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通商護衛戦  作者: 雪風
8/35

ミートチョッパー

 現地時間22日21時、ウェーク島では第二次攻略部隊が軽戦車を先頭に立てて上陸を開始した。


 前回の失敗だけでなくグアム島から高波で大発による上陸に難儀したとの情報が寄せられ、先行した呂号からの気象観測から上陸部隊の乗る船を二等輸送艦に代えていたのである。


 司令官の梶原少将は


「いざとなれば擱座させてでも上陸させる」


 と息巻いていたが、本土から回航されてきた二等輸送艦が九五式軽戦車を載せてやって来たと知るや顔が綻んだ。


 だが上陸早々彼を含め幕僚の顔は凍り付く。


 輸送艦の探照灯に浮かび上がった将兵目掛けて目算で三十を超える防御火器が一斉に火を噴いたのである。


「右四〇、距離四。擲弾用意!」


 舞鶴特別陸戦隊、第一小隊隊長は指揮刀で目標を指しながら絶叫した。


 顔を上げようにも頭上を銃弾がビューンビューンと音を立てて通り過ぎていくので、腹這いになって進むしかない。


 重低音を響かせて頭上を通過する弾丸は、大口径である事を示していた。


 盾に成るべき戦車は目の前で炎上しているし、後ろでは戦車に遅れまいと続いた部下達だったモノが真っ二つになって転がっている。


 上陸した陸戦隊将兵を襲ったのはM2機関銃であった。


 探照灯も銃撃を受けたのか消えて視界が炎で赤く染まり、エンジン音も遠ざかっていくが、擲弾筒が着弾する度に近隣から敵の銃声も消えていった。


「各班点呼!」


「第一分隊五名」


「第二分隊三名」


「第四分隊七名」


「待て、第三分隊は? 第三分隊!」


 小隊長の声が島の空に虚しく消える。


 砂浜に足を取られた第四分隊は戦車が盾になったので生存者は多かった。


 だが前後の分隊に挟まれ散開した第三分隊は掃射を受け文字通り全滅したのである。


 肉壁となった彼等の惨状を見て、後続分隊は通信機器他重装備を携え光を避けつつノロノロと上陸。


 部下の六割を喪い、血と砂と海水に塗れた小隊長の元に伝令がやって来た。


「伝令!中隊長戦死!」


「内田隊長が……。


 分かった。


 今から中隊の指揮は自分が執るが、正直うちの隊だけで進撃は困難だ。


 まずはさっき潰した銃座を他の小隊との合流地点とする。


 衛生兵は負傷者の手当の為あの銃座で待機。


 地図か捕虜か武器か……どれかが手に入る筈だ」


「了解しました」


 伝令は小隊長が指差した方向に目を遣ると、敬礼して原隊に戻って行った。


 第一小隊は銃座で人事不省に陥った敵兵を発見。


 友軍の集結を待ちながら叩き起こし、再編成を行った臨時小隊で捕虜を先頭に飛行場に向かう。


 夜明けと共に海兵隊指揮官デベル少佐とウェーク島守備隊長、カニンガム中佐を相次いで捕虜にする戦果を揚げ、ウェーク島の戦いは終わった。

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