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通商護衛戦  作者: 雪風
19/35

バトル・オブ・ジャパン

 加賀の攻撃隊が米機動部隊に殺到している頃、柏に拠点を置く東部軍は多忙を極めていた。


 横須賀や各地に設置された電探からの報告に対応していたのである。


「銚子より報告!鹿島灘に双発機の反応を認む。


 距離九〇〇(〇〇)、高度三(〇〇)、単機が茨城県に接近中」


 「一番は水戸に迎撃機を出すよう通達」


「はい」


(うち)からも応援を出す。


 二番は飛行場に複戦を出撃させた後水戸に向かい、水戸(そこ)の指揮下に入るよう伝えろ」


「はい」


 指示を受けた女性管制官達は受話器を手に取った。


 彼女らの目の前には円形のブラウン管モニターがあり、関東地方の地図が一定間隔ごとに発光する友軍機、敵機を示すアイコンと共に表示されている。


 指令室は大学の講義室や映画館のような造りになっており、座席にあたる場所では彼女達の他にも数十名が配置に付き指示を出していた。


 黒板やスクリーンにあたる壁面には緯線、経線が引かれた関東地方の地図がこれも敵味方機を示すアイコンと共に映し出されている。


 三国同盟締結後、日本は十㌢波を発振するマグネトロンと引き換えに独のテレフンケン社からPPIスコープの技術提供を受けていたのだ。


(関東に在る陸軍の戦力は九七式改が二個飛行隊に柏に配備している二式複戦が六機。


 水戸には試験中の戦闘機もあるようだが人機一体となる程乗ってはいまい。


 今回の敵は二十機程だが果たして防ぎきれるだろうか?)


 東部の防空司令官である中村孝太郎大将は歩兵科出身故に航空機に明るくなかったが、表情に出さないまでも不安を覚えていた。



         ‡   ‡



     ──茨城県水戸上空──


(宮城を護らねばならん)


 荒蒔大尉はそう思いながら操縦桿を引いた。


 地上で敵機を目視した荒蒔ら搭乗員は司令部からの指示もそこそこに離陸。


 滑走距離が短く軽快な九七式改戦闘機が真っ先に上がり、キ61二機がバラバラに続く。


 荒蒔は乗機と距離があった為、試験飛行隊の部下である梅川准尉が先に離陸したが加速は素晴らしく、九七式改を追い抜いてから数分後に霞ヶ浦上空で東京方面に向かう双発機を発見。


 梅川機が既に銃撃を浴びせていた。


(奴さんはもう駄目かな)


 黒煙を吐きながら慌てて爆弾を捨てて逃れようとする敵機を見ていると、いつしか東京上空に出ていた。


 空には零戦が三機編隊飛行していたが、こちらを認めるとすれ違い様に後ろに回り込んで来た。


(こりゃいかん、血気盛んなのは良いが敵機と間違えてやがる)


 陸海軍では無線の周波数も手信号も異なる。


 慌ててエンジンを全開にしながら急上昇する。


 馬力はこちらが従来の87オクタン時1175馬力、配給が増え給油したばかりの92オクタンでは1190馬力に対し、向こうは92オクタンで1300馬力とキ61が劣っていたが、水冷エンジン故の設計の妙で引き離していた。


 振り返ると零戦の編隊は上昇時に日の丸を認めたのかバンクを振っている。


 苦笑していると無線が入った。


『水戸よりアマへ、水戸よりアマへ。


 敵機が栃木方面へ侵攻中、2時方向』


「アマ了解」


 荒蒔はそう返すと進路を北西に向ける。


 やがて視界に高度を上げつつある双発機を認めた。


(避難されておられる御方の別邸を狙うつもりだろうが、そうはさせん)


 この頃のキ61はGに耐えられず機銃を発射出来ない欠点があった為、荒蒔は最悪体当たりしてでも止めるつもりだった。


 照準器を覗き込み祈るように発射ボタンを押す。


 威力と全体の補給面から搭載が決定した13.2㍉機銃はマ弾を快調に吐き出し、被弾したB-25は山腹に激突した。

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