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第7話 交野の与力衆

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 第7話 交野の与力衆

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 騎乗の稽古をしていると、来客があった。

「某千宗易と申します」

 茶湯の天下三宗匠!

 茶聖!

 千利休!

 ある意味、かなりの大物です。


「ようこそおいでくださいました、宗易さん。あ、魚屋(ととや)さんと呼んだほうがいいでしょうか」

 大広間で向かい合って座っている。

「これはこれは。どう呼んでいただいても結構にございます」

「それでは宗易さんと呼ばさせていただきます」

「はい。よろしくお願いいたします。交野様」


 久太郎さんが二本の刀を僕の前に差し出した。

「肥後同田貫と筑前左文字にございます。共に無銘ですが、よいものです」

「おおお! これが!」

 これが拝一刀や千石の同田貫! いやいや、それはドラマの中の話。

 でも天覧兜割りの同田貫ですよ!


 左文字はあの今川義元が持っていて、織田信長に渡った逸話がある刀だね。

 その左文字は、三好政長から武田信虎に渡り、そして今川義元、織田信長と渡った。

 歴史上の偉人が四人も関わった義元左文字は重要文化財だからこれではないけど、左文字というだけでテンションが上がる。


「はっ!? これ、高かったでしょ? いくらですか?」

「ハハハ。これは織田のお殿様よりの贈り物にございます」

「え……」

 村正や孫六ももらったのに、この二振りもくれるの。

 信長様~。僕は一生貴方についていきます~。ううう。


「それからこちらも」

 今度は甲冑が出てきた。

 え、これを身に着けるの?

 いいけど、この前立(兜の飾り)は派手じゃないですか……。


弥勒菩薩(みろくぼさつ)にございます」

「?」

 仏教のことはあまり知らないので、ごめんなさい。


「弥勒菩薩は未来仏と言われております。よく分かりませぬが、織田のお殿様より、前立は弥勒菩薩にせよと命じられましてございます」

 まさか未来繋がりですか? 信長様、お茶目すぎますよ。これ、もはや仏像がそのままついてるんですけど?


 甲冑をつけてみました。これで動くのは苦行です。

 特に兜が最悪です。めっちゃ重いし、バランス悪いですよ、これ。仏像ついてますから!

「お直しは不要のようでよろしゅうございました」

 前立を直してほしいです。

 奥さん、この甲冑も信長様からのプレゼントですってよ。

 オホホホ。

 重いんですけどーっ!


「それでは某はこれにて。今後も末永くお付き合いくださいませ」

「あ、それなら胡椒を手に入れてもらえますか」

「胡椒にございますか。承知いたしました。すぐに手配いたします」

 千宗易さんは帰っていった。

 僕はどんどん戦争モードです。

 できれば戦場に出たくはないのですが、信長様の命令に逆らえるほどの根性はありません。




「某、塙九郎左衛門尉正勝ばんくろうさえもんのじょうまさかつと申します。此度、交野殿の与力を命じられ申した」

 塙……塙、塙、塙……あ、原田備中守!

 なんで塙さんが僕の与力なの? 塙さんって信長様の連枝(れんし)衆(一門)ですよね!


「あの……信長様の連枝衆の塙様ですよね?」

「某の妹が殿のお側にお仕えしております」

「なんでそんな偉い方が僕の与力なのでしょうか?」

「某に殿の深謀遠慮は分かりかねます。ですが、殿から軍師殿をしっかりお助けするように申しつかっております。主に軍師殿に代わって兵を指揮させていただきます」

 ああ、そうか。

 僕のようなどこの馬の骨か分からない人に軍を任せることはできないから、信用できる一門の人を僕につけたんだ。

 まあ、そうだよね~。


「某のことは、九郎とお呼びくだされ」

「あ、はい。よろしくお願いします、九郎さん。僕は交野尾張掾時久です。時久とお呼びください」

「承知しました。時久様」

「呼び捨てで良いですよ。九郎さんのほうが年上ですし、連枝衆ですから」

「いえ。軍師といえば、殿の片腕も同然。立場は時久様のほうが上にございます」

 押し問答してもいいけど、多分無理なんだろうね。


 翌日、さらに与力が増えた。

「俺は前田慶次郎利益まえだけいじろうとします。何やら旨いものを食わせてもらえるとか。以後、よろしく頼み申す」

 慶次郎はエサで釣ったのですね……。


「某は山内猪右衛門一豊やまのうちいえもんかずとよと申しまする。以後、交野様に仕えさせていただきまする」

 真面目そうな人だ。イメージ通りだよ。


坂井久蔵尚恒さかいきゅうぞうひさつねと申します。以後、お見知りおきくださいませ」

 この十代の若者が、僕の知っている坂井久蔵だとしたら、これから僕が向かう姉川の戦いで戦死する予定の人だ。

 彼のことは信長さんに話してないから、偶然なんだと思う。


「僕は交野尾張掾時久です。右も左も分からない若輩者ですが、これからよろしくお願いします」

「早速ですが、旨いものを食わせてくれ」

「これ、慶次郎殿」

 前田慶次郎が食事を催促し、それを九郎さんが諫めた。


「ハハハ。いいですよ。九郎さんも含め、皆さんの歓迎会ということで、腕に縒りをかけて作りましょう」

「そうこなくっちゃな! ガハハハ」

 前田慶次郎のおかげで、家内が明るくなった。こういうのはいいものだ。


 さて、食事を作る前に、今の僕の与力についておさらいしておこうと思う。


 ・堀秀政(十八歳) 通称・久太郎 役目・監視と補佐 名人久太郎という異名をもち、下の人を使うのが上手い人

 ・塙正勝(三十一歳) 通称・九郎 役目・兵の指揮 信長様の連枝衆(一門)で信長様の信任篤い人

 ・前田利益(三十歳) 通称・慶次郎 役目・切り込み隊長 傾奇者!

 ・山内一豊(二十六歳) 通称・猪右衛門 役目・指揮官補佐 夫婦の絆で土佐一国を手に入れた人

 ・坂井尚恒(十六歳) 通称・久蔵 役目・世話役 この年齢で部隊を任されるくらい優秀な人


「おお、これが噂の交野料理か!」

「交野料理?」

「織田の殿を虜にする料理と、家内で噂になっておりますぞ」

「そ、そんな噂が流れているのですね」

 僕、信長様の料理番になってしまった?


「おお、旨い! こっちも旨い! 交野家に仕えて良かったぞ!」

 前田慶次郎は大きな体を使って、喜びを大げさに表している。

 本当に二メートル近い背丈があるんだね。しかも腕とかめっちゃ太い。

 あの腕で持った槍は、数人を吹き飛ばすんだろうなぁ。

 見てみたいけど、そんなところにいきたくはないかな。



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