表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/25

第25話 手旗信号

 ■■■■■■■■■■

 第25話 手旗信号

 ■■■■■■■■■■


 坂井さんから聞いた限りだけど、長島から一向一揆が出てくればいくらでもやりようがあるのだけど、出てこないと攻撃がしにくい。

 さらに、兵糧攻めをしようとしても、海や川に囲まれた特殊な地形から完全な包囲は難しく、夜陰に紛れて兵糧を運び入れられているらしい。

 とはいえ、兵糧の絶対数は足りてないはずで、すでに餓死者が出ているはずだ、とも。あくまでも予想だと坂井さんは、補足する。

 そして、僕が出すべき答えは、結局のところ、信長様が何をしたいか、これに尽きる。信長様の考えは、攻撃による長島一向一揆の殲滅だ。

 ただ力攻めでは、これまでのように織田軍にも多大な被害が出る。そこで出血を最小限にした作戦の献策がほしい、そんなところだと思う。

 無理難題を……。それが出せなかったら、怒鳴られるでしょ? 怒られるんでしょ? 理不尽だ。

 誰か僕に助け舟を出してくれないだろうか? 一隻じゃなく、五隻でも十隻でもいいですよ!

 ん、舟……船かぁ……。

「坂井様。船に投石機は乗らないのですよね?」

「投石機を乗せると、安定せず船が傾いてとても安定しないのだ」

 支点が高いところにあると、船の揺れによって沈没しかねないらしい。だったら、安定させる工夫をすればいいんじゃないかな?

「船を横に二隻ならべ、安定させてみてはいかがですか?」

「二隻……なるほど、そういう手があったか!」

「海のような波があると逆に安定を欠くかもしれませんが、川ならそこまで波はないでしょうから」


 坂井さんは大きく頷いた。


「殿。さっそく手配いたしまする」

「うむ」

「あ、坂井様。櫓を同じように二隻の船の上に建てれば、鉄砲の攻撃もしやすいですよ」

「了解した、軍師殿!」


 坂井さんは信長様に頭を下げて腰を上げ、部屋を出たいった。


「時久」

「はい」

「投石と狙撃の指揮を執れ」

「え?」

「お主が考えた作戦だ。お前が指揮を執るのは当然だろ」

「……分かりました」


 九郎さんたちに丸投げして、僕は陸から見守らせてもらいます。


「ふん。どうせ貴様はおかにいて、九郎らに任せようと思っておるのだろう」

「え、なんで分かるんですか!?」

「このタワケが!」

「ひえっ!?」

 僕は頭を下げ、床に額をつけた。怖いです!


「陸にいては、指揮など執れぬであろう!」

「そ、そうでも……ないですよ……」

「なんだと? 申してみよ」

「手旗信号というものがあります。それを使えば、ほぼ正確に指示が出せます」

「詳しく!」

「は、はい……」

 通信が発達する前、赤色と白色の旗を使い、それで命令を伝えた手段があった。明治から大正にかけての日本海軍も使っていたものだ。

 予めパターンを決めておけば、正確に命令を出せたりする。


「すぐにその手旗信号を確立し、今回の長島掃討戦に使えるようにしろ」

「はい」


 岐阜城内の一室で、僕は手旗信号のパターンを決めていく。ローマ字のように、母音と子音の組み合わせにすれば、それほど多くのパターンにはならないはずだが、長島攻めまでに時間がない。だからもっと簡略化させておく。

「これが進め、これが後退、これが一番、これが二番、これが―――」

 考えられる行動と、部隊の組み合わせだ。

 行動は九郎さんたちに、状況に応じた行動を出してもらい、手旗のパターンを充てていく。

 部隊は一から十までを決めれば、あとは一から十の組み合わせで何番でも再現が可能だ。

「こんな感じでどうですか?」

「素晴らしいです! さすがは軍師様です!」

 久太郎さんが手放しで褒めてくれた。

「ですが、これを前線指揮官に覚えさせる必要があります。中には覚えられぬ者もいるはずです、そこが問題ですな」

 九郎さんの言うことももっともだ。こういうものは、教育が大事になるけど、戦国時代って脳筋全盛の時期だから、こういうことをおざなりにする人はいるだろう。

「その程度のことも覚えられない者に、指揮官としての資質はないと心得るが?」

「慶次郎殿の仰る通りです。何よりも殿(信長様)がそんな者を認めるとも思いません」

 久太郎さんが言うように、信長様がこの程度のことを覚えられない者を重用するとは思えない。

「それでは、信長様にこれらをお見せし、判断を仰ぎましょう」

「それがいいですね」

「そうですな」

 久太郎さんと九郎さんが同意し、そして慶次郎さんが頷く。


 さっそく信長様に手旗信号のパターンを提示し、実際に僕がやって見せた。


「これが一番隊、進め、になります」

 パターンの組み合わせで、色々な命令ができる。


「これは目視できない場所では使えませんが、それこそ櫓の上で目立つように指示を出せば、遠くからも見えると思います。ただ、海の上では極めて重宝する伝達手段です」

「長島一向一揆で貴様の部隊で使ってみよ」

「承知しました」


 そんなわけで、慶次郎さんは護衛として残ってもらうけど、久太郎さんと九郎さんを三雲城に帰還させ、指揮官たちへの教育をしてもらう。

 どうしても覚えられない指揮官には、それが分かる補佐をつけることにする。なにせ、この時代の識字率はかなり低い。現場指揮官クラスだと、字の読み書きが出来ない人もいる。教育というものが行き渡っていないことから、頭を使うことに拒絶反応がある人もいるんだよ。

 久太郎さんなら、なんとかしてくれる。そう思っておこう!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
大々的に利用するなら専門の通信士(旗を振る人と旗の動きを見極める人)の大量育成が急がれるな(母衣衆みたいな扱いになりそう)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ