13話 「涙」
いつのまにかひよりは寝てしまったようだった。
ひよりはさっきの事は忘れていた。
「あれ?どうしてカーテンしめて・・・あっ・・・。」
カーテンを開けて思い出した。そうだ。理樹と自分はけんかしたんだった。と
寝台の上に理樹の姿はなかった。でも、紙切れが1枚置いてあった。
そこに書いてあった文字は簡単な言葉だった。
たった5文字の簡単な言葉。
「 さ よ う な ら 」
それを見てひよりはキュウンとなった。
今まで近くにいた理樹が自分の前からいなくなったのだ。
そのときひよりは解った。私は・・・
「理樹の事が好きだったんだ・・・」
急に涙があふれてきた。こらえてもこらえても大粒の涙はこぼれてくる。
こんなに空は晴れているのに。
大声では泣けない。でも、大声で泣きたい気分。
「泣きたいのに・・・泣けない・・・。」
涙はちゃんと流れているのに、ひよりはそんなことに気づいていなかった。
理樹はどこへいったのだろう・・・。
気がつけば稚奈の姿も消えていた。そんなのひどいよ。
私1人を残して・・・でもこれも自分のせいだ。
ひよりは唇をかみしめ、こぶしを握りしっかりと立った。
理樹のベッドにばたん。
理樹の匂いがする。優しいにおい。懐かしい気がする。
もう一度嗅ぎたい匂いだよ。
「ごめんなさい・・・そう言えばよかった。」
2日たっても2日たっても1週間たっても理樹の姿はなかった。
どうしてだろう、もう会えないかもしれない。
暇で暇で仕方ないけれど、ひよりは1人窓の外を見る。
ここのところ全然食べ物を口にしてなかったから痩せ細り、かなりつらい。
食べなかったのではない。食事に温かみが無かった。
1人の食事はいくら温めたってすぐにさめてしまう。
そのことをひよりは知った。
「気分転換・・・」
細くなった腕で無理やり体を支え、車いすに乗る。
前は少しくらい歩けていたのに、食事をあまりとらなくなった今、立つこともままならない。
哀しくなる、さびしくなる、恐くなるけど病院の庭は落ち着く。
病院の庭へと向かう。
いつもは理樹が押してくれていた。
でも1人だけとなるとコントロールが難しく、とても動けたもんじゃない。
廊下、人が多くてなかなか進めない。どうしてだろう。
いつもは人なんていないのに。
「っ・・・」
ひよりは視線の先に懐かしい影を見つけた。
「り・・・ぁ・・・!?」
理樹の姿。その姿を呼ぼうと思った時だった。
稚奈が居た。理樹におぶられた稚奈が。
「・・・。」
ぽかんとその場に座っていた。しばらくずっと。
2人は平気でひよりの横を通り過ぎて行った。
悔しい。どうして、そうだ。さっきごめんねと言えばよかったのだ。
もう嫌だ。寝たい眠たい。何もしたくなくなってきた




