16話 「保育所」
とりあえず病棟の外に出てきた。
ひよりはその場に立ち尽くした・・・。
「やだ・・・うそ・・・どうして・・・?」
目の前には保育所がもうすでに崩れていた。
そんな・・・やっぱり静かに崩れてゆくのか。
ひよりはボロボロと大粒の涙を流した。
「どっどーしたんですか!?ひよりさん!」
稚奈はとても心配している・・・。
ひよりは両手であふれ出る涙をぬぐいながら言った。
「私の・・・思い出の・・・大事な・・・保育園・・・!」
「え・・・?」
昔、ひよりはまだ親が全然仕事なんて出来なかったころ。
ここである1つの約束をしたのだった。
「今度は此処で会うからな。」
そう言うのはひよりの父親。もう家族のもとへはいられない。
出張のつもりが向こうの会社で大変気に入られ、無理矢理転勤することになった。
でも3人で暮らせる大きな家を買うのにもお金がかかる。
父親は家族を養うために孤独という道を選んだのだ。
「ひよりの保育所の前なのね。」
ひよりも父親も本当は離れ離れに暮らすなんて考えられたもんじゃない。
本当はいつまでも3人で仲良くいたいのに・・・。
「長い間別れて暮らすけど、大丈夫だよな?だってパパもママもひよりも・・・みんな家族なんだから。」
「うんっ。でも、大人になってこの保育園無くなったらぁー?」
「その時はもう会えないかもな。ははははっー。」
この会話を最後に、父親とは会っていない。
ゴゴゴゴ・・・赤い屋根の家が大きな音をたてて崩れ落ちた。
「人が・・・下敷きにはなってないんでしょうか・・・・!?」




