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第5話 料理テロを起こす気なのです

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 第5話 料理テロを起こす気なのです

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 信長様が帰られると、久太郎さんがすーっと何かを出してきた。


「お着替えを」

 服と大小の刀でした。

 服は肩衣袴かたぎぬばかまという武士が普段着るものですね。

 織田信長の肖像画で緑色の服を着ているものがあるけど、あんな感じのもの。

 僕には丁髷はないけど、なかなか似合っているんじゃないですかね。


 刀を鞘から抜いてみた。

 見入られそうな美しさがある。

 やっぱり刀はいい。

「無銘ですが、備前物です」

「備前……」

 備前と言えば、備前長船。

 国宝がいっぱい。

 上杉謙信の愛刀も備前物だった。

「ああ、綺麗だ~」

 頬ずりしそうになるけど、なんとか我慢した。

 でも綺麗だ。

 刀はいい~。


「尾張掾様」

「はっ!? な、なんでしょうか?」

「殿(信長様)から屋敷が与えられております。これからそちらにお移りいただきます」

 屋敷も用意してくれたの!?

 織田信長様、いい人だね!


 久太郎さんは馬を用意したけど、僕は乗れません。

「歩いてもそう遠くはありませんが、出陣までに馬に乗れるように稽古しましょう」

「あ、はい」

 二条御所を出て久太郎さんと共に歩いて屋敷に向かう。

 馬は二頭あるけど、久太郎さんも歩いている。

 僕に合わせてくれているようだ。ごめんなさいね。


「………」

 と、遠いんですけど……。

 かれこれ一時間は歩いてませんか?


「もうすぐにございまする」

「はい」

 さらに一時間……。

 やっと到着した。

 久太郎さんの嘘つき。遠いじゃん。


 二条御所よりは全然小さいけど、ここが僕の屋敷か。平屋はこの時代のマストな建物。

 あれ、竹さんがいる。

「竹さんもこっちへ?」

「はい。こちらでお殿様のお世話をするように仰せつかりました」

「お殿様……僕のこと?」

「はい」

 気心が知れた人を置いてくれたみたいだね。信長様はそういうところに気が利く人なのかな。




 あれから毎日騎乗の稽古と、剣の稽古をしている。

 馬のほうはボチボチ、剣のほうは様になっていると久太郎さんに褒められた。

 古武術を習っていて良かった。


 ただ、僕は今そわそわしている。

 だって、一万貫のお金を信長様にもらったんだ。

 お金があるなら使いたくなるのが人の性だよね!

「ねえ、久太郎さん」

「なんでしょうか」

「刀、買っていい?」

「御所望の太刀を手配します。仰ってください」

「本当!? やったー!」

「胴ががら空きです」

「痛っ」

 喜んだ僕の胴に、久太郎さんの木刀が入った。マジで痛い。骨が折れちゃうよ。竹刀作ろうと、強く思った。


「尾張掾様。どのような太刀がよろしいのでしょうか」

 そう聞かれると、不思議と痛みを感じなくなった。


「えーっと、千子(せんご)村正とか、関孫六(せきのまごろく)とか、肥後同田貫とか、虎徹……はまだなかったかな? あとは左文字とか、国宝で言うと大包平(おおかねひら)とか、助包(すけかね)とか、それから―――」

 国宝とは言わないまでも、数打ちじゃないものが欲しい。

 久太郎さんが苦笑しているのを見て、ちょっと欲張ったかなと反省する。でも、欲しいと言うのはタダですから!


 痛い、痛いって、何を怒っているの!?

 その後、僕は久太郎さんにボコボコにされた。解せぬ。





 もう駄目だ。

 僕は革命を起こす!

「白いご飯が食べたいです」

「白いご飯ですか?」

 久太郎さんが首を傾げる。


「玄米から殻をとったものです。杵と臼はありますか」

「餅でも搗くのですか?」

 お米と杵と臼を用意してもらい、僕は無心で米を搗いた。

 そう、精米です。これで上手くいけばいいけど、駄目なら他のことを考えないといけない。


 これを炊いていく。

「始めちょろちょろ中ぱっぱ赤子泣くとも蓋取るな、ってね」

 ご飯を炊いている間におかずを作る。

 卵焼きと鶏の山賊焼き。


 山賊焼きといっても、調味料がない。

 だから生姜で臭い消しをし、塩で下味をつけ、味噌を造る時に出るたまりを醤油の代わりに使った。

 あとは熱した油にザブーン。

 いい感じに揚がるのを待つ。


 卵焼きはオーソドックスな塩味のもの。

 醤油もどきがあるから、それで食べればいいだろう。


 さて、でき上ったぞ。

 お米も炊けたし、梅干しもある。

「いただきます」

 米は白い。食欲を誘う白さだ。うん、柔らかい!

 炊き立てのお米は、甘くて美味しいよー。(泣)


 梅干しを……すっぱー! でも白米に合う!

 卵焼きはちょこっと醤油をつけて……ああ、美味いな。

 僕は甘い卵焼きも好きだけど、出汁の利いた出汁巻き卵も好きだ。目玉焼きでもいい。つまり、卵は嫌いじゃないってこと。


「久太郎さんも食べなよ」

「鶏と卵は……」


 ああ、そうか。この時代は『肉食禁止令の詔』がまだ効力を発揮しているのか。

『肉食禁止令の詔』というのは、六七五年(天武四年)四月に天武天皇が出した勅令だ。これは牛、馬、犬、猿、鶏を食べることを禁止したもので、戦国時代には一定の効果があった。


「『肉食禁止令の詔』は気にしなくていいですよ。僕の時代では、そんなものとっくに廃止されていたし、人間はバランスのいい食事をすることで、体を作ります。その弊害でしかない悪法と言っても過言ではないものなのですから」

「そ、そうなのですか……?」


 あとは久太郎さんが判断することで、僕が言えるのはここまでだ。


 さて、メインディッシュです。

 山賊焼きはモモの部分と、胸の部分の二種類を用意しました。


「あむっ……」


 うーまーいーぞー!

 これ、マジで美味しい。

 塩と醤油だけの味つけだけど、生姜がちゃんと臭みを消してくれるし、元々鶏肉が美味しいんだ。


「幸せ~♪」

 あむあむ、むしゃむしゃ。

 お腹いっぱいだ。


「「………」」

 久太郎さんと竹さんがガン見していました。僕の食事風景なんか見ていても、面白くないですよ。


「二人とも早く食べなよ。美味しいよ」

 二人に進める。久太郎さんは、まだ迷っているようだけど、肉を口に運んだ。


「「美味しい!」」

 はい、美味しいをいただきました!


「お米は玄米を精米しただけです」

「白米は公家の方々が、食べると聞いたことがあります」

 たしか平安時代から白米は食べられていたはず。武家でも将軍家や管領家くらいの家格なら食べていたかもしれないね。


「白米も美味しいのですが、それよりもこの鶏肉が凄く美味しいです」

「はい。こんなの初めて食べました」

 竹さんは泣いていた。おいおい……。

 久太郎さんも山賊焼きがとても気に入ったようで何よりです。


「卵も美味しいです」

「ああ、こんなに美味しいものだとは思ってもいなかったです」

 そうじゃろ、そうじゃろ。ッホッホッホ。

 僕はこの時代で料理テロを起こすんだ!



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