10話 「散歩」
「大丈夫ですか?」
心配してくれる稚奈の声が聞こえる。
あれから数日後、ひよりは体調を崩し、熱が急に上がった。
「だるいですよね・・・何か持ってきましょうか?」
稚奈は部屋を飛び出て、飲み物を持ってきてくれた。
こうしてそばで見てくれる人がいると落ち着く。
稚奈の方が自分よりよっぽど大人っぽいのではないか。ひよりはそう思った。
「すぐよくなりますよぉ!どこかの患者さんから菌を貰ったかもしれませんねぇ。ふふふ」
稚奈はにこりと笑うと小さな声で囁いてくれた。
「何かあったらいつでも言ってください。」
自分のベッドへさっさと戻って行った。
ひよりはやっぱり窓の外をのぞく。
こんなときでさえ・・・いえ、それはただのわがままでしかないのですから。
「あ、おはようございます!やっとお目覚めですか?」
理樹に稚奈が話しかける。理樹はにこにこと笑いながら喋っている。
できれば2人の会話に混ぜて欲しいけど、いまはそんな元気が無い。
「大丈夫?ひよりちゃん。」
「大丈夫」
「そーですよー私が付いてますから!」
そんなに自分は情けなかったかと少し笑いたい気分になった。
でも、今こんな空気で・・・その気持ちはその空気と一緒に飲みこんだ。
「元気はそれなりにあるみたいですよ。体はだるいそうですが。」
「そっか・・・あとで散歩行こうよ。みんなでさ」
賛成。理樹と稚奈は2人でひよりを車いすに乗せ、庭へと向かった。




