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通商護衛戦  作者: 雪風
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南海の狼

 ──一九四二年一月二十八日──


 空襲を行う為クェゼリン沖に進出したエンタープライズは、油槽船プラットから給油しようとしていた。


「潜水艦に気を付けろよ。 ジャップは狡賢いからな」


 ハルゼー中将は艦橋から横のプラットを眺めつつ言った。


 潜水艦からの報告でクェゼリンの敵情は判明しているが、無事に接近出来るか知れた物ではない。


 ウェーク島を空襲する予定だったレキシントン以下第11任務部隊は、真珠湾を出るや否や随伴する油槽船を潜水艦に沈められ作戦を中止。


 エンタープライズ率いる第8任務部隊も数日前にサモアヘ向かう海兵隊を護送していたが、彼等を乗せていた船も雷撃され、必死の救助活動にも拘わらず二個中隊が物資と共に海に消えたのである。


 護衛していた駆逐艦が救助に向かう中、エンタープライズは艦載機を上げて敵潜捜索に励んだが見つける事は出来なかった。


 生き残った船を送り届け、サモア北方で哨戒するも空振り。


 成果が得られない状況にハルゼーだけでなく部下もフラストレーションが溜まりつつあった。


 そんな思いを宿すとはつゆ知らず、米艦隊を一本の潜望鏡が捉えていた。


 クェゼリンを母港とする呂四十七である。


 開戦後、未だシンガポールやペナンを陥としていない為日本の潜水艦のうち伊号は大湊から黒潮に乗り北米西海岸周辺やハワイ、呂号はクェゼリンを拠点としてハワイ〜サモア間の通商破壊を行っていたのだ。


「方位一四二、距離七五〇、音源八。 速力十二」


 「見えたが明かりが……空母が給油中らしい」


 艦長の西内大尉は水測員の声を聞きながら潜望鏡を覗きつつ、そう呟く。


 視界内では空母が灯火を点けていた。


 発着にしては速度が遅く、飛行機も見えないのでそう判断したのである。


 呂四十七は充電の為浮上航行中、聴音機が三三〇先の艦隊を探知し急速潜航。


 微速前進しつつ様子を伺っていた。


「敵艦隊進路、速力変わらず」


「決まりだな」


 西内は水測員の報告に唇を舐めた。


 彼が乗る呂三十五型は最初から主機遠隔操縦装置が搭載され、熱源の一つである人員は自動化に伴う機関兵の減少により原型の三十三型の六十一人から四十八人に。


 開戦直前には白熱電球の代わりに蛍光灯が全面採用され、モーターの大きさも製造技術と磁石の発展により従来の半分近くに縮小、二酸化炭素濃度と温度の上昇率は下がったがそれでも暑い事は変わらない。


「良し、方位一五六、速力そのまま。


 遠いが攻撃を仕掛ける」


「了解」


 西内の指示で呂四十七は変針し、数分後に射点に着いた。


「一番から四番まで発射」


 ゴトンと音を立てて射出された魚雷は七千三百m先の空母目掛けて駛走。


 駛走音を探知した駆逐艦からの警告が入るものの、一分少々でホースが外せる筈もなく、エンタープライズはプラットの盾になる形で二本被雷し命中と爆発の衝撃で接触。


 引き千切られたホースが乗員を弾き飛ばしながら重油を撒き散らし、高温の煙突周辺から火災が発生。


 両艦の運命は決した。

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