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  作者: 谷山沙羅
13/18

13話 「涙」

いつのまにかひよりは寝てしまったようだった。

ひよりはさっきの事は忘れていた。


「あれ?どうしてカーテンしめて・・・あっ・・・。」


カーテンを開けて思い出した。そうだ。理樹と自分はけんかしたんだった。と

寝台の上に理樹の姿はなかった。でも、紙切れが1枚置いてあった。

そこに書いてあった文字は簡単な言葉だった。

たった5文字の簡単な言葉。


「 さ よ う な ら 」


それを見てひよりはキュウンとなった。

今まで近くにいた理樹が自分の前からいなくなったのだ。

そのときひよりは解った。私は・・・


「理樹の事が好きだったんだ・・・」


急に涙があふれてきた。こらえてもこらえても大粒の涙はこぼれてくる。

こんなに空は晴れているのに。

大声では泣けない。でも、大声で泣きたい気分。


「泣きたいのに・・・泣けない・・・。」


涙はちゃんと流れているのに、ひよりはそんなことに気づいていなかった。

理樹はどこへいったのだろう・・・。

気がつけば稚奈の姿も消えていた。そんなのひどいよ。

私1人を残して・・・でもこれも自分のせいだ。

ひよりは唇をかみしめ、こぶしを握りしっかりと立った。


理樹のベッドにばたん。

理樹の匂いがする。優しいにおい。懐かしい気がする。

もう一度嗅ぎたい匂いだよ。


「ごめんなさい・・・そう言えばよかった。」


2日たっても2日たっても1週間たっても理樹の姿はなかった。

どうしてだろう、もう会えないかもしれない。

暇で暇で仕方ないけれど、ひよりは1人窓の外を見る。

ここのところ全然食べ物を口にしてなかったから痩せ細り、かなりつらい。

食べなかったのではない。食事に温かみが無かった。

1人の食事はいくら温めたってすぐにさめてしまう。

そのことをひよりは知った。


「気分転換・・・」


細くなった腕で無理やり体を支え、車いすに乗る。

前は少しくらい歩けていたのに、食事をあまりとらなくなった今、立つこともままならない。

哀しくなる、さびしくなる、恐くなるけど病院の庭は落ち着く。

病院の庭へと向かう。

いつもは理樹が押してくれていた。

でも1人だけとなるとコントロールが難しく、とても動けたもんじゃない。



廊下、人が多くてなかなか進めない。どうしてだろう。

いつもは人なんていないのに。


「っ・・・」


ひよりは視線の先に懐かしい影を見つけた。


「り・・・ぁ・・・!?」


理樹の姿。その姿を呼ぼうと思った時だった。

稚奈が居た。理樹におぶられた稚奈が。


「・・・。」


ぽかんとその場に座っていた。しばらくずっと。

2人は平気でひよりの横を通り過ぎて行った。

悔しい。どうして、そうだ。さっきごめんねと言えばよかったのだ。

もう嫌だ。寝たい眠たい。何もしたくなくなってきた


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