雨上がり特有の匂いが、ほんのりと鼻に残った。


帰り道には、小学生や中学生の姿がちらほら見える。

傘を振り回して遊ぶ小学生。交差点で立ち話をする中学生。


それをぼんやり眺めながら歩いていると、妙に落ち着いた。


(こういうの、平和って言うんだろうな)


そんなことを考えながら、家へと向かう。


俺の家はいくつもの会社を経営する、いわゆる金持ちの家系だ。


……とはいえ、それをわざわざ周りに言うつもりはない。


学校では、できるだけ普通に見えるようにしている。

よくいる男子高校生。そんな感じだ。

亮太と智樹は、親が経営者ってことくらいは知ってるけど——


(まあ、さすがにこれは想像してないだろ)


鉄の門をくぐる。


ギィ


重たい音が鳴る。


その先には、長いアプローチ。

さらに奥には三階建ての洋館が構えている。

左右には綺麗に整えられた庭。

奥には大きなガレージ。


……改めて見ると、やっぱりでかい。


(慣れって怖いな)


そんなことを思いながら中へ入ると、庭の奥で人影が動いた。


庭師の佐藤だ。


「おかえりなさい、遥斗様」


剪定ばさみを止め、軽く頭を下げてくる。


「ただいま。今も作業中ですか?」

「ええ。この時期は枝がすぐ伸びますから」


ふと足を止めて、庭を見回す。


ツツジの低木がきれいに並び、足元にはパンジー。

奥の花壇にはスイートピーとチューリップが咲き揃っている。


(……やっぱりすごいな)


「相変わらず綺麗ですね」

「ありがとうございます」


少し照れたように笑う佐藤さんを見て、思わず頷いた。


玄関の扉を開ける。


その瞬間。


「おかえりなさい、遥斗様」


聞き慣れたにこやかで明るい声が、すぐ目の前からした。


紗良が、丁寧にお辞儀をして立っている。


(……やっぱりこっちはこっちで違和感あるな)


学校では見せない、柔らかい笑顔。

()()()()()()()()だ。


蒼井紗良。

俺の幼なじみであり——この家のメイド。


「ただいま。紗良もお帰り。……てかさ、今日別に起こさなくてもよかったんじゃないか?」


そう言うと、紗良は少しだけ唇を尖らせた。


「別にいいじゃないですか……どうせ寝ようとしてたんでしょう?」

「いや、それは——」

「学校でしかいじれないんですから」


ぼそっと続ける。


「……仲良くしたっていいじゃないですか」


(ああ、拗ねてるなこれ)


珍しく弱いトーンに、思わず苦笑する。

家でこういう顔をするのは、結構レアだ。


「そもそも遥斗様が夜更かししてるから悪いんですよ」


すぐにいつもの調子に戻る。


人差し指を軽く振りながら、きっぱりと言い切った。


「たまには早く寝たらどうですか?」

「いいか紗良」


俺は真面目な顔を作る。


「夜更かしからしか得られないものがある」

「絶対ないです」


即答だった。


(はやいな……)


「生活崩すのはよくないですよ」


困ったようにため息をつく紗良。

言ってることは正しい。


(でもなあ……)


分かってはいるけど、やめる気はない。


「まあまあ」


軽く流して、そのまま部屋へ向かった。


その日の夜。


窓を開けると、ひんやりとした風が入ってくる。


(ちょっと頭痛いな……)


熱がこもっている感じがして、外へ出た。


バルコニーに出ると——


隣に人影があった。


紗良だ。


部屋着のまま、空を見上げている。


(……珍しいな)


少しだけ近づく。


「なあ紗良」


声をかけると、ゆっくりこちらを見る。


「この一、二ヶ月、幼なじみの()()してるわけだけどさ」

「はい」

「幼なじみって、実際なんなんだ?」

「突然どうしたんですか?そんな難しいこと考えて」

「今日学校で亮太と智樹に仲良いって言われたんだけどそうみえるか?俺はいつも喧嘩していて、仲はそこまでいいようには思われないと思ってたんだけど…」


紗良の動きが止まった。


「……本気で言ってます?」


「本気だけど」


しばらく沈黙。


紗良は口元に手を当てて、困ったような顔をした。


(なんだその反応……)


「俺、なんか変なこと言ったか?」

「いえ……」


小さくため息をつく。


「幼なじみっていうのは、物心ついた時から一緒にいる関係のことです」

「へえ」

「別に、こうしなきゃいけないってものはないと思いますよ」


どこか歯切れが悪い。


(……なんか引っかかるな)


でもまあ、とりあえず意味は分かった。


「そっか」


深く考えるのも面倒になって、そのまま流す。


「ちょっと頭痛いから寝るわ」

「……おやすみなさい。お大事にしてくださいね」


少しだけ優しい声だった。


布団に潜り込む。


(寝れば治るだろ……)


そう思いながら、目を閉じた。

更新ができるだけ早くなるように頑張ります!

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