プロローグ
その日は、いつもと変わらない普通の日だった。
みんないつも通り教室で過ごしていた。
「なぁ、今週のジャンプ読んだか?!」
「あぁ、読んだ読んだ。まさか、あいつ生きてるとはなー」
「そうだろ?俺も完全に死んだと思ってたんだ!」
「スタバの新作見た?むっちゃ美味しそうじゃない?」
「わかる〜私も飲みたいと思ってたんよー」
「部活終わったら皆んなで飲みにいかん?」
「賛成ー」
「ここわかんねぇから教えてー」
「オッケーどこ?……あーそれは、この公式に代入すれば一瞬。」
「お、まじか!ありがと。」
「つむぎぃー授業退屈で死にそうーなんか面白い話してー」
「そんなの、急にはないよ。」
「えーつまんないのー」
いつもと変わらないみんなの話し声。
「よーし、授業始めるぞ。早く席につけ。」
「やべ、もう来た。」
ガラガラと少したてつけの悪い扉が音を立てて開き、物理の先生が入ってくる。その声を聞いて私を含めたクラスメートたちは自分の席に着く。
「じゃあ、前回からの復習からするぞ。」
私はノートを開き、先生が雑に書きつける板書を写す。かなり後ろの方なので、黒板を見る視界には、授業開始から数分も経ってないのに机に突っ伏して寝ている人や机の下でスマホゲームをしている人、退屈そうにあくびをしている人が映る。
「……物体の位置によって決まるのが位置エネルギー。その蓄えられたエネルギーだけ仕事ができるから、潜在的に仕事ができるエネルギー、ポテンシャルエネルギーとも呼ぶ。ま、要するに滑り台から滑る時、速度が出る原理だ。」
いつもと変わらない風景だった。その時までは。
「な、なんだ?!」
「えっ?」
「なにこれ?!」
「きゃっ!」
教室の床が突如としてまばゆく光りだす。最初はなにか円を書いているようだったが、その光はますます強くなっていきそれも分からなくなっていった。あまりにもまぶしくて、私は目を閉じた。