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第23話 甲賀の問題

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 第23話 甲賀の問題

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 甲賀郡を歩いて回った僕は、三雲城を拠点にすることを決めた。

 三雲城といえば、六角六宿老だった三雲家の城だ。現当主は三雲成持で、三十くらいになる。

 その三雲成持は最後まで抵抗をしていたけど、今は甲賀から脱出してどこか他の地にいるようだ。

 もう一人、抵抗して逃亡していた山中長俊は、こちらの説得に応じて織田家に臣従した。

 そこで、僕は甲賀郡の国人・豪族・土豪・地侍たちを三雲城に集めた。


「皆さん、集まってもらい、感謝します」

 もっと少なくなると思っていたけど、結構多くの人が集まった。


「尾張掾様。この度の招集はいかなる要件にございましょうか?」

 いきなり本題に切り込んできたのは、隠岐家の……誰だっけ? あまりにもマイナーな人は、さすがに覚えていないんだよな。


「尾張掾様の言葉を遮るとは、失礼ですぞ。隠岐殿」

「これは失礼した。何せ某は田舎者ゆえ、作法というものを弁えておらぬ。どうか容赦してくだされ」


 多分、そんなこと思っていないんだろうな。織田に降ったとはいえ、僕のような子供に従う気はない。そう言いたいんだろう。

 九郎さんはそのことが分かっているのか、さらに口を開こうとするのを、僕は止めた。


「隠岐殿の謝罪を受け入れましょう」


 僕が甘いとばかりに、九郎さんが嘆息する。そんなにカリカリしないでください。

 隠岐殿だけではなく、集まってくれた皆さんは怖いのだと思うんだ。

 これまで半ば六角家に従ってきたけど、織田家はどんな家なんだろうか。どんな無理難題を言ってくるのか、不安なんだと思う。

 だから、僕は甲賀の人たちとの距離を詰めようと思う。向こうから近づいてくるのを待つのではなく、こちらから近づいていこうとね。

 そのために、僕は甲賀郡を見て回った。そして気づいたことがある。その気づいたことを、問題点を、解決してね。


「僕の認識では、甲賀は貧しい、と皆さんは思っておいでのようですが、それで間違いないでしょうか? 隠岐殿」

「……たしかに……米はあまり取れないゆえ……貧しいか、と」

「山中殿は、どうですか?」

「……尾張掾様の仰る通りにございます」

「望月殿は?」

「仰られる通りにござる」

「皆さんも同じ考えだと、思っていいですかね?」


 僕の問に、皆さんが頷く。


「私は甲賀で産業を興したいと思っています。皆さんに手伝ってもらえると嬉しいのですが、どうでしょうか?」

「「「………」」」


 あれ? 反応がない? 分かりにくい話だったかな?


「えーっと……」


 僕は困ってしまい、久太郎さんを見た。


「尾張掾様。もう少し具体的なことを仰らないと、皆が判断できないかと」

「ああ、そうなのですね」


 久太郎さんがため息交じりに言った。そんなに呆れないでください。


「産業といっても、いくつかあります」


 僕は人差し指を立てた。


「一つめは、畜産です。堺の商人に頼んで、豚という猪に似た家畜を輸入しました。それを飼い、食料として供給します」


 皆さんは微妙な顔をしている。なら次だ、中指も立てる。


「さらに、唐芋とジャガタライモの栽培です。これはさきほどの豚の飼料にもなりますが、人間が食べても美味しく、痩せた土地でも作れる作物なので、米を作ることができない場所で、これらを栽培してほしいと思います」


 今度は反応がいい。農作物の生産は、畜産よりも分かりやすいんだろうな。薬指を立てる。


「三つめは、磁器の生産です。これは、一つめの畜産で出たあるもの使います」


 ボーンチャイナと言われる磁器は、獣の骨を灰にして粘土に混ぜたものから作られる。だから食肉用の豚の骨を使うつもりだ。


「四つめは、硝石の生産です。皆さんも知っての通り、硝石は火薬の材料になり、かなり高額なものです」


 硝石は黒色火薬を作るために必要なものだ。今の世の中では、供給が需要に追いついていない。特に織田家では、鉄砲が武器の主流になりつつあるので、大量に必要になる。


「これらの生産を皆さんで分担してもらいたいのです。もちろん、無理にやれとは言いません。返事は今でなくても結構ですが、豚と芋については、数が限られていますので、早い者勝ちです。あと芋の栽培は開墾する時間と植える時期がありますので、早めに判断をしてください。」


 メリットとデメリットを提示し、判断は皆さんに任せる。

 豚の飼育は飼料となるものが必要になるので、最初は苦しいかもしれない。でも、芋の生産が軌道に乗ったら飼料問題は落ちつくはずだ。

 その芋だけど、唐芋はサツマイモのことで、ジャガタライモはジャガイモのことだ。ジャガタライモはインドネシアのジャカルタを経由して持ち込まれたことから、ジャガタライモと言われたようで、僕がジャガイモがほしいと頼んだら、これがきた。千宗易さん、正解! ジャガタライモが僕のほしかったジャガイモです!

 しかし、宗易さんは素晴らしいね。僕がほしいと思ったものを、しっかり持ってきてくれる。

 僕がオーダーしたもので、持ってこられなかったのは、トロナ鉱石だけくらいなものだ。まあ、トロナ鉱石は自作で代用ができるので、なくてもなんとかなるだろう。



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