第14話 野田城・福島城の戦いが始まったのか
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第14話 野田城・福島城の戦いが始まったのか
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平和な時間だ。
竹さんが作ってくれた料理に舌鼓を打ち、少し働いて、剣術の稽古をし、大いに寝る。このような平和な日々が続いてほしいものだ。
「時久様。殿がお呼びです」
久太郎さんに声をかけられ、信長様のところに。信長様の前に座ると、書状が差し出された。開けて読んでみるけど、この時代の人はこの文字を読めるのだろうかと首を傾げる。
時間をかけて解読していると……。
「石山本願寺が三好三人衆の上陸を手助けした」
ああ、なるほど。はぁぁぁ……石山本願寺も面倒なことをしてくれる。おかげで僕の平和な時間が終わってしまい、それどころか一向一揆との戦いに駆り出されそうだよ。
「問題ない。そもそも石山本願寺が動くという想定をして備えていたのだ。多少の誤差程度は修正すればいいのだ」
おおお、さすがは信長様だ! 僕は信長様にどこまでもついていきます!
「儂は岐阜に帰る。二条御所には細川兵部大輔と明智十兵衛が詰める。時久は儂の指示があるまで、ここを動くな」
「はい。動きません!」
義昭の命令があっても無視します! ガン無視です!
「時久は分かっているな」
「はい。ですが、すぐにできるかは分かりませんよ」
「いずれで構わん」
僕は深く頭を下げて了承した。
信長様は岐阜へと帰っていかれた。
いったいどういった策を用意しているのか。ちょっとワクワクする僕がいる。
さて、僕は僕で信長様に頼まれたことをしますか。
この勝軍山城には、鍛冶場がある。鍛冶場といえば刀だけど、ここでは鉄砲を作っている。
もちろん、ただの鉄砲ではない。今、この日本にある鉄砲よりも性能を向上させたものを造っているのだ。
僕から鉄砲の話をしたことはない。だけど、京の屋敷に入り浸る信長様に、鉄砲のことについて聞かれたことがある。あれは武器としてもっと向上するはずだと。
さすがは信長様だ。鉄砲がどんどん進化する未来が見えている。だから未来の鉄砲について教えたら、それをできる範囲で再現しろと命じられてしまった。できる範囲と言われても、僕は鉄砲なんか造ったことないからできるかは分からない。
でも、僕が生き残るための力になると思ったので、やることにした。
鉄砲はこの戦国時代を終わらせた武器だと僕は考えている。だから、その構造はある程度記憶している。
それに火薬も、黒色火薬と無煙火薬の作り方を覚えている。
それらの知識があっても、この時代の技術力では造れない可能性はある。
知識はあくまで知識でしかない。技術を伴わない知識は、宝の持ち腐れと同じことだからね。
鍛冶職人たちには、僕の知識を職人の技術力で実現してもらいたい。
ただ、時間はかかりそうだから、志賀の陣には使えないかな。それが残念でならない。
僕は毎日鍛冶工房に立ち寄り、職人たちと意見を交わしている。
彼らは数学や物理の知識はないものの、長年の経験や手先の器用さによってとても繊細な仕事をする。それは目を見張るべきことだと、僕は思う。
どんな精密機械でも、一流の職人の技には敵わない。それを体現するような人たちだ。尊敬の眼差しです。
現在の鉄砲で一番問題になるのが、雨の中では使えないことだ、と信長様は言った。
だから雨の中で使えるように工夫をするのが、最初のこと。
これはそこまで難しいことではなく、それほど職人の手を煩わせるものではない。
火縄を木綿に変え、にかわと樹脂でコーティングする。これで火縄の火が消えにくくなる。
あと火薬が雨に濡れると爆発しなくなるので、こちらは油紙を使用して改善させた。
ただ、油紙を使うと銃身の中にゴミが残りやすい。清掃しやすい構造に変えなければいけない。これには少し時間がかかるだろうが、できないものではない。
職人たちに頼んだのは、火縄銃の構造を単純化して掃除しやすくするのと、ライフリングを切ること。
構造のほうはそこまで難しくはないけど、ライフリングは苦戦している。あの溝を切るのに、かなり手古摺っている。旋盤があればいいのけど、今はないものねだりだ。職人たちで試行錯誤して完成させてもらおう。
「途中までは良かったのですが……」
ライフリングが五センチくらいついているものを見せてもらった。
「溝切の強度が足りないようで、途中で潰れてしまいます」
「それなら、溝切の硬度を上げましょう」
鉄に加えるものにより、硬度はかなり変わる。そこで色々な金属を取り寄せることにした。
そんな時は千利休さん! じゃなかった、千宗易さん!
「色々な金属でございまするか」
「はい。南蛮でも明でもどこのものでもいいので、色々取り揃えてほしいのです」
「お時間をいただければ、揃えてみせましょう」
「はい。お願いします」
値段はいい値になってしまうけど、しょうがない。この時代の商品の流通には銭がかかるからね。
最悪は信長様に泣きつこう。
八月十四日。
物資が続々と運び込まれてくる。
千宗易さんに頼んだ金属もあるけど、これは信長様の命令で運び込まれている戦略物資がほとんどだ。
食料とか武器防具、その他もろもろ。数カ月の籠城が可能な量の物資になる。
信長様はこの勝軍山城と宇佐山城、そして小谷城を対朝倉・比叡山の防衛拠点と定めて、物資を運び込んでいる。
僕の勝軍山城もそうだけど、宇佐山城でも小谷城でも城の改修が進められている。
宇佐山城は森可成、小谷城は秀吉が城主をしている。僕は二人と連絡を密にして、朝倉の動きを監視しているんだ。
八月十六日に三好三人衆が動いた。
幕府方の三好義継の古橋城を攻めたのだ。三好義継は守りを固め、三好三人衆の攻撃を凌いだ。凌げばなんとかなると三好義継は信長様に言われていたので、亀のように城に籠って耐えた。
籠城三日目のことだ、幕府方の松永久秀と畠山秋高に後背を突かれた三好三人衆は、少なくない被害を出して撤退した。
三好三人衆は、野田城・福島城に入って、防御を固めたと報告があった。
史実では、古橋城は大きな被害を受けたはずだけど、今回は古橋城の改修が行われ、城兵の数がかなり多く配置されていたことで守り切ることができた。
これも信長様が事前に対策していたおかげだ。
信長様はその資金力を生かして、できる限りの対策を行っていた。これができるのは、経済というものをちゃんと理解している信長様だからだろう。




