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通商護衛戦  作者: 雪風
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ドゥーリトル空襲その二

 四月十八日、柱島。


 大和艦内の連合艦隊司令部に詰めていた宇垣は、昼過ぎに本州東方五百海里沖を哨戒中の潜水艦から、空母を含む敵艦隊を発見したとの一報を受け上機嫌だった。


「いやにご機嫌ですな。


 山本長官が腹痛で休んでいるというのに」


 同席していた黒島は”連合艦隊は宇垣参謀長の私物ではありませんぞ”という意思を言外に込め睨みつける。


「帝都空襲が有り得ると日記に書いていたからな。


 まあ想定海域が小笠原沖から本州沖になったのは兎も角距離が遠い。


 漸減作戦がちゃんと機能するかどうか気掛かりだが……。


 漁船を哨戒に使えなくなったのは痛い」


 宇垣は黒島からの眼差しを柳に風とばかりに受け流し、肩を竦めた。


 哨戒に漁船を使おうとした海軍の目論見は魚群探知機の普及と共に外れつつあった。


 分散哨戒する筈だった漁船団は探知機搭載船を追う形で一団となって本業に励み、その分哨戒線を下げねばならなかったのである。


 上では米騒動を恐れる政府が食糧増産を叫び、下では不況で軍に志願し娑婆との食事の差に衝撃を受けた青年将校が徴用に抵抗した事も有って漁船による専業哨戒は断念するしかなかった。


「三和参謀、加賀は今何処だ?」


「現在鹿島沖に展開中です。


 敵との距離は三〇〇〜三五〇海里かと」


 宇垣の問いに三和は答えた。


「そうか。


 小川兄弟からの情報で回航先をパラオから横須賀に変更して正解だったな。


 敵の動向だが、空母から艦載機ではなく陸上機が片道攻撃を仕掛けて来るそうだが……。


 飛行機乗りとしてどう思う?」


「幅が狭い機体であれば正規空母からの発艦は可能です。


 三発機ですがイタリアのSM.75を例に挙げますと、零戦より離着陸距離が短いので。


 着陸地の支那も我が軍は沿岸部以外に進出していない為、着陸しやすいかと」


「着艦は……ワイヤーが保たんか。


 大陸は守りに徹したのが仇となったな」


 宇垣は深く座り直すと腕を組んだ。


 日本軍は満洲西部に隣接する山西派が蔣介石や張学良、八路軍と対立していた為停戦状態で、国境南部では国民党軍に対し沿岸部を除いて守勢に入っていたのである。

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