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通商護衛戦  作者: 雪風
21/35

第二波襲来

 ──ヨークタウン艦橋──


「レーダーに感!約百機の敵編隊が接近中!」


(本当にツイてない)


 フレッチャーは部下の絶叫に近い報告に対空戦闘を命じながら心中で嘆息した。


 ヨークタウンはホーネットと異なり、搭載していた戦闘機の活躍と巧みな操艦が合わさったお陰で被雷こそしなかったものの爆弾が二発命中。


 うち一発は機体毎突っ込んできた為、九九式艦爆ヴァルから飛散したガソリンや機銃弾が爆ぜ、甲板の修復及び艦載機の発着艦を阻んでいた。


 護衛艦艇の一部は撃墜された機体から搭乗員を収容中で、陣形は崩れている。


 そこに大鷹からの零戦を二十四機伴った陸攻隊七十二機が殺到した。



      ‡       ‡



「何だ、敵が空にも海にもまだたくさん残ってるじゃないか」


 陸攻第一中隊隊長の中澤大尉は、高度三千米から海空の敵集団を見やるとボヤいた。


 加賀の連中はちゃんと仕事をしたのか?


 と思いつつ操縦桿を左に切る。


 後続の八機が続いた。



      ‡      ‡




(Sh◯t!)


 チャーリー二等水兵はシカゴピアノとあだ名された28㍉機銃座から敵編隊を睨みつけた。


 同じ舷側の28㍉機銃は故障し、20㍉機銃の増設に弾薬庫の給弾手や導線の増加が追い付かず全体の給弾速度は低下。


 彼の乗る艦と同型のホーネットは左舷からの浸水が止まらず既に沈んでおり、上空の護衛機も三十機に満たない。


 そんな状況下で空を覆う無数の敵機に悪態の一つも吐きたくなるが、周辺海域に漂泊するパイロット達を見捨てる訳にはいかなかった。


 彼が任された火器では先頭集団には届かず、落ち着こうと深呼吸した瞬間、Mk12 5インチ砲が砲撃を開始。


 第二波の報告後に即応弾を集積したのか、疲労しているだろうに発射速度は速い。


 日本の機械式計算機の倍の早さで計算された諸元に従い、毎分二十発近いペースで撃ち出された二十五kgの砲弾が先の艦載機より大きな目標目掛けて飛翔した。



      ‡      ‡



 中澤は弾幕に晒されながら直進を続けた。


 投弾コースに乗ったが、敵の防御砲火により三番機が墜とされている。


「進路良し!」


「──てっ!」


 照準器を覗き込んだペアの爆撃手が爆弾倉を開くと、四発の二十五番が落下していく。


「命中!あっまた当たった!」


 銃手の声に機内に笑みが広がる。


 彼の中隊から投下された三十二発の内五発の二百五十kg爆弾が空母に命中した。




      ‡      ‡




「動けっつってんだよ!」


 チャーリーは怒号と共に銃把をバンバン叩く。


 4.8tある四連装機銃は電源喪失に伴い旋回が出来なくなってしまった。


 5インチ砲も同様で、後続の雷撃機を防ぎ切れず被雷を許している。


 荒れるチャーリーに同期が声を掛けた。


「総員離艦命令が出た。


 早く行こう」


「チクショウ……」


 悔しさを涙と共に呑み込みながらチャーリーはその場を後にした。

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