プロローグ
初めましての方は初めまして。お久しぶりの方は本当にありがとうございます。
小説自体は書いていたのですが納得がいかず書いては消してを繰り返していた内に書く楽しみというものを忘れてしまい、ならば初めて書いたときのように小難しいことを考えず自由に書いてみよう。と思いこの作品を書き始めました。短くなるか長くなるかは分かりませんがどうぞよろしくお願いします。
またR15制限は竜の血という言葉通り、血なまぐさい話が出てきそうなため設定させていただきました。
「お父様、竜の血が飲みたいわ」
またお嬢様の我儘が始まった。前回は聖人の心臓を食べたら日の下を歩けるようになると言う眉唾物の噂話を信じ、一族の半数を犠牲にしながら入手したものです。
まあ、結果噂は事実でお嬢様は吸血鬼としては七番目となる日光を克服したお方になられました。
さて、今回はどんな噂を聞きつけてしまったのか。
「……アイリスよ、今度はどうしたというのだ」
「あら、お父様。聞こえませんでしたの?私は竜の血が飲みたいと言いましたの」
ああ、旦那様が頭を抱えてしまいました。しかしその気持ちは分かります。竜、それはこの世界において最上位の生体。人間の突然変異である聖人より遥かに強大な存在です。聖人一人の心臓を入手するのでさえ一族の全滅を覚悟したというのに。竜の血をは……。お嬢様は私たちを滅ぼしたいのでしょうか。全く嘆かわしいです。
「ジュンターが竜の血を飲むと老化が止まると言っていたの。私はあの人が蘇るまで老いたくないのよ。ねえ、いいでしょう?」
「ジュンター! また貴様かっ! アイリスよ、我らの生の長さは知っておるだろう?今一度考えなおしてくれないか。な?な?あとジュンター、貴様は後で書斎に来い」
おや、私に飛び火してしまいました。しかし、これは困りました。私はお嬢様に面白い話はないかと聞かれて隣の王国が存続していた時に聞いた話をテキトーに話していただけなので記憶に残っていないのです。なので無関係ですね。
「お父様、私達の寿命は知っておりますわ。だけれどあの人が転生してくるまでどれほどの時間が経つのかわからないでしょう?だとしたら私は今のうちに不老になっておきたいのよ。あの人の前に出て行ったときにヨボヨボのお婆ちゃんなんて嫌よ」
「しかしだなアイリスよ、あ奴が復活するという保証はないのだろう?その不確定なことのために一族がまだ復興していない今そのようなことはできん。今回は諦めなさい」
「あら、あの人が転生するといったのだから必ずするわ。あの人はできない約束はしない人なの。ねえいいでしょう?竜は強大だけれど討伐記録もいくつかはあるわ。それに今回は聖人じゃなくて竜よ?聖人は国に守られていたからあの被害だったじゃない。竜はちゃあんと討伐対象だってジュンターが言っていたわ」
「ジュンター……」
「記憶にございません」
昔、旅をしていた時の仲間に教えてもらった魔法の言葉ですが本当に便利ですね。旦那様も納得されたようで閉口されていらっしゃいます。しかし、風向きが悪いですね。まるで活火山が煙を激しく噴き上げているかのように旦那様の魔力が暴れております。はてさてどうしたものでしょうか。ああ、ちょうどいい言葉がありました。
「お嬢様、昔の旅の仲間から聞いた話ですが」
「あら、何かしらジュンター。あなたの仲間の話はとても勉強になりますから是非聞きたいわ」
「過ぎた力は己を滅ぼす、だそうでございます。まずは聖人の心臓を喰らって得た力を制御することからでどうでしょうか」
これでお嬢様もあきらめてくださいますでしょう。旦那様からの身に覚えのないお小言もなくなる完璧な一言です。
「あら、あらあら。確かにそうね、その通りだわ」
「おお! アイリスよ! では、竜の血はあきらめてくれると――」
「今回は私自身が日の光を浴びれるのであれば私が力を制御しながら出向けば解決するじゃないの!
行くわよジュンター!」
おや、雲行きが怪しくなってまいりました。何をおっしゃっているのでしょうかこの駄嬢様は。竜なんて討伐が面倒くさいものお断りしたいのですが。
「駄……お嬢様、それは旦那様がお許しにならないかと。見てくださいこの旦那様の顔色を血の気が引いて真っ白になっていらっしゃる。お可哀そうに……」
「ジュンター、お父様の顔色、というか肌が白いのは日光に浴びていないからだわ。それにあなた、昔私に自分は竜と戦って勝利したと自慢していたじゃない。一族が動けないのであればあなたと私だけで動けばいいじゃない。幸いにもあなたが聖なる加護の吸血鬼になる条件を教えてくれたおかげで私の力は以前より増しているわ。そしてその力を完全に制御できていない、それも事実。ならば竜の討伐ついでに力の制御を覚えれば一石ですべて解決するわ。分かったら行くわよ。ではお父様またいずれ」
ああ、これは何を言っても無駄ですね。旦那様も放心状態で役立たずですし、ここは大人しく準備をしてでかけて頃合いを見て引き戻しましょうか。さて、今回の旅はどのような愉快なことになるのでしょうか。
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