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通商護衛戦  作者: 雪風
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ドゥーリトル空襲その四

 空中戦が生起してから数分後、艦載機による防空網を突破した攻撃隊は艦隊から迎撃を受けつつあった。


『奥の空母をやる。


 俺に続け』


 小隊長から通信が入り、森川は隊長機を追いかけるように火力の薄い艦隊の後方を抜けた。


 射程外で編隊を組み直すと急降下を掛ける。


 追尾しきれなかった5インチ砲弾が上空で炸裂し、音圧が全身を叩くがそんな状況下でも訓練を重ねて来た身体は動き、彼の分を含め3発の25番が奥の空母──ホーネットに吸い込まれるように落ちて行った。



        ‡     ‡



「敵機爆弾投下!」


「面舵一杯!総員衝撃に備えよ!」


 ホーネット艦長のミッチャー大佐は普段の寡黙さに似合わぬ声を上げたが、疾走する2万tの空母はそう簡単に動いてはくれない。


 3発が1.5インチの装甲を貫通、爆発。


 残りは至近弾となった。


「……被害を報告せよ」


 足元からの衝撃に体勢を崩したミッチャーは羅針儀に縋り付いたが、彼の耳に入るのは芳しい物ではなかった。


「第一機関室出力低下」


「左舷中央から浸水中!」


「格納庫で火災発生!停電により消火装置は非常電源に切り替え中です」


「左舷雷撃機来ます!」


「弾幕が薄い、何をやっている!」


「機力操作不能!人力に切り替え中です」


「格納庫は貫通箇所以外通電しているのに……。


 まさか──断線したのか」


「右舷雷撃機来ます!」


「取舵一杯!」


 羅針儀に取り付いた際に胸を打ったミッチャーは、鈍痛に顔を顰めながら先の彼の指示と左舷側に落ちた至近弾の影響で右回頭中のホーネットに取舵を命じた。


 浸水が増加する事は分かっていたが、防御火器の薄い左舷やスクリューを多数の敵に晒す訳にはいかなかったのである。


 電源が生きていた右舷側では5インチ砲が投下を妨害していたが、左舷側は目眩ましにもならず、28㍉、20㍉両機銃が火を吹いた。


「Shit! 速過ぎる」


 マーフィー二等水兵は顔を紅潮させながら20㍉機銃の銃把を握り締めていた。


 彼の武器では投下された魚雷には効果が薄いが、射線に捕えた敵機は火達磨になって海面に突っ込んで行く。


「よしっ──かわせーっ!」


 喜びも束の間、敵機の墜落で生じた油膜を潜るようにこちらに伸びる白い雷跡を見て思わず叫んだ。


 祈りは届かなかった。


 魚雷は四軸のスクリューの内左側二軸の間に飛び込み爆発。


 内側の軸をへし折り左端の軸を歪ませた。

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