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第17話 朝倉軍がやってきたぞ

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 第17話 朝倉軍がやってきたぞ

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 九月十三日。

 剣の稽古をしていると、怒鳴り声が聞こえてきた。

 この勝軍山城には多くの兵士が詰めているから、たまに争いごとが起こる。ただ、争いの多くは、上司が宥めて終わらせる。

 そこでは、九郎さんが慶次郎さんを怒鳴りつけていた。で、彼らの上司といえば……僕だ。


「……どうしたのですか?」

「前田殿が毎晩城を抜け出して遊女と遊び惚けているのです。多少のことは某も目を瞑りますが、この時期に城を抜け出すなどあってはならぬこと。それを注意しておったのです」


 鼻息の荒い九郎さんがまくし立てた。

 慶次郎さんが夜な夜な城を抜け出していることは、久太郎さんから聞いていた。城の中にいると息が詰まりそうだから、息抜きは大事。それに足軽たちを連れていってくれるから、足軽たちもいい息抜きになっていたはずで、僕も聞かなかったことにしていた。

 だけど、今は時期が悪いよね。信長様は摂津で戦をしているし、この勝軍山城もいつ朝倉が攻めてくるか分からないので備えている時期だ。九郎さんが怒鳴るのも分からないではない。


「とりあえず、二人とも僕の部屋に。はい、皆さんは解散」


 パンパンと手を叩き、皆を散らせる。

 慶次郎さんが何か理由があって城を抜け出している可能性は否定できない。そういうことをこの人目があるところで聞くことはできないから、場所を移した。

 慶次郎さんと九郎さん、そして僕の三人で正三角形を作って座った。


「理由を聞かせてもらってもいいですか?」

「そんなものござらん! 前田殿は昔からこうなのだ!」


 九郎さんのほうが一歳上で、この二人は年齢が近い。だからか、意識しているのかもしれない。


「そう頭ごなしに怒鳴らないで、慶次郎さんの話もききましょう」


 慶次郎さんは何も言わず、終始柔和な表情で自然体だ。九郎さんは真面目で、苦労人。九郎なだけに……ゲフンッゲフンッ。聞かなかったことに。


 九郎さんには、慶次郎さんの行動がどうしても不真面目で遊び惚けているように見えるだろうね。

 まあ、慶次郎さんが遊び人なのは、僕も否定はしないけど。


「慶次郎さん。極秘裏に動くのもいいですが、せめて僕と九郎さんには目的を告げてください。それで丸く収まりますから」


 慶次郎さんは懐から煙管を出して、プカーッと煙を吐いた。そういうところが九郎さんの癇に障るの分かってやっているでしょ。まったく……。

 九郎さんはグヌヌヌッと慶次郎さんを睨みつけている。


「お見通し、そういうことですかね」

「慶次郎さんなら、ただ遊び回っているわけじゃないと思っただけです」


 僕が未来からやってきたということは、信長様と久太郎さんしか知らない。

 九郎さんも慶次郎さんも、皆知らないこと。だからなんとなく目的があって、遊んでいるのだと思った。まあ、趣味と実益を兼ねてといったところだと思うけど。

 慶次郎さんはプカーッとまた煙を吐いて、説明をしてくれた。


「遊郭には、比叡山の僧兵らがよく現れるのですよ」

「なるほど、比叡山の動向を探っていたわけですね」


 比叡山の近くには京もあれば坂本もある。

 比叡山の僧が遊郭で遊んでいたら、そこから情報が取れるというわけか。


「それで、何か分かりましたか?」

「近々何かがあるとだけ。おそらくこの十日ほどのことでしょう」

「それはいい情報です。九郎さん、こういう理由ですから、少しだけ見逃してあげてください」

「……承知いたしました。されど、前田殿が連れ回している兵らからこちらの情報が漏れぬともかぎりません」

「そこ、どうなんですか?」

「あいつらは、某の手の者でござる」


 手の者というと、忍者かな。前田慶次郎の出身家は甲賀の滝川氏だから、忍者が配下にいても不思議ではない。


「分かりました。ですが、時期が時期ですから、他の人たちが不満に思うかもしれません。そこら辺に配慮してください」

「承知」


 ふー。これで一件落着。さて……。


「九郎さん。比叡山の動きが活発化しているということは、朝倉も近々近江へやってくるはずです。索敵を密にするように森さんに連絡してください」

「はっ!」




 九月十五日。

 城内が慌ただしい。朝倉軍が椿坂峠を通って近江に入ってきた。織田勢力圏の小谷城に、押えとして三千を置いて琵琶湖を西回りに進軍している。

 琵琶湖の北側や西側は、まだ織田家に降伏していない体をとっているのは、今更言う必要はないかな。


 小谷城の押えに置いている朝倉軍三千には、雨森清貞がついている。そこから情報を抜こうというのだ。

 こちらに向かっているのは、およそ一万七千。概ね予想通りの数だけど、それでも多い。

 そんな中、僕は工房に向かった。


「ライフリング鉄砲は二十挺できました」

「火薬一体型円筒弾は二百発を用意しております」


 ライフリング鉄砲の強度は変わりないけど、とりあえず連続で十発は発射できる。

 そして何よりも、通常鉄砲よりも射程距離が長くなっているのが特徴だ。

 通常鉄砲と通常弾は、一町ほどが有効射程距離。それ以上になると一気に威力が落ちるし、命中精度もがた落ちになる。

 それに対してライフリング鉄砲と円筒弾の組み合わせだと、二町以上の射程距離になる。命中精度もかなり高いというのが、これまでの実験で分かっている。


「皆さん、ありがとう。これからも良い物を作ってください! 期待しております!」


 鉄砲を撃つ時、腕で支えていたものを肩で支えるように銃床を大きくした。木の部分の改良だけど、これだけで固定しやすくなり、命中精度がかなり上昇している。

 多少重さが増したけど、紐をつけて肩からかけられるようにしたから、持ち運びはしやすくなったはずだ。


 あと、僕のところでは足軽全員に背嚢を配っている。それで個人で食料を背負って移動ができるため、輜重隊を動かす頻度を低減させられる。


 今回の戦場は坂本や森さんの宇佐山城付近になるから、日帰りできる距離だ。物資はそこまで必要ではないことから、移動速度重視にしている。



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