9話 「腕」
「じゃあ私から引きますねっ!」
理樹の持つカードを稚奈が引く。
ひよりの持つカードを理樹が引く。
稚奈の持つカードをひよりが引く。
3人の中に会話はなかったけれど、稚奈はずっと笑っていた。
「私のあがりですね!」
ばばぬきは稚奈が最初にあがり、最後は理樹だった。
そのほかにも色々とトランプで遊んでいたが、そろそろ夕食の時間。
「さ、そろそろ自分のベッドへ」
理樹はもう一度ひよりへ手を差し出した。
でもひよりは向うをむき、やはり1人で立ち上がった。
またフラフラと・・・でも向かうのは誰も寝てないベッド・・・
「手かすよ・・・?大丈夫・・・?」
「いいんだよ。」
愛想のない奴だな。なんて思いながらも心配そうな目で見ていた。
ひよりの体はグラリと傾いた体がとっさに動く・・・
「っ・・・。」
後ろから両手でひよりと床との衝突を守った・・・はず。
理樹の腕が、こんな自分をしっかりと守ってくれたのだ。
ひよりは俯いている・・・。悪い事をした気分だ。
でも、すぐ後ろから拍手が聞こえてきた。
「すごいです・・・ひよりさん、大丈夫でしたか!?」
稚奈も心配して駆け寄ってきてくれた。
「ごめんね、大丈夫。私、どうかしてたみたい・・・・
改めてヨロシクね、稚奈ちゃん。」
稚奈はにこりと笑った。3人ともにっこりと。
でも、本当にひよりは心を開いたわけではない。
そんなつもりは全くない。
でも、こうしてないといつか自分は1人になってしまうのではないか、そう不安だっただけ。




