12話 「手紙」
「ねぇ・・・ねぇってば!」
目を覚ますと、そこは見慣れた天井。
病室の中だ。よく見ると、自分の腕は理樹が握っていた。
「どうして・・・どうして階段へ突っ込んだんだよ!僕、あんなに止めたのに。」
「止めた・・・?」
よくよく見れば、理樹の顔は今までの顔より恐い顔をしていた。
「僕は止めたのに、何かつぶやいて・・・聞いてなかったのか!?」
「・・・ごめんなさい、覚えてない。」
「ふざけるな!」
理樹が急にどなった。
稚奈は自分のベッドで顔をうずめている。
理樹の様子がおかしいのがわかったかのよう。
「どうしてそんなことを・・・どうして!?ねぇ、何かあるんなら・・・」
「よけいなお世話。うるさいよ。」
回りの空気は一瞬にして凍りついた。
稚奈はすくりと立ち上がり、部屋から立ち去った。
行けない雰囲気だと幼いながら悟ったに違いない。
「私には居場所が無いから。苦しいから。」
「・・・そうか、居場所から逃げてるもんね。」
「へ・・・?」
激しい口論はまだまだ続く。
理樹は握っていたひよりの手を振りはたいた。
「そんなに稚奈が気に入らないの?」
「・・・別に」
本当は稚奈の事を気に行ってはいなかった。
最初から嫌いだった。でも向こうは私の事を思ってくれている。
どうやってそれに答えたらいいかがひよりには解らなかった。
「差別するなんて酷すぎるよ!勝手にしてろ。」
理樹は自分の寝台に座るとカーテンを閉めた。
ひよりは解った。きっと理樹は怒っている。
理樹はもう私をどうでもいいと思ってるんだ。
そして理樹は・・・それだけは絶対に嫌だ。なんとかして・・・
ひよりの頭の中で沢山の物事がごちゃごちゃと混じる。
ピンと浮かんだので体をのそのそと起こし、メモ帳になにかじのじのと書き始めた。
「理樹へ
ごめんなさい。私が悪かったです。
稚奈ちゃ 」
いきずまった。この先がどうしても書けない。
ひよりの右手がそれを拒む。でも、書かないといままでの退屈な生活に戻ってしまう・・・それもいやだった。
紙はくしゃくしゃに丸めて捨てた。
また窓の外を見た。やっぱりあの人は来ないのだね。




